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第四話 散歩

今日も投稿していきます!

 寮は随分と広いようで、入ると左、真ん中、右に道があり、入り口に事務所らしきブースがあるが、人は誰もいない。

 二○二号室というからには二階だろう、と思って階段を探そうととりあえず左に曲がる。

 二つドアを通り過ぎ、突き当たりを右に曲がる道が見えたところで後ろからドアの開く音がした。

 僕は振り返るが、ドアを閉め、鍵を閉める様子もなく出入り口へ向かう。

 僕が駆け足で近づくと、足音に気づいたのか振り向いた。彼は男性のようで、学園にいることや身長から類推するに僕の二つか三つ年上だろう。金髪で中肉中背、顔も平均かそれよりちょっと良いくらい。至って普通の人間だ。


「見ない顔だな。新入りか?」


「はい。ゴヴァン・カーターと言います。今日からよろしくお願いします」


「ああ。俺はルイス・ノックスだ。よろしく……で、俺に何の用かな?」


「二○二号室に行きたいのですが、階段がどこにあるかご存知ですか?」


「二○二か……大変だな。階段はこっちには無いぞ。入り口から真っ直ぐの道だ」


「大変ってどういうことですか?」


「歳取ると階段登るのがきついんだよ。こっちだ」


 そう、やや苛立ち気に言ってルイスは入り口の方へ歩いて行った。少し遅れるようについていき、入り口が見えたところで

「俺は行くけどお前はここ左な」


「わかりました。ありがとうございます」


「まあ、頑張れよ」


 その言葉はやや歯切れが悪かったが、問う間もなくルイスは寮から出て行った。

 僕は入り口から真っ直ぐの道を進み、見つけた階段を一階分上る。まだ上に階はあるようだが、外観からしてせいぜい三階建てだろう。


 近くの部屋を見つけ、番号を確認するが「一○五」と書いてある。おかしいな、と思って隣の部屋の番号を見ると、「一○四」と書かれていた。階段を上り、近くの部屋を確認すると、「二○五」と書かれていた。確かにこれは日々階段を上るのが大変そうだ。この世界ではゼロは自然数なのだろうか。そう考えながら道なりに進むと、目的地であった二○二号室があった。鍵を開け、中に入り、荷物を置いたところでふう、とようやく一息ついた。


 与えられた部屋を観察すると、引き出しのついた机と一つのベッド、ユニットバスと思しき場所(石鹸は存在するが蛇口は存在しない)があった。どうやら個室であるらしい。ありがたい話だ。

 事前に送っていたらしい荷物をほどき、タオルや服を片付け、机の上に置いてあった書き置きをやっと読む。一枚のメモに、多くのことが記されていた。箇条書きで書くと、


 ①明後日から学園が始まる。学園の鐘が二度鳴るまでに学園へ来ること。教室は入り口から階段を登って一番左の「一」と書かれた教室である。

 ②食事は全て寮でとることができる。外食する場合は連絡をしておくことが望ましい。

 ③寮には階ごとに使用人がいる。朝、朝食の準備ができた際にベルが鳴らされる。

 ④他寮(特に女子)の生徒を泊めることを禁じる。逆も然りである。

 ⑤今夜、歓迎パーティーが開かれる。夕食も兼ねているので、行くことが好ましい。


 ……といったところだろうか。パーティーは面倒くさいが、行かないと今後の交流に支障が出るだろう。行くしかないか。


 日の高さから察するに今は午後三時くらいだ。さて、どうするか……

 悩んだ結果、とりあえず寮の部屋の鍵と荷物に含まれていた全体の十分の一にも満たないであろう幾らかの紙幣と小銭をこれまた含まれていた財布に入れ、財布をポケットにいれる。残りの金は荷物の奥底、衣類の下に隠すようにしまった。心配性なのである。


 部屋を出て、鍵を閉め、階段を降りるも、この寮に住むであろう誰にも出会わない。少し妙だが、楽しみは夜に取っておこうと寮を出て、時間の許す限り散歩することを決意した。さて、どこへ行くか……学園側は明後日から嫌でも見るだろうと思い、左の寮が続く方面に足を向ける。

 とは言っても、先に続いている寮の数などたかが知れており、『狼』側には『狐』『犬』が

『虎』側には『豹』『猫』が像として寮の前に置かれていた。その奥には魔法訓練場らしき野原が広がっており、今も生徒たちが練習しているように見えた。明後日以降の楽しみとして取っておこうと僕は引き返す。そのままの足で学園の入り口……つまり書類を確認された会場の方へ向かった。『虎』と『狼』の手前の梁の前にはどちらも『獅子』が像として置かれていた。僕は学園を横目に通りすぎ、会場から見て僕の寮とは反対方向の道へ進むと、そこにあったのは三つの寮と豪華な家だった。寮の前にある像は『蛇』、『梟』、『人』だった。それぞれにどんな人々が住んでいるのか僕の足りない想像力には想像するよしもない。散歩をしたとて、観察結果を受け止めて、一緒に考えてくれる人がいないと、時間はあまり潰れないのだなあと感じた一方で、程よく日が傾き始めたようだ。そろそろ自分の寮に戻れば、先輩方のやっているパーティーの準備を手伝うという暇潰しもできるだろう、程よく好印象を与えることもできる、と考え、僕はその道から引き返し、再度学園を横目にして、『狼』寮の入り口へ向かった。


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