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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第四章 初イベントと深海の怪物
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第72話 リン姉のスライムと船上の修羅場

気付けばPV100万超えてました。

皆さまいつもありがとうございます! これからも頑張りますよー(^^)v

 頬を撫でる潮風。肌を照り付ける太陽。押し寄せる波がぶつかる度、甲板にまで海水が吹き上げて、船が大きく揺れ動く。

 お兄のギルドと協力して作った大型船で、今現在、私達は海の上を進行中。その目的は、主にこの大型船の扱いと仕様を調べて、来るべきレイド戦を想定した情報を集めることだ。


「いや~、やっぱり夏は海でのんびりが一番ですね~……」


 そんな航海の中、フウちゃんは甲板上に寝そべって、のんびりとしたクルージングを楽しんでいた。

 もっとも、船の外観を見れば、それはとても優雅なクルージングとは言えないけど。

 船首に取り付けられた獅子の冠は、まあいい。お兄の趣味だろうし。ただ、船の両舷には立派な大砲が何門も設置されてる上、マストに取り付けられた旗は不気味な髑髏マークが描かれてる。要するに、これは船は船でも海賊船。そういう穏やかな旅とは一番縁遠い……どころか、自らぶち壊しに行く船だ。クルージングするなら、もっと別のを用意した方がいいと思う。

 もっとも、そんな素材は残ってないんだけどね。


「フウちゃんは海じゃなくてもいつものんびりしてるじゃん」


 ムーちゃんの背中に寝そべり、ライムみたいにだら~っと体を蕩けさせたフウちゃんを見て、私は苦笑を浮かべる。

 まあ、まだ戦闘が発生するには早いし、そうでなくてもリッジ君やユリアちゃんとは別にもう1人、頼もしい人が一緒に乗船してくれてるから、多少はのんびりしてても問題ないとは思うけどね。

 普通ならパーティ上限は6人だから、私とフウちゃんとリッジ君とユリアちゃんでパーティを組むと、召喚モンスターと違って、ちゃんとパーティメンバーにカウントされる使役モンスターであるライム、フララ、ムーちゃんの数を合わせて上限オーバーになるところ、この大型船に乗っている間はレイドパーティということで上限30人で組めるみたいだから、1人追加しても何の問題もない。むしろ余る。


「ふふ、フウちゃんはのんびりした雰囲気で可愛いわね」


「えへへ、でしょ? リン姉」


 私と一緒にフウちゃんの様子を見て、くすっと可笑しそうに笑うのは、私の住む部屋のお隣さんこと金沢 美鈴さん、もといリン姉だ。

 お兄達からのお願いでこの船に試し乗りすることになった時、私達だけじゃ動かし方も分からないだろうってことで、操船チュートリアルを一通りこなしたリン姉が付き添ってくれることになったんだけど、いつものようにゆったりとしたローブに身を包み、潮風になびく金色の髪を手で軽くかきあげる仕草は、それだけでもう1枚の絵画みたいで凄く綺麗。とても私と同じ女だとは思えないよ。


「けどミオ姉、実際のところ、こんなにのんびりしてていいの?」


 そんな風に、リン姉と自分との差にいつものように打ちひしがれていると、リッジ君が何かを待ち切れないと言った様子で、そわそわしながら問いかけてくる。

 多分、新しい刀を手に入れて、早く使ってみたくてうずうずしてるんだと思う。やっぱり大きくなっても、そういうところはまだまだ子供だなぁって思うと微笑ましくて可愛い。


「のんびりしているように見えるかもしれないけど、まあ、もう少ししたらモンスターも襲ってくると思うし、大丈夫だよ。ね、リン姉」


「ええ、流石に大型船をいきなり作ったところはまだいないみたいだけれど、小型船を作って海に出たプレイヤーならもうそれなりにいるみたいだから。その人達からの情報によると、陸から離れて沖合に出るほど、モンスターがたくさん出るようになっていったみたい」


 フウちゃんなんかは完全にバカンス気分だけど、一応ここも野外フィールドだから、モンスターが出現(ポップ)する。

 レイドボスとの戦闘は、こんな船を造らされたことから見ても船の上での戦闘になるのは間違いないし、船上戦闘に慣れるのは十分プラスになるはずだ。


「そうなんだ……早く来ないかな」


 ボソリと、腰に差した刀に手を添えながら呟くリッジ君に、私は微笑ましさのあまり思わず頬を緩める。

 いやぁ、リッジ君も随分とお兄みたいなことを言うようになったねー。でもお兄と違って可愛いから許す。

 まあそれはともかく、リッジ君からのお願いとあっては私も何かしら手を打たないとね。

 というわけで、私は早速インベントリから《携帯用料理セット》を取り出し、その場に並べ始めた。


「ミオ姉、それは?」


「料理セットだよ、携帯用のね」


 そう言って、私は船の上で適当なハーブを振りかけて、肉を焼き始めた。

 すぐに辺りに香ばしい匂いが立ち込めて、ライムやフララが瞳を輝かせて、ムーちゃんがピクリと反応する。フララはともかく、ライムに瞳はないけどね。


「お~、先輩、何か作るんですか~?」


「うん、まあねー。フウちゃんにあげるやつじゃないけど」


「え~、なんでですか~」


「そりゃあだって、撒き餌だもんこれ」


 マングローブエリアで、散々活躍してきた撒き餌だし、案外ここでもモンスターを集めるのに役に立ってくれるかもしれない。

 そう思って用意したやつだから、当然プレイヤーであるフウちゃんやみんなの分はない。ぶーぶーと文句を言うフウちゃんをスルーして、更に食べられないと分かって絶望の表情(?)を浮かべるライム達も一旦スルーして……スルー……ちょ、ちょっとだけだよ?

 なんて、作り置きしてインベントリに入れてあったご飯を少しだけ取り出してあげつつ、私は調理を続けた。


 けれどここで、ふとこの輪に加わっていてもおかしくないメンツがいないことに気付いた。


「リン姉、その子はご飯とか好きじゃないの?」


 私がそう問いかけると、リン姉は苦笑を浮かべつつ首の後ろに手を伸ばし、そのフードの中に紛れるように身を隠していた、1体のモンスターを胸元へと運び出す。


「この子もミオちゃんのライムと同じくらい食いしん坊なはずなんだけど、やっぱり知らない人が多くて落ち着かないみたい」


 その腕に抱かれているのは、金色の体をぷるぷると揺らすスライム型のモンスター。ゴールデンスライムのルーデンこと、ルーちゃんだ。

 この船に乗り込む前、自己紹介の時に初めて見せられて、正直その可愛らしさに興奮しきりだった私だけど、どうにも人見知りの激しい子みたいで、リン姉から片時も離れようとしないし、ほとんどの時間をリン姉のフードの中で身を隠して過ごしている。


 本当は、ライムとの感触とか香りとかステータスとかの違いをじっくりしっかり隅々まで確認してモフり倒したかったんだけど、ああも拒否られると流石に手を出せない。

 うぅ、私これでも、動物に好かれやすいってことが自慢だったのに……ムーちゃんみたいにハッスルし過ぎたならまだしも、何もしないうちから嫌われるのは凄くショック。


「ふふふ、そんなに落ち込まないで、ミオちゃんならきっとすぐに慣れるから」


「リン姉……うんっ、私、頑張ってルーちゃんと仲良くなるよ!!」


 ふんすっと気合を入れながら、宣戦布告するくらいの心持ちでルーちゃんを見ると、ヒュンっと凄い勢いでリン姉のフードの中に隠れられた。

 ガーン、やっぱり嫌われてる……しくしく。


「そういえばミオ姉、このイベントって元々クエストチップを集めて景品と交換するのが趣旨なんだよね? ミオ姉ってどれだけ集まったの?」


 そんな風に落ち込んでる私を見かねてか、リッジ君が話題を変えるように質問を投げかけてくる。

 クエストチップ? なんだっけそれ……って、ああ!


「そういえばそんなのもあったね、忘れてた」


「忘れてたってミオ姉……」


「あはは……いやうん、初日はお兄と一緒に取り敢えず進むって感じでクエストとほとんど関係なかったし、2日目からは造船クエストに追われてたし……」


 一応、こなせるクエストは同時進行でこなしてたけど、チップのことは完璧に忘れてた。

 まあ、別にイベントで特に目標とか決めてなかったし、私は別に……


「あら意外ね、ミオちゃんのことだから、てっきり《海竜の卵》でも狙っていると思ってたのだけど」


「ちょっと待ってリン姉その話詳しく」


「え? ええ、いいわよ」


 気になる単語を問い詰めてみると、実は私が知らなかっただけで、このイベント終了時にクエストチップと交換できるアイテムは、もう公開されてるらしい。

 いやうん、考えてみたら当たり前なんだけど、イベントの景品って言っても限定装備とかそんなのばっかだろうと思ってたから、あんまり興味湧かなくてちゃんと調べてなかったんだよね。


 それで、肝心の内容なんだけど、その中に《海竜の卵》と《モンスターの卵》っていうテイマー向けのアイテムがあるみたい。なにそれ欲しい。


「ちなみにミオ姉、今のクエストチップの枚数は?」


「えーっと……」


 インベントリを開いて、アイテムの中からクエストチップを探し出す。

 その枚数は……


「……10枚」


 《海竜の卵》は80枚、《モンスターの卵》でも30枚。うん、まるで足りてないね!


「リッジ君どうしよう、このままじゃ新しい子が手に入らないんだけど!」


「いや、落ち着いてミオ姉、まだ時間あるから……ていうか、クラーケン倒したら結構貰えると思うし」


「そうなの?」


「いや、貰えなかったら誰も倒さないでしょ」


「あ、それもそっか」


 何となく、お兄に言われて倒そうと思ってただけで、特にそっちは意識してなかったけど、考えてみればそれも当然か。

 どれだけ強いモンスターでも……強いモンスターだからこそ、勝った時に得られる物が大きくないと、戦いたくないのが人情だし。


「ミオ姉って、何だかんだ言ってキラ兄の妹だよね……」


「ちょっと待ってそれどういう意味!?」


 私をあんな、ゲームのこと以外何にも考えてない脳筋バカ兄と一緒にしないでよね! 全く!

 なんて憤慨してると、フウちゃんがこれ見よがしにやれやれと肩を竦めながら溜息を吐いた。


「いや~、先輩も動物やモンスターのこと以外、何にも考えてないですから、似たような物だと思いますよ~?」


「ひどっ!? 私だって他にも色々考えてるよ!」


「例えば~?」


「例えばほら、ご飯作ったりとか」


「ライムちゃん達にあげるためですよね~?」


 否定はしないよ、うん。


「あとほら、こうやってアイテム作ったりだとか……」


「ライムちゃん達の育成に便利だからですよね~?」


 ……いやまあ、そうだけど。


「あとは、あれだよ、うん、こうやってレイド戦のために頑張ってるし!」


「つまり、先輩は戦闘狂でペット狂いってことですね~」


「ちがーーう!!」


 なんかおかしい! 私はただライム達とほのぼの過ごしたいだけなのに、その評価はおかしい!


「まぁまぁミオ姉、ミオ姉が僕らのことも考えてくれてるのは分かってるから……」


「うぅ、リッジ君大好き! 結婚しよ!!」


「えっ……えぇぇぇぇ!!!?」


 もう、フウちゃんは意地悪だし、リッジ君だけだよ、私のこと分かってくれるのは!

 そう思いながら、いつものノリで抱きしめると、リッジ君がいつにも増して慌て出して、そのまま頭から湯気を噴き出し始めた。


 うーん? どうしたんだろ?


「む~、先輩、リッジだけ抱っこするのは不公平です~、私も抱っこを所望します~」


「フウちゃんはムーちゃんをもふもふしてるから十分でしょ!」


「み、ミオ姉、ちょ、く、苦しい……」


「あ、ごめんリッジ君」


 抱きしめたままフウちゃんと会話してたせいで、リッジ君が私の胸に顔を埋めたまま窒息しかかってた。

 いけないいけない、ついついリアルの体格基準でやっちゃって……って誰が窒息も出来ないような絶壁かー!!


 と、そんな風に心の中で絶叫していると、私とリッジ君の間に1人のプレイヤーが割り込んできた。


「…………」


「ユリアちゃん?」


 今回は初めて会うリッジ君やリン姉がいるからか、ルーちゃん並の人見知りを発揮して――その割には乗船前、鬼のような形相で「一緒に行く」って言ってたけど――これまで会話に混ざって来なかったユリアちゃんが、私とリッジ君を引き剥がすように手を伸ばしてる。

 理由が思い浮かばず首を傾げてると、ユリアちゃんはじっとリッジ君を睨み付ける。


「あなた、ミオの何?」


「何って……従兄弟だけど」


「そう、従兄弟。そう……」


 何かをぶつぶつと呟いたユリアちゃんは、突然鎌を取り出して構え……って、えぇ!?


「ちょっ、ユリアちゃん!?」


「ミオは私の……私の……うん、私の獲物。あなたにはあげない」


「獲物!?」


 まさかの宣言に、私もリッジ君も驚きのあまり目を見開く。

 えっ、ユリアちゃん、私何か怒らせるようなことしちゃった!? 実は内心でキルしたいくらい嫌ってたの!?

 物騒なセリフの割に、なぜか私を庇うみたいに未だ空いてる方の手を拡げてるのが何とも変な感じだけど、動揺する私にはその意味はよく分からない。

 一方で、そんなユリアちゃんの様子を見てリッジ君は何か得心がいったのか、「なるほど」と一つ頷いた。

 そして、腰から刀を抜き……って、リッジ君まで!?


「ミオ姉は僕が守る。君には渡さない」


「やれるものなら」


 ゴゴゴゴ、と擬音が付きそうな雰囲気を醸し出しながら、バチバチと両者の間で火花が散る。

 言葉だけ拾うと、私の命を狙うユリアちゃんから、リッジ君が守ってる形だけど、絵面だけで言うと、ユリアちゃんが私を背中に庇ってリッジ君と対峙してるようにも見える。いやほんと、何この状況?


「あらあら、ミオちゃんは本当に大人気ね、妬けちゃいそう」


「リン姉まで何言ってるの!? ていうかこれ私のせい!?」


 私が人気だから2人が険悪になるって意味分かんないんだけど!?

 そんな風に思いながらリン姉に反論するも、そんなのはどこ吹く風とばかり、楽しそうに様子を見守るばかりで助けてくれない。

 あーもう、これどうしたらいいの!?


「先輩先輩~、あの2人のことは置いといて~」


「いや、置いといていいのあれ?」


「いいんですよ~、ちょっとした修羅場なだけですから~」


「修羅場はほっといたらダメじゃない!?」


「そんなことより~、それ、いいんですか~?」


「そ、それ?」


 頭を抱えて悩んでいると、フウちゃんが唐突に話しかけてきた。

 相変わらずマイペースに、私のツッコミを総スルーしながら、フウちゃんはちょいちょい、と私の足元を指差す。

 話が進まないから、ひとまずそっちに視線をやると、そこにはもぞもぞと調理中だった私の料理セットを取り囲むライムとフララの姿が。


「って、こらー! ライムもフララも、何してるの!」


 ライムとフララを抱き上げて引き剥がしながら、めっ! と2体とも叱りつける。

 私に怒られてしょんぼりする2体を見てるとつい許してあげたくなっちゃうけど、ここは心を鬼にしないとね。全くもう。


「ちゃんとさっきご飯はあげたんだから、つまみ食いはダメです、欲しいならちゃんと欲しいって言いなさい!」


「言ったら食べさせるんですね~……」


 後ろから、フウちゃんの呆れたような声が聞こえてきたけど、そんなことは……ないこともない、うん。

 いや、けどほら、こんな風にキラキラとした目(?)でおねだりされたら、つい頷いちゃうのも仕方ないと思うの。だからライム、お願いだからその目はやめて。

 フララも……ていうか、ちょっと待って、フララ、そのストローみたいな口でどうやってお肉食べたの? 物理的に無理じゃない?

 ……うーん、謎だ。


「けど実際、先輩の料理なら、匂いだけでも案外海のモンスターが釣られてやってくるんじゃないですか~?」


「いやいや、流石にそれはないから」


 海の中に落としたならともかく、こんな船の上で焼いてる肉の匂いが海のモンスターに感じられるわけないじゃん。


「でも先輩~、ほら、あれ、モンスター来ましたよ~」


「えぇ!? ほんとに来たの!?」


 フウちゃんからの報告に、目を丸くして驚く。

 いやいや、まさかとは思ったけど、本当に匂いだけで海のモンスターが……!?


「ガアッ、ガアッ!」


「って、ペリカン!? ここ空飛ぶモンスターなんて出るの!?」


 そう思ったら、やって来たのは白い翼を拡げ、黄色く大きな嘴を持ったペリカンみたいなモンスター、シーペリップだった。3体ほど群れた集団は、一直線に私達の乗る船目掛け突っ込んでくる。

 海の中からモンスターを釣り上げるつもりだったけど、まさか空の方から襲われるなんて思ってなかったよ。まあ、船の上から漂う匂いに釣られてやってくるなら、妥当なモンスターではあるかもしれないけどさ。


「どちらかというと、空を飛ぶモンスターの方が多いらしいわよ? 森林エリアの方でも出るトビウオみたいな見た目のフライフィッシュや、クラゲみたいな見た目の雷攻撃をしてくるサンダーゼリーとかね」


「そ、そうなんだ」


 まあ、言われてみれば確かに、こんな大型船に乗り込んで来て戦闘するのなら、空を飛べないと話にならないもんね。

 前に戦ったミニクラーケンとかなら、吸盤で張り付きながらよじ登って来そうだけど……まあ、それはともかく。


「とりあえず、ライム、フララ、食べちゃった分は頑張って働こうね!」


「――!」


「ピィ!」


「いっけーー!!」


 抱いたままだったライムを片手で抱え、《投擲》スキルで向かってくるシーペリップ目掛け投げつける。

 流石に、空を飛ぶモンスターなだけあって動きも素早く、ライムはあっさり躱されるけど……でも、問題ない。


「ガガァ!?」


「よしっ、ナイスライム!」


 躱したシーペリップの体に巻き付くように、《触手》スキルで自身を無理矢理張り付かせ、そのまま《麻痺ポーション》を使って1羽を麻痺させる。

 当然、麻痺したシーペリップは飛ぶことも出来ず、ライムと一緒に落ちて行く。そこへ、更にライムに《大岩》を吐き出させ、落下速度を早めた。

 当然、このままだとライムもシーペリップ諸共海に叩きつけられちゃうけど、そこはフララを向かわせて、途中で救出して戻ってきて貰う。


 ライムの触手による固定が無くなったとはいえ、《大岩》と海に挟まれ、麻痺までしたシーペリップに再浮上が出来るわけもなく、落下ダメージに溺れた分のダメージまで加算されて、すぐにHPが0になった。

 これで、まずは1体。


「フウちゃん、後お願い」


「あいさ~、お任せを……ん~?」


 残り2体、ひとまずフウちゃんに撃ち落として貰おうかと思ったら、空にいる2体目掛け飛んで行く影が2つ。


「《ソニックエッジ》!!」


「《デスリープ》」


 手にした武器にアーツのライトエフェクトを纏い、リッジ君とユリアちゃんが人間じゃあり得ない大跳躍を見せながら、急降下してくるシーペリップ2体を切り裂き、あっさりとポリゴン片に変えて霧散させた。

 その様子をあんぐりと口を開けて見ている私を他所に、2人は甲板に着地するなりお互いに勝ち誇るように胸を張る。


「僕の方が早かった」


「そんなことない。私のほうが一瞬早く仕留めた」


「いーや僕だね」


 そう言って、再び視線を交わし火花を散らせ合う2人。

 いやほんと、なんで2人ともそんなにいがみ合ってるの? 前に会った時にリッジ君がPKKについてちょっと思うところがあるような発言はしてたけど、今回は特にそんな素振り見せてないし。うーん、全然わかんない。


「ところで先輩~」


「何フウちゃん? 今ちょっと忙しいんだけど」


「それより~、まだモンスター来てるんですけど~」


「えぇ!?」


 フウちゃんが指し示す先には、3体どころじゃない、10体近いシーペリップの群れが迫っていた。

 うん、本当にそれどころじゃなかったよ。


「ちょうどいいね、あれではっきりさせようか。どっちが多く仕留められるか勝負といこう」


「望むところ」


「あのー、2人共? もうちょっと仲良く……」


「「ミオ(姉)は黙ってて」」


「あ、はい」


「ふふふ、頼もしい子達ね」


 あれだけの数に襲われたら大変だと思うんだけど、未だに戦闘体勢を取らないリン姉に釣られてなのか、全く危機感を覚えない私がいた。

 とりあえず、シーペリップ達のご冥福をお祈りします。南無。

なんやかんやで打ち解けて(?)いくユリアちゃん

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