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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アイドルからのお願い

作者: beatrice

「何でこんな事をしたのかって?聞いても理解できないですよ?」


「それがこっちの仕事なんだよ。話してくれないとこっちも困るんだよ」


「刑事さんも大変ですねぇ。理解してもらえますかね」

――――――――――――――――――――――――――

「好きなアイドルがいるんですけどね、ライブなんかも行ったりしていたし、ファンクラブにも入ってるんですよ。今で言うところの推しですね。ただ、コロナもあるからライブも中止だし握手会もやらないしで。まあ、癒しがない感じでしたねぇ。でもその子たちが深夜にラジオを始めるってTwitterで呟いたんでまあ、これは聴くしかないでしょってドライブがてら土曜日の夜に車を適当に走らせていたんですよ。ラジオとはいえリアルタイムで声を聴いた時はテンション上がりましたね〜」


「そのアイドルの名前は?」


「もう、話の腰を折らないでください。秋穂ちゃんですよ、木原秋穂ちゃん。le quattro stagioniって知ってますよね?4人グループで上田春菜ちゃん、近藤夏海ちゃん、石上冬華ちゃん。オーディションで最後まで残った4人の名前に四季が入ってるって凄くないですか!?デビューの時も凄い話題になったんですよ!中でも秋穂ちゃんは凄い癒し系で・・・」


「待った待った!名前さえ聞ければ良かったんだ。本題に戻ってくれ」


「仕方ないですねぇ。で、ドライブしながらラジオ聴いてたってところからですよね。電波が入らなくなると嫌だから山に行くのは避けて市街地をグルグル回ってたんですけどね。それで1時間ぐらいでラジオも終わったんで帰ろうかなと思っていると急に砂嵐みたいな音が流れてきたんですよ、『ザー、ザー』って。おかしいなぁと思いながらそのままにしてたんですけどね、砂嵐に混ざって声が聞こえてくるようになったんですよ。『来て、来て、来て』って。それも秋穂ちゃんの声で。まあ、その日は偶々そう聞こえただけだろうと思ってたんですけどね、それで私は"シグレドキ"ってペンネームでラジオが終わった後にそういう事があったんですよってメッセージを送ってみたんですが取り上げられる事もなくてですね。ネットで調べてみても出て来ないんですよね。刑事さんついてこれてます?」


「・・・大丈夫だ、続けてくれ」


「その後もラジオを聴いていたんですけどね、流れてくる声に変化があったんですよ。番組中に『シグレドキさん来て、シグレドキさん来て」って。秋穂ちゃんが私の名前を呼んでくれたんですよ!やっぱり嬉しいじゃないですか、推しの子が名前呼んでくれると!そうすると気になるじゃないですか、どこに来てほしいんだろうって?」


「だから付き纏うようになったのか?」


「やだなぁ、刑事さん。出待ちですよ。他のファンの子だって沢山いたんですから。別に話しかけたりプレゼント渡すとかだってしてないですし。それでですね、ラジオ局に行った帰りにまたラジオから秋穂ちゃんの声がするんですよ、『シグレドキさんありがとう、シグレドキさんありがとう』って。やっぱり私に気付いてたんだって嬉しくなるじゃないですか!だから益々秋穂ちゃんの事を好きになったし、秋穂ちゃんが着てる服も探して着るようになったんですよ。それでですね、le quattro stagioni結成1周年の日にラジオの公開生放送をするって発表がありましてね、この日ばかりは仕事を休ませてもらったんですよ、有給も残ってましたしね。仕事終わりに車に乗っている時も早く明日にならないかなぁなんて思っているとまた秋穂ちゃんの声が流れて来たんですね。『シグレドキさん、殺しに来て。シグレドキさん殺しに来て。シグレドキさん・・・』。それを延々と繰り返すんですよ。それを聴いてるうちに頭の中が真っ白になってきましてね。家に帰ってからもその声がずっと頭の中で響いてたんですよ。でもラジオの時間が近付いてきたんで秋穂ちゃんとお揃いの服に着替えて必要な物を持って会場に行ってお願いを叶えてあげたんですよ。その後は刑事さんの方が詳しいじゃないですか?」


「ラジオの公開生放送中に包丁を持って乱入。メンバーが3人とも死亡。スタッフや観客にも怪我人多数。お前がやったので間違いないな?」


「やだなぁ刑事さん、お願いを聞いたあげたのは4人ですよ。春菜ちゃん、夏海ちゃん、秋穂ちゃん、冬華ちゃん。他の人は邪魔するからですよ」


「・・・その木原秋穂だがな、1ヶ月前に遺体で見つかってるんだよ。公表はされていないが他のメンバーからのイジメがあったと遺書にも書いてある」


「そんな訳ない!私はずっと声を聞いてたんです!あの日も確かにお願いを聞いてあげたんだ!死んでる訳がない!」


「ならこれを見ろ。スタッフから預かった番組中の映像だ、3人しかいないだろ?」


「そんな・・・。でも確かに自分は・・・」

――――――――――――――――――――――――――

「安田さん。アイツの言ってる事どう思います?」


「中島文明か?女装もしていたし、自分の事を女だと思い込んでる。精神鑑定が必要になるかもしれんなぁ」


「ですよね。取り調べ大変な事になりそうですね」


「そうだなぁ。明日から大変だろうから俺はもう帰るわ、お疲れさん」


「お疲れ様でした」

――――――――――――――――――――――――――

「ああ、麻里奈か?今から帰るよ。いつも遅くなってすまんな、子どもたちは寝ちゃったか?」


『良二さん、お疲れ様。帰ってくるの待ってたけど疲れちゃったみたいで寝てるわよ」


「そうか・・・。今度休みを取るから4人でどこか遊びに行こう」


「そうね。あの子の誕生日も近いしね。気を付けて帰ってきてね」


「ああ、ありがとう」


「休みか、いつ取れるかな?とりあえずラジオでも聴きながら考えるか」


「良二さん来て、良二さん来て」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ラジオに洗脳されていく狂気が怖かったです。 ラストで、うわっ巻き込む系のヤツだ、と余計にゾワッとなりました。
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