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化け物  作者: 宵野 雨
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第11話 パトロール

「不明」


「そうか」


 案の定、俺の体質については何一つ分からなかった。


「特段、危険があるわけじゃないのは幸い」


「夜行動できないのは不便なんだが……」


「自我がなくなるほどじゃない」


「比較対象が悪くないか?」


 自我がなくなると考えたら確かにましなんだけど……。まず、自我がなくなる状況というものを一般社会で生きてきた俺は知らない。


「そのうち分かるようになる。だいじょぶ」


「大丈夫じゃないんだけど!?」


 そんな悲痛な叫びが響くのだった。



「おはー」


「ああ、おはよう」


 翌日、学校で祈に声をかけられる。


「決めた~?」


「まあ、所属するよ。こっちが出した条件も飲んでもらえるみたいだし」


「そっか~。それは助かるよ~」


「思ったより軽いんだな」


「重く話してもでしょ~。気楽にいこうぜ」


「流石にシリアスな話じゃないかな?」


 俺の今後の人生がかかっているかもしれないのだ。気軽に決めていいことなはずもない。


「まあ、あんまり気負わずいけばいいよ。基本、後遺症が残るようなことにはならないし」


「その表現が怖いんだよ!」


 なんで、当然のように後遺症の話が出てくるんですか?そも、最近は単純な怪我ですら許されない社会になりつつあるというのに。


「うちの技術はずいぶんいかれてるから、不治の病だろうと、致命傷だろうと、生きてさえいれば治療可能だよ」


「治ればいいって話か?」


「精神的ダメージがつらいときは記憶をいじれば問題ないから」


「想像以上にブラックだな!」


「やるのはしろだからホワイトかも」


「意味が分からないんだけど……」


「うん。私も無理があると思った」


 何度も言っているが、この組織に入るのはもう少し考えておけばよかったかな。

 今更ながらそんなことを思った。


「じゃあ、今日からパトロール始めるからね」


「了解」


 翌日からかよ、と言いたくなるがあの組織のことだ。この程度のことで文句を言っても仕方ないだろう。


「じゃ、私は席に戻りますかねぇ」


 そう言って、去っていく祈。そうして、今日もまた、退屈な授業が始まるのだった。



「あー、めんどくさい」


「先輩なんだよね?」


 初日からめんどうと喚く先輩、これでいいのだろうか。


「お、反応あり」


 祈がそう呟いて、足の向ける先を変える。


「しろってすごいんだな」


 今、祈が手に持っているセンサー的なもの、それをしろが作ったらしい。それも、昨日相談して翌日に。いや、技術力とかそういう次元の話じゃなくないか?そんな小物みたいなノリで作れるものじゃないだろうに。


「いや~、困ってるって伝えたらすぐ作ってくれるんだから」


「こういうのは前もって作ってないのか?」


 敵を探知するセンサーなんて、前もって作ってそうなものだけど。


「地域によっていろいろな敵がいるらしいからね。それらすべて別々に作らなきゃいけないらしい」


 確かに、全く別の生物を探知するのは難しいか。


「そろそろ構えて、現れるよ」


 そう言った途端、俺たちの目の前に不良たちが現れる。


「やっぱり、俺には人間にしか見えねえな」


「私にも最初は人間に見えてたからね。慣れよ慣れ」


「慣れ、ねぇ」


 そんなレベルの話なのだろうか。正常なら逆に幻覚を疑いそうなくらいだが……。


「まあ、こうすればっと」


 祈が一言呪文を唱えると、彼らの姿が変わる。

 その姿はファンタジーでゴブリンと呼ばれるもの。


「グギャ?」


 目が合い首をかしげるゴブリン。その顔面に回し蹴りを叩きこみ、吹き飛ばす。手応え的に頭蓋は粉砕した。生きてはいないだろう。


「私いらない説あるな?これ」


 祈がそんなことをつぶやいている間にも、俺は次々とゴブリンの頭蓋を粉砕する。……ゴブリンの頭蓋骨は柔らかいのだろうか。いとも簡単に砕けていくので、そんなことを思ってしまう。人間の頭蓋骨は壊したことがないので比較対象がないから分からないのだが。


「……隠れてる様子もないし、これで終わりだね」


 完全な傍観者になっていた祈。


「わ、悪かった」


「いやいや、気にすることなしだよ。まあ、次は連携の確認……いや、ゴブリン相手じゃできないか」


「試すにしても弱すぎるからなぁ」


「思っていたより、君の力も強いし……しろに頼むか」


 しろ大丈夫か?こんなに仕事持ってこられて過労死しない?


「と決まれば、本部に行きますかー」


「いや、パトロールは?」


「あー、じゃあ、ほい」


 俺がそう指摘すると、紙飛行機のような紙を投げる。


「私の式に監視してもらうから問題なし。もし何かあっても本部からなら転送してもらえるし」


「さらっと、超技術だな」


 式とかはまだ分かるんだが、転送を気楽に使えるのはよく分からない。


「式を最初から使ってれば、パトロールも効率化できたんじゃない?」


「センサーは見れないからさ」


「なら、式を使っても俺たちがパトロールしないといけないんじゃ」


「さ!本部いくよー!」


 俺の言葉を華麗に無視し、身を翻す祈。

 昨日の場所はこのまま直進なんだが……。


「逆だー!」


 そうして、再度彼女は身を翻す。


「幸先不安なんだが」


 初日からこの調子で、大丈夫なんだろうか。

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