実力の結果
「生き抜く…だと…?」
そう、その声は言った。意味がわからない。自分で作った世界だと?なにを言っている。
「意味がわからないのですが、もう少し説明をお願いします」
他の人もそう思ったのだろう。黒髪の少女が問う。
「やっぱりわかんないかー…そーだなー…じゃあ説明するよ!けどその後の質問は受け付けないからね?問答無用でスタートするから」
スタートだと?何をスタートするのだというんだ。しかしその説明はなく違う説明が続く。
「まずはねー?今ここには百人いるんだけど……ん?一人多くない?まぁいいか。」
百人以上もいるのか。百人でしなければならないわけではないらしい。ていうか話し方変わってないか?
「気を取り直して……まずはここにいる百一人で戦ってもらう。そのあと、生き残った上位十名には僕の作った世界に招待するよ。それだけ。あ、でも負けても死にはしないから安心してね。でも死にたいぐらいの恐怖に支配されるかもね。戦う方法は気を失わせることができたら、だよ。ふふっ、実力者もいるみたいだから頑張って生き残ってね。それじゃあ──」
背筋に寒気がくる。
「幸運を祈るよ。」
そう言うと、気配がなくなった。しかし、どうしようか。とりあえず生き残らなければならない。
「よくわかんないけど、頑張るしかないね!」
瑞葉も状況を理解したらしい。とにかく勝たなければならないと。
「え?どういうことなの?」
「どうしろってんだよ!」
「怖い…怖い…怖い…」
多数の人間はまだ理解していない。空間がざわざわしている。しかし、理解している人間もいるようだ。
「とりあえず勝てばいんだろ、勝てば!!」
金髪の男はそう言うと周りの人間を蹴散らした。次々と殴っていく。みるみる人が気絶していく。あの男は強い。……チェックしとくか。
「では、私もいかせてもらいますよ」
黒髪の少女も周りの人間めがけて走っていく。何故か彼女が隣を走り去った途端にばたばたと人が倒れていく。
「……そうか、実力者とはそう言うことか」
彼女らを見て気付いた。彼女らの強さは尋常じゃない。故に能力者だということだ。金髪の男は見るに、自らの力を強化するという能力だ。そうしなきゃ人があそこまで飛ばない。今も人が空中を舞っている。黒髪の少女の能力は見ただけではわからない。しかし、何かを注射していたのは見えた。多分、麻痺状態にしているのだろう。しかも強度の。そんなことを考えているともう人が半分ほどになっている。やられていた他の人間も黙ってこなくなった。とうとう俺のとこにも男がやってきた。
「俺だって生き残ってやる!お前が最初の犠牲者だぁぁぁぁぁあ!!」
男は倒れた。俺がやったのではない。瑞葉がやった。
「慎太に手をだすな、このけがれっっ!ってか弱くねー!?」
「俺は守られるほど弱くない。お前はあっちの奴らをやってこい。ここは俺がやる。」
「そう?じゃいってくるよ?怪我しないでね?」
お前は俺の母親か。心配しすぎだろ。まぁ心配してくれるだけありがたいのかもな。
「さてと…」
瑞葉もやってるみたいだし、こっちも負けてらんないな。久しぶりだな、この感覚。血が騒いできたな。
「おらぁぁぁあ!!」
何人かの人がやってきた。みるからに弱そうだ。俺は軽々と攻撃をかわした。
「調子にのるなよ!」
「別に調子になんかのっていない。お前らの攻撃がみえみえで簡単に避けられるだけだ。」
「っんだと、ごらぁぁ!!気絶だけじゃなく、殺してやる!!そして俺の勝ちだ!!」
一人の男がそう叫ぶ。しかしすまんな。勝負はついている。こっちも負けられない。戦ってくれてありがとな。俺は相手の攻撃をかわし、素早く背後にまわって腹部に蹴りをいれた。そしてすかさずその男を持ち上げ、他の人間に投げた。見事に投げた男の手や足などが、他の人間の首に命中した。男たちは倒れた。気絶したようだ。
「俺の勝ち」
俺は勝利した。これじゃ弱すぎる。つまらない。
でも、久しぶりに楽しかった。