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村を訪ねて3センチ

「村って何処にあるんだよ」


 ついつい独り言を言ってしまうのを許してほしい。

 ダンジョンを離れて最初の2日間は旅に出る楽しさをステップで表現したんだが、それが3日、4日と経って今では背中に重りを乗せてるかのように体がしんどい。

 あれぇー、おかしいな?

 確かにここら辺に村があったよな?

 100年前とはいえそんなに変わってないと思ってたんだけど、人間は滅んじゃったのかな?

 となると、アイテムを集めたとしても欲しがるやつはいなくなるな。

 ……

 なんとも不安な感情を感じつつ、7日目が経ったある日、一人の男が倒れていた。

 に、人間だあーーーーーーーーー!

 私はこれまでの体の重さが嘘かのように男に近づいた。


「おい! おい! 大丈夫か?」


 息はしてたので、余計に嬉しくなり、カクテルを作るかのごとく男の体を揺らした。


「き、気持ち悪い……」


 揺らし続けたおかげか男が言葉を言った。

 良かった。昔と変わらない言語でしゃべってくれた。

 私は持っていた水を彼に飲ませた。


「ところで、君はどうして倒れてたんだい?」


「き、気持ち悪い……」


「近くに家があるの?」


「き、気持ち悪い……」


「どこか痛いところはある?」


「き、気持ち悪い……」


「……おまえのかあちゃんデベソ」


「き、気持ち悪い……」


「……殴るぞ」


「ご、ごめんなさい」


 だんだんと殺意が芽生えた私の殺気に気づき、男は立ち上がった。

 みんなには大事なことだから言っとくが、私はモンスターだ。

 人間だからとはいえ、躊躇なく殺せるからな。


「すいません、私は仕事の為に倒れてたもんですから」


「意味が分からん」


 そもそも倒れる仕事って何だ?

 馬鹿にしているのか?


「すいません、立ち話もなんですから、私の村へご案内します」


 怪しさ全開の男に私はついて行った。



「いやあ、先程は親切にしていただいたのに裏切った感じになってしまってすいません」


 男に案内された村は出会ってそんなに離れてない場所にあった。

 可もなく、不可もない、何処にでもある懐かしさもある村だった。

 せっかく久しぶりの村や人間だったのに、この男のせいで台無しだ。

 もっとこう〇〇探訪みたいに「ほうほう、これは良い木材だ。分かりました」みたいな村の良さを存分に味わいたかったな。

 男は私を自分の家に招き、お茶を飲みながら話している。


「なんでわざわざ倒れていたんだ?」


「私、村の公務員なんですけど、村に来る冒険者や観光客がいなくて困ってたんです」


「それで倒れてたと?」


「はい、来る人の優しさを利用して、少しでも村の利益になればと」


「考え方が怖いな」


「よく言われます」


 言われるのか。


「それでも同じ言葉を言うのはあまりにも良くないと思うのだが」


「私の仕事は村人Aや村人Cのような固定した情報を来る方々に提供することなので」


「例えば?」


「ここは川のはずれの村だよとか良いキノコは煮ると美味しいとかですね」


 世の中、分からない仕事ってあるんだな。

 見聞って大切だ。


「ところで、あなたは見るところ冒険者と思うのですが?」


 緩んでた顔をキリっとして男が言った。


「ああ、そうだが」


「実はあるご依頼をしたいと思いまして……」


 男がいうには人が来なくなったのは理由がある。

 最近、村の周辺に倒れる方々が続出してると。

 倒れた人々に話を聞いてみると、みんな「歌は聞きたくないよ」と言っていたと。

 なんとも奇妙な話だ。


「で、私にその歌の正体と問題解決を?」


「引き受けていただけますか?」


「情報が少ないしな。どのくらいかかるか分からないな」


 それに私は魔王様の復活までにアイテムを探さなくてはいけないしな


「もちろんタダとは言いません。これをどうぞ」


 男はテーブルの上に剣を乗せた。


「こ、これはブルーサウス!」


 そう、この地域では手に入ることは少ないと言われている名剣だ。


「昔、勇者様に力を貸した村の出身者が王様にいただいたとされる剣でございます」


「そんな名剣を大丈夫なのか?」


「はい、これは村にとって死活問題。どうします?」


 最初にこんなアイテムに出会うなんてついてるとしか言いようがない。


「わかった、引き受ける」


「ありがとうございます」


 こうして私はクエスト「歌の涙にさらば」を引き受けた。


 ネーミングセンスの文句は聞きません。


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