2.出ル月
「ふわぁ…ねっむい………」
僕はあくび交じりに今日から通学路なる場所を歩く。電車の中では気にならなかったが、今日は春にしては日差しが強く辟易する。学園が近くなるにつれ、同じ制服を着ている人が増えてきた。それに伴って僕の受ける視線の数も増えてくる。これは僕の容姿と今の状態からくるものだろう。
黒く艶のある長い髪に白い人形のような肌、女性的な童顔な可愛い子が、男子の制服を着て日傘をさしているのだ、自分で自分のことを可愛いというのは少しナルシスト気味で嫌だが、小中で自分の容姿は自覚しているので仕方ない。日傘に関しては日光があまり得意ではないからさしているが、それも僕を目立たせる要因だろう。
他の人からの視線を受けながら学校に着く。「新入生はこちら」とでかでかと書かれた案内にしたがって進む。受付にたどり着くと学校の説明用のパンフレットを貰い、入学式の自分の席を教えられる。どうやら、退出の時にクラスごとに退出するため、同じクラスで席がまとまっているらしい。僕は入学式の会場につくと一番前の一番左の席に座る。僕が座ると会場が少しざわつく。
「あいつが今年の……」
「あの可愛い子がそうだって!」
「でも男子の制服じゃない?」
「ほらっ、気になるのはわかるがまだ準備は終わってないぞ。」
「「「はいっ!会長!」」」
うるさい
こっちは眠くて疲れてるんだから少し静かにしてほしい。ただ入学式で寝る訳にもいかないからなぁ。じゃあもしかして、うるさいぐらいでいいのでは?まあ、いいや。パンフレットでも見てよう。
ここは国立神卯学園、日本に12校ある神降ろし人の学園だ。国立なだけあって校内はかなり広いがすごいのはそれだけじゃない。この学園のある市、まるまる一つが学園の関係者や市中にある店の関係者しか入れないのだ。学生の家族は関係者扱いになるので、学生は家族と一緒にこの市に引っ越す人もいる。僕は、学園から少し遠いマンションを借りて一人暮らしをしている。
「あの……」
「えっ?」
急に隣の席の人に話かけられる。赤いセミロングの髪にモデルのようなプロポーション。顔はかなり整った目鼻立ちをしていて、可愛いというより美人ってかんじの子だ。
「宇佐見 和兎さんであってますか?」
少し困惑したような顔で話かけられる。
「えっと……僕が和兎ですけど...」
すると、彼女はさっきまでより敵対的な顔で話かけてくる。
「はじめまして。天野 天です。あなたが新入生代表挨拶を断ったからお鉢が回ってきた人です。」
なんてわかりやすい説明だろう。こっちも僕に敵対的な理由がわかって良かった。
「でも、この学校の代表挨拶って光栄な事じゃなかったっけ?」
僕はめんどくさかったから断ったが、他の人からしたら良い事のはずだ。めんどくさかったら僕みたいに断ればいいし。
「それはそうですけど、あなたが挨拶を任されたって事は私より入試の成績が高かったって事ですよね?それなに代表挨拶を譲られるのは情けがかけられたみたいで嫌なんです。」
なるほど、なんとも面倒な性格をしているみたいだ。
「ごめん。情けをかけるとかそんなつもりはなかったんだ。僕はあまり目立つのが好きじゃなくて、ほら、僕男なのにこんな容姿だからさ。」
悪いと思ってなくても謝るのが人間関係を円滑にするコツだ。そこにそれっぽい理由をつければオッケー。
「確かに、私も少し気が立っていました。ごめんなさい。ところで、失礼承知で悪いですけど、あなたって本当に男性ですか?」
なるほど、こいつは素直だけど素直すぎるタイプだな。たぶん今のも悪意がある訳じゃなくて、本当に気になったから聞いたのだろう。なまじっか、入試次席な訳だから能力を持ってるだけやっかいだな。
めんどくさい人に絡まれたな。
「ねぇ、本当に男なの?」
「はぁぁぁぁぁ………僕は本当に男だよ。」
「そんな深いため息つかなくてもいいじゃない。これから同じクラスなんだし仲良くしましょ。」
「あぁ、そうだね。よろしく。」
めんどくっっっっさ
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