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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第五章 食糧難と農地改革
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第89話 畑作りとファーマーの悲哀

「それでね、《スケルトンの骨粉》や《モンスターの糞》で作った肥料を、こうして土に混ぜ込んでいくんだ。本当は土作りとなると、酸性度を調べたり石灰撒いたり堆肥作ったり、色々とあるんだけど、ここはゲームだから土を耕した後は肥料を撒くだけでいいよ。これがほぼ全部の役割をこなしてるようなものだから」


「へ~」


 今後、肥料を作るためには《ゴスト洞窟》に通わなきゃいけないっていう事実を聞いて恐れおののく私だったけど、取り敢えず今は幸いにして、この前のイベントでちょっとばかりスケルトンを倒してたから、それを元にお試しで肥料を作って、それで畑の一角を使える状態にすることになった。

 ちょっとだけほっとしたのは内緒。いやうん、今あるアイテムが無くなったら、自分で獲りに行かなきゃならないことに変わりはないんだけど。


「さて、それじゃあやってみようか。混ぜた後、畝まで作ると良い感じに育つよ」


「はいっ」


 《調合》スキルで作ったばかりの肥料を手に、畑の一角で土に混ぜ込んでいく。

 今はまだ量がないから、ちゃんと柵で範囲を区切って、後からでも分かるようにしておいてから、肥料と混ぜた土を盛り上げて畝にする。うん、こんな感じかな?


「それじゃあ植え付けだけど、まずは一番育てるのが簡単なハーブにしようか。リアルと違って他の野菜の栄養を奪ったりとかっていうことはないし、単純に収穫までのサイクルが早いから、畑作業に慣れるには最適だよ」


「ふんふん」


 とりあえず、クルトさんの教え通り、イベントの景品で貰った苗の前に、ハーブの苗を植えてみる。

 まずは畑に穴を開けて、そこへ小さい苗の根を傷つけないように、優しく埋めていく。

 そうすると、ライム達も興味があるのか、近づいてきてその小さな苗を囲うように見物し始めた。


「ほらみんな、まだ全部植えたわけじゃないから、ちょっと待っててね」


 これ食べ物? いやでもあんまり美味しく無さそう、でもちょっと味見したい、みたいな会話(?)を交わすムギ達ミニスライム隊を下がらせつつ、2つ目3つ目と植えていく。

 こらライム、君はムギ達を窘めなきゃいけない立場でしょ、そんな今にも涎を垂らしそうな顔でこっち見ない! ほら、ちゃんとお菓子あげるから!


「いやあ、ミオちゃんのところはモンスターが多くてほのぼのしてるね、こういう空気もいいなぁ。俺もそろそろ放牧用にマンムーでも飼うかな……」


「おお、クルトさんもテイマーに?」


「俺はあくまでファーマーだから、テイマーとは少し違うかな? 食材アイテムが採れるモンスターを適度に集めて、ここでのんびりとやってくよ」


「そっかー」


 まあ、そうやってのんびりモンスターと過ごすのもいいよね。私の場合、ライムを誰にも負けないくらい強くするっていう目標があるから、ただのんびりしてるわけにもいかないけど。


 でも、今はせっかく農地開拓でゆっくりしてるんだし、偶にはそういうのもいいよね。


「っと、こんなところかな?」


 柵で仕切った範囲の、半分ほどに植え終わった苗を見渡して、私は「よしっ」と1つ頷く。

 まだまだ小さい苗だけど、これが成長すれば料理の香りづけに使えるし、ライム達の食欲が促進して……あれ? それ食費が浮くどころかかえって嵩んでいくような気が……い、いや、これで村長さんのクエストをこなせるなら、それで収支はちゃんと黒字になるはず! ……たぶん、きっと、めいびー。


「残りは《薬草》でも植えておこう、ハーブみたいな食材アイテムと違って、これは収穫個数だけじゃなくてダイレクトに品質にまで影響するから、自分の畑の出来栄えを確認する上で良い指標になるよ」


「はーい」


 クルトさんの指示に従い、残り半分にも等間隔で種を植えていって、これでようやく作業はひと段落。後は植えた物がちゃんと育つかどうか祈るだけ。


「最後に水やりもね。植物はスライムみたいに無限の胃袋なんて持ってないから、やり過ぎちゃダメだよ」


「そ、そんなことしませんから!!」


 私がそう言って抗議すると、クルトさんの視線がテーブルの上、ライム達のために用意されたお茶菓子の山に注がれる。

 ハーブを見に来た子達を宥めるために追加で出したんだけど、ちょっとした山になってるそれがミニスライム達とライムによってみるみるうちに無くなっていく。

 うん、相変わらずみんな食欲旺盛だなー、あははー。


「一応スライムも、満腹度ゲージに上限はある……よね?」


「ありますよ、はい。……満タンになっても食欲が衰えないだけで」


 そんなだからライムの進化先にファットスライムなんて出たのは分かってるんだけど、やっぱりライム達を見てると、その辺りを抑えるのも中々難しい。だってみんなのおねだり可愛いんだもん。ついついご飯あげたくなっちゃっても仕方ないよね。


「気を付けてね?」


「はーい……」


 反論出来ないから、ここは素直に頷いておく。

 そんな私を見て苦笑しながらも、クルトさんは昔を懐かしむように言葉を重ねた。


「けど、ミオちゃんの気持ちも分かるよ。俺もミオちゃんくらいの歳の時、リアルでプランターで花を育てたら、少しでもたくさん世話を焼きたくて水を上げ過ぎたことがあるからね。根腐れで枯らしちゃった時は悲しかったなぁ」


「クルトさんも? 私も実は、学校で飼ってるウサギに手作りクッキー上げ過ぎて、牧草を一時期食べなくなっちゃったことがあるんですよね。あくまで主食は牧草だから、お腹いっぱいになるまでおやつを上げちゃダメだって先生に叱られました」


 ただ可愛がるだけじゃダメなんだって、生き物を飼う難しさを教えられた気分になったのを覚えてる。

 まあ、チョコだけはおやつをいくら上げても牧草までペロッと食べちゃってたけどね。代わりに肥満気味だったから、やっぱり良くはないんだけど。

 もちろんその時の教訓は生物部の活動に活かされてるけど、一方で今のゲームライフに反映されてるかと言うと……い、いやでも、ライムはモンスターだし、本当に胃袋の容量が無限だし、別にこれは平気だと思うの!

 ……平気だよね?


「モンスターの事が可愛いなら、心を鬼にして叱ってあげるのも優しさだよ?」


「はーい……」


 うーん、モンスターの設定資料集とか発売しないかなぁ。自己申告だとライム達、どこまででも食べちゃうし、かと言ってどこまで食べさせたら平気かなんて指標が何もない。

 え? 満腹度ゲージ? あれは体の大きい子も小さい子も、同じもの食べて同じだけ回復するシステマチックな奴だから、参考にならないよ。

 ……ならないよね? いやでも、ムーちゃんとか物凄い食べてたし……うーん?


 そんなやり取りをしながら、水やりも含めて作業を終える。

 これで、本当に今日やれることは何もない。精々、同じ作業を繰り返して畑を大きくするくらいだ。


「よし、大丈夫だね。後は、出来るだけ毎日水を撒くことと、ミオちゃんの場合畑が広いから、最初の内は全部使うことより慣れることを優先した方がいいってこと。それと、植えた植物ごとに最適な肥料の配合や上げる水の量が違うから、その辺りは自分で考えてみるといいよ。ちなみに、《成長促進》スキルや《品質向上》スキルみたいな農業系スキルもあるけど、《成長促進》の方は成長が早い分、実った作物が腐るのも早くなるから、結構こまめにIN出来ないなら取らない方がいいね。《品質向上》スキルも、確かに良い物は採りやすくなるけど、その分一度に採れる量が減っちゃうから、この辺りもしばらくは普通に畑を回してみて、必要になったら習得するのをお勧めするよ」


「はいっ! クルトさん、今日はありがとうございました!」


 クルトさんはクルトさんで、自分の畑の面倒を見ないといけないってことで、指導が終わるなり立ち上がる。

 そんなクルトさんに対して、私は深々と腰を折ってお礼を言うけど、「大したことじゃないよ」と手で制された。

 でも、私としてはこれくらいはしておきたい。何せクルトさん、この話を最初にした時、無償で良いなんて言い出したんだから。


「あの、本当にお礼は良いんですか?」


「うん、今日教えたことはどのみち、近々俺の方で纏めて攻略サイトに載せるつもりだったしね。それに……」


「それに?」


「……ファーマーが増えるなら、これくらいはね?」


「そ、そんなに少ないんですか……」


 現状、コスタリカ村で畑を持ってるプレイヤーは、私とクルトさんの2人だけ。

 とは言え、グライセの方にも畑を持ってる人は居たはずだからそれなりにいるのかと思ってたんだけど、クルトさん曰く全然らしい。


「楽しいと思うんだけどなぁ、野菜作り……」


「ま、まあ、そのうち増えますよ、きっと!」


 今日軽くやってみただけでも、リアルほどじゃないにしろ、工夫の余地があって面白そうだから、儲からないって言うところだけどうにかなれば、興味を持ってくれる人も増えると思う。

 ……いっそ、プレイヤー経営のレストランとかあれば儲かりそうな気もしないではないよね。ネスちゃんとかフウちゃんとか、食いしん坊な子って多いし。意外と需要ありそう。

 まあ、私はやらないけどね。クルトさんはどうだろう?


「あー、どうだろう? 考えたことなかったなぁ。でも、せっかくだし《料理》スキル取って色々やってみるよ。畑仕事以外がひと段落した後に何するかはいつも悩むしね」


 提案してみると、微妙なラインではあるけど、やや好意的な返事を貰うことが出来た。

 もしそんなお店が出来たら行ってみよう。


「まあそれは追々考えるとして、どうしてもお礼をって言うなら、偶に育てた野菜を持って来てくれると嬉しいな。畑について話せるフレンドが欲しかったし」


「それくらいなら喜んで。クルトさんの方も、いつでも来てください、ライム達と一緒にお茶でもしましょう!」


「うん、楽しみにしてるよ」


 そう言って笑うクルトさんを、手を振りながら見送った。

 今度、お礼にうちの畑で採れた野菜で作った料理でも持って行ってあげようと、そう思いながら。

思ったより面倒見の良いクルトさん。これでボッチなのはきっとスライムをテイムしてるテイマー以上に野菜を育てるファーマーが希少種だからに違いない。多分。


それはそうと、本日より某スライムのアニメが始まりますね。私が執筆を始める切っ掛けともなった作品なので非常に楽しみです(^^)v

……まあ、我が家においてテレビのチャンネル決定権がないのでリアルタイムでは見れないんですがね!(泣)

ニコニコ動画の配信とかでも待ちますか……流石にブルーレイが出るまでは待てない(;^ω^)

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