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第46話 野望と乖離

「このスト鯖において、重要なものは主に3つあります」


 俺と菅沼まりんは平原エリアに点在している木箱を破壊しながら移動していると、まずそんな話を俺にしてくる。


「1つは言うまでもなくお金、リエラはこのゲームに内における通貨なので、当たり前ですけどお金があれば何でも出来ます」


「言い方があれだが……まあそれはそうだろうな」


「そして2つ目は武器全般です。序盤の弓とかピストルは正直微妙ですけど、AR(アサルトライフル)が手に入りだすと一気に文明が変わります」


「ふむふむ」


「最後は燃料ですね、重油、石油と言ったものは車やヘリを動かしたり、何より鉄類を生成するのに不可欠なので、重要度が高いです」


「成程……だが問題はそれをどう集めるかということか」


「お金に関してはこうやって木箱を破壊し続ければそれなりに手に入りますし、不要なアイテムはショップで売ってもお金になります。ファームを笑う者はファームに泣くと言えるぐらい大切なので序盤はこれだけしててもいいぐらいです」


「とはいえ、それでも限界は当然あるよな」


 石の斧を使ってバンバンと木箱を割り続ける菅沼まりんは、ピタリと手を止め俺の方を振り向くと小さく頷く。


「結局文明が発達してくると色んな物事をお金に出来るようになるんですよ、それこそ武器は設計図を手に入れると素材を集めて増産体制入れるので、武器が欲しいプレイヤーに売りつければ大儲けです」


「まさに武器商人だな、じゃあ設計図を手に入れるのがいいか」


「候補としてはいいですが、多分こういう木箱からのドロップ率は低いと思うんですよね、ARとなってくるとやはりボスを周回する方が可能性は高いかと」


 しかも銃だけでなく弾の設計図もとなってくると、やはり序盤で独占するのは相当難しいでしょうしと菅沼まりんは言う。


「……となると、残るは燃料ということになるが」


「燃料は序盤で集めておくと絶対に良いです。銃の生産や移動の効率化を進めたいクランに売りつければ割りとお金になるので」


「じゃあ序盤は動物を狩ったり、木箱を壊して燃料確保か」


「弾のことを考えると硫黄を取りに行くのもいいですけどね――結局強くなる為には素材がないと話にならんのですよ。逆を言えばそこを抑えてしまえば攻略組は私達にお金を払うしかなくなるので」


「ほぉ――――……菅沼さん、マジで偉いな」

「え?」


 正直俺も多少は勉強したが、交流をメインとしたスト鯖でここまでちゃんと事前知識を入れているのは素直に感心する。


 何ならスト鯖に入るにあたって、事前プレイもしたんじゃないだろうか。


「いや、参加者の中にもガチの初心者って結構いそうなもんだが、多分場当たり的というか、リスナーに助けて貰いながらするのが普通なんじゃないかと思って」


「それは――……そういう人もいるとは思いますケド」


「それなのにちゃんと自分で下調べをしてから臨むのはただただ頭が下がる。やっぱりそういう姿勢が大事なんだろうな」


「い、いや……そういうのはいいですから――」


 そう思ったことをつい口にしてしまったが、菅沼まりんはプイと素っ気ない態度を取ってしまう。


▼こーれ効いてます

▼ライバルのガチ褒めは恥ずかしい模様

▼Gissyさんそういうとこだぞ


 加えて、何故か変な盛り上がり方をし始めるリスナー。


 いやいや、これはどう考えても面倒臭がられているだけだろと思っていると、少し語気を強めた菅沼まりんはこんなことを言い出した。


「と、兎に角! 急がず焦らず序盤はファームに注力すべきです、お金さえ貯めることが出来れば後で幾らでも巻き返せますから」


「それは分かったが……でも何でまた無料でそこまで教えてくれるんだ? 極論、その情報を売りつけることだって出来ると思うんだが」


「……そんなことをしても意味無いですよ。こういうスト鯖には親切な配信者が初心者向けのアドバイスとかやってますし、それにそういう守銭奴的なことをやり過ぎると場合によっては炎上しかねないので、これぐらいは普通です」


「…………」


 言っていることは間違っていないと思うが、その言い方はどうにも引っ掛かる感じがしなくもない。


 かといって親切心を疑るような真似はしたくないので、これ以上突っ込むようなことも言えないのだが――


「しかし、それでお金を貯めてスト鯖の支配者になるなんて、どうにも想像がつかないんだが――一体何をするつもりなんだ?」


「……まだ構想段階なので詳細はアレですが、簡単に言えばエンタメですね」

「エンタメ?」


「そう。何も正直にファームしてボスを倒してお金を増やす必要なんてないんです。それは過去のスト鯖の切り抜きを見たら分かるんじゃないですか?」


 ……確かに、スト鯖と言えばエンタメで参加者を楽しませる側面は結構ある。


 本当に各々が思いついたエンタメを披露することで、それがそこそこのお金になっていた部分もあるにはあったが――


「つまり私はこのスト鯖全体を巻き込むエンタメを引き起こそうと考えています。それこそ、ある意味真のボスは私だったと言わんばかりの」


「――……それは」


 まるで夢物語を語っているようにも見えたが、その口調は決して適当を言っているようには思えない。


 やはり――彼女の計画性は伊達じゃない。


 自分が成功する為にはどうしたらいいのかということを、常日頃から考えているのだ。それも生半可じゃない気持ちを持って。


 だから何事に対しても全力でぶつかる、勿論好きが高じた上で。


(自分とは――あまりに意識の差が違うな)


 そんな彼女に世話になってしまうのは、正直あまりに申し訳ない。


「ただそれは1人で出来る程甘いものではないので、ここは一旦――」


「――……そうか、そういうことなら応援してるよ。もしその壮大なエンタメが完成したら是非招待してくれ」


「って、は? いやだからそれをGissyさんも――あっ」


 すると。


 菅沼まりんが何かを言おうとした瞬間、ガブガブと、頭を齧られる生々しい音が聞こえ始めてくる。


「ちょ……! 何でこんなタイミングでまたトラに襲われてんですか! もしかしてGissyさんにだけマタタビのMODでも入ってるんですか!?」


「分からん……分からんが俺はもうダメみたいだ……」


「ふざけんな……わざわざこっちは情報提供してやったんだから、何か物悲しい雰囲気にして逃げずに手伝えっての……!」


 すると、菅沼まりんはまたズドンと二発、ダブルバレルをトラに撃ち込んでいくが、2発では死なないトラは尚も俺の頭をしっかりと噛み砕いていく。


 要するに、体力はほぼゼロ。


 持ち家をまだ作れていない俺はランダムリスポーン確定である。


「――……すまん、俺の木材と石と弓と斧とお金は貰ってくr」


「ぎしいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!!!!!!!」




▼唐突な茶番で草

▼イイハナシダッタナー ( ;∀;)

▼Gissyさん配信の神に愛されてるだろ

▼いいからさっさと期待の新人同士で組め

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― 新着の感想 ―
[良い点] これがVRMMO物なら、再会して一悶着した後 なし崩しにツーカーな感じになって「んじゃ、やるかー」 って流れなんだろうけど、 この作品だと、野望?のお手伝いとか相方とか扇動者とかやるより…
[気になる点] スト鯖編なんか長そうやなぁ ヴァロ大会とちがってワクワクしない
[一言] 狩○英孝がよぎった←
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