表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Other Self  作者: 小町豊
1/1

もうひとつの闇

 一歩踏み出すと、得たいの知れない悪寒を感じた。ここが隣町の掲示板で見た<<死の森>>で間違いなさそうだ。こんなことに首を突っ込みたくないけど、そんな私情は今後の命取りになりかねない。と、緊張している僕とは裏腹に隣にいるマルコはなぜか楽しそうだ。僕が冷や汗をかいてるとわかるとマルコはいっそうにやけだした。

「おいおいカイ君よ、ここに来てまたびびってるでしょ、まったくさ、もうそろそろ慣れてもらわないと仕事にならないんだよね。それに、この茶番何回目?」

そんなこと言われても、と思いつつ余裕のない声を僕は放つ。なぜならこれから僕は

「人を殺すことに慣れたくなんてないよ。」

「人を殺すことに慣れる必要はないよ。カイ、君が慣れるべきなのは『ブレイカー』を狩ることなんだよ。」

「ブレイカー」、やつらは理性を失いしもう一人の自分。本来の自分を『壊し』覚醒することからそう呼ばれている。今僕たちがいるこの森は、ブレイカーがいると噂の森で何人も行方不明になっているとか。とりあえず今回の仕事はこの森の調査兼、遭遇した場合の駆除だ。

「わかってるよ。とりあえず進んでみよう、居ないといいけど。」

「この期に及んでまだそんなこと、大丈夫、君は強いよ。」

マルコとしては僕を励ましてくれているつもりなのだろう。

「どうも」

吐き捨てるようにそう言い、森を進んでいく。暗く淀んだ空気を纏うこの森に再び沈黙がおとずれる。僕らはただひたすらに進んでいく。こんな仕事、できるならしたくはないがこれは僕にしかできない。二十分ほど歩いただろうか、だんだんと意識が遠退く。

「お、反応あり、だね。頼んだよ、相棒」

その言葉を最後に僕の意識は完全に途切れた。


「………ーい」

「おーい」

「起きろーカイ」

マルコの呼び掛けで目を覚ました。辺りは明るく視界は透きわたっている。

「森を抜けたんだね。やつは、ブレイカーは」

と、僕がおどけているとマルコ満面の笑みになった。

「お手柄だよカイ。今回もばっちり、瞬殺だったね」

なぜか得意気に話す仲間を見て僕は胸を撫で下ろした。

「よ、よかった。とりあえず、博士に報告だね。」

「ふん、それはとっくに済んでいるよ。この天才アシスタント、マルコ·ストーンズの仕事は最速なのです!」

いつも通りのポジティブシンキングなマルコを見るとこっちも元気をもらえる、ような気がする。

「にしても、あのサイコ博士もたまにはやるもんだなー。ブレイカーの察知機能付きの対ブレイカー平気。『アンチブレイカー』か。それでも理性を保てないってのはモノホンのブレイカーとさほど…いや、悪い。話が過ぎたかな。」

さすがのマルコも悪いと思ったらしく口を慎んだ。

「いいよ別に、僕はこの『もう一人の僕』を誇らしく思えてるんだから。」

そう、この体は作られた体。ブレイカーを倒すための対抗策は操れるブレイカーを作ることだけだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ