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化け物  作者: 宵野 雨
12/21

第12話 しろの実力

「で、ここに来たと」


「はい!」


 元気にそう返事する祈。


「君、今パトロールの時間なの分かってる?」


「式飛ばしてきたので!」


「……最初からしなよ」


 そして、会話相手はしろではなくフィーネである。待ち構えていたかのように遭遇し、祈が連行された。俺も一応パートナーであるしついていく。


「連携の確認だっけ?わざわざパトロールの時間じゃなくてもいいよね?」


「何かあったらいけないので!」


「いや、君たちに何かあるより、街に何かあるほうが可能性高いでしょ」


「ああいえばこういう」


「こっちのセリフだよ!?そして、私、リーダー!ね?」


 居心地が悪い。誰が好き好んで、叱られている現場を傍観するというのだろう。

 今すぐにでもここから立ち去りたい。そんな思いを抱きつつ、彼女たちの口論を見守るしかない俺なのだった。


「はぁ、まあ、祈がそんな人間なのは分かってるからいいんだけどさ。それはそうと、しろのとこ行くんでしょ?行ってもいいよ」


 しっし、と俺たちを追い払うように手を払うフィーネ。そうして、祈はその言葉を聞いた瞬間、彼女の前から去っていく。

 そんな姿を見たフィーネはため息を一つ吐いて彼女を見送る。


 とりあえず、俺はフィーネに軽く会釈をしてから去る。


「てきがよわいと」


「そーなんだよね。でも、何かあった時のために連携は確認しておきたいし」


「うーん。いのりわりとつよいから……」


「そこを何とか!」


「……なら、こわされるともったいないから、わたしがあいてする」


「「え?」」


 しろへ相談にいくと、そんな提案をされる。


「わたし、つよいよ?」


 自信を言葉ににじませてそう言い切るしろ。しろといいフィーネといい、この組織の幼女は強者が多いのだろうか。いや、しろは幼女ではないらしいのだが。


「それじゃ、じかんもったいないからくんれんじょーいくよ」


「りょーかい」


 そう言って、立ち去るしろ。切り替えの早い祈はすぐにそんな返事をしてしろの後をおう。そして、少し遅れて俺はそのあとを追うのだった。



「じゃあ、じゅんびおーけー?」


「オーケー!」


「大丈夫だ」


「じゃあ、しかける」


 そう口にして、俺たちに接近するしろ。その速度は、先ほどのゴブリンと比べてもかなり早い。

 だが、目で追えないほどではない。


「ん。さすが」


 彼女はどこからか取り出したナイフを振るうが、それを俺は回避し、彼女の背後をとる。

 そのまま、足払いを仕掛ける。


「みえないから、わからないわけじゃない」


 彼女はそう呟いて、体を軽くひねる。


 足払いを体をひねっただけで躱すかよ!

 体をひねるということは、片足を軸にするはずだ。両足を狙っての足払いを躱せるはずがないのだが、しろは体をひねる勢いのまま、小柄な体を生かしてくるりと宙を舞う。


「ちいさいのもあどばんてーじだよ?」


 足払いを仕掛けた俺はすぐに体勢を立て直すことはできない。

 そして、しろは宙にいるままナイフを振り上げる。

 いや、刺されたらさすがに死ぬ——!


「これは連携の確認だよ?緋色君?」


 そんな声が聞こえたかと思えば、しろに火球が飛来し、しろはそれを宙で切り裂く。


 その間に、俺は体勢を立て直ししろから距離をとる。


「えーと、術って切れるんだ」


 祈のそんなつぶやきが聞こえる。


「ふだがないとなりたたないなら、それをきればいい」


「いや、札も燃えてるからね?」


 火の中に手を突っ込まないと切ることはできないだろう。それを簡単に切ったなんて言うのだ。それもナイフで。


「ともかく、ここからが本番だから」


 祈はそう言って、俺に目配せをする。


「さあ、第二ラウンドだ!」


 そうして、戦いが始まるのだった。



「とりあえず、みらいはぶきをもったほうがいい」


「武器かー」


 戦闘が終わり、俺たちはしろからアドバイスされていた。

 結果?当然負けだよ!

 祈の術は見切られるか、切られるし、俺の攻撃は簡単に躱される。結局最後まで、一撃も入れることができなかった。


「ん。たたかいかたをおぼえるのもあるけど、まずぶき」


 確かに、ゴブリン相手ならそこまで気にならなかったが、しろを相手にすると大ぶりな攻撃ばかりだとカウンターを受けてしまう。拳で大振りにしないとなると、俺の技術では威力が大きく低下する。そう考えると、掠らせるだけでもダメージになりうる刃物といった武器はあったほうがいいだろう。


「武器はあったほうがいいよ。相手によっては素手じゃけがするかもだし」


「あ、そうか、相手は人間とは限らないもんな」


 全身がとげや酸でできてるような生き物とはさすがに殴り合いたくはないものだ。


「それもあるし、人間にも触ったら即死みたいなやつは全然いるからさ」


「怖いなっ!?」


「だからわたしたちはいきてるってより、ぐうぜんしんでないってほうがただしい」


 そう言われると、哲学的だな?


「まあ、それは置いておいて、緋色君の武器でしょ?」


「そもそも、どんなものがあるんだ?」


「いろいろためす?なら、そうこにいく」


「そうだな」


 武器なんて握ったことのないものを想像することもできない。そう考え、俺たちは倉庫へ移動するのだった。

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