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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第四章 初イベントと深海の怪物
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第68話 水晶の洞窟とビート魔改造計画

ま た や ら か し た

はい、投稿ミスで1話すっ飛ばしていたのに今日になってやっと気が付きました。

なまじ飛ばしても違和感の少ない話だったのが災いしましたが、一応後の伏線(?)になるので遅ればせながら投稿します、大変失礼しました……m(_ _)m

 トロピカルエイプの乱獲と森林伐採を終えた私達は、森林エリアの更に奥へと進んでいった。

 途中、トビウオみたいなピラニアみたいな、中途半端な見た目のモンスター、トビニアが大量に出て来る川を渡ったけど、例の如く《料理》スキルで作った肉片を撒きながら走ったら、特に襲われることなく駆け抜けられた。


 そうして辿り着いたのは、どこか静謐な空気が漂い出てくる洞窟だった。


「え~っと、ここは《蒼水結晶》が採れるんでしたっけ~?」


「うん、そうだよ」


 ムーちゃんに乗ったまま、洞窟を興味深そうに覗き込みつつ尋ねるフウちゃんに、私は頷く。

 お兄と一緒に探索してる間、別行動を取ってたらしいリン姉とそのパーティメンバーからの情報では、この場所に《造船クエスト》達成に必要なアイテムの1つ、《蒼水結晶》が採れる鉱脈があるらしい。

 なんだか墓地エリア同様ちょっと不気味な雰囲気が漂ってるけど、中に出るのはホラー系のモンスターじゃなくて、クリスタルバットやクリスタルスコーピオンみたいな、鉱石で出来た体を持つ動物型モンスターらしい。

 しかも、ここに出て来るクリスタル系のモンスター達は、倒すと各種核石アイテムをドロップする上、それを召喚石と《合成》すると、ステータスをかなり効率よく伸ばせるらしいから、ここならアイテム集めと並行してビートの強化まで出来る、一石二鳥のエリアだ。


 もっとも、《召喚術師(サモナー)》をサブ職業含め選んでるのはこのパーティでは私1人だから、ここがお得なエリアだと思えるのも私だけだけど。


「それなら、核石が出たら全部ミオにあげる」


「え、いいの?」


「うん……使い道ないから」


 私がそう説明すると、ユリアちゃんが戦闘中に出た核石は全部くれるって提案してくれた。

 元々、役割分担的に戦闘はユリアちゃんとフウちゃんに任せっきりになっちゃいそうだったし、それは有難い。


「それなら、代わりに私が採取したアイテムをトレードで……ってあれ? けど、ユリアちゃんだと、鉱石アイテムも特に使い道ないような……」


 パーティで戦闘してれば、ドロップアイテムを融通し合うのも醍醐味だけど、私はここで採掘を中心にする予定だから、手に入るのも自然と鉱石系のアイテムになる。

 でも、鉱石は基本的に装備を作るのにしか使わないし、装備を作るのは鍛冶師の仕事だ。だから、鍛冶師以外のプレイヤーにとって、鉱石はただの換金アイテムでしかない。


 もちろん、それは核石にしても同じことなんだけど……だからって、私は有用なアイテムを貰ったのに、換金アイテムでしか返せないっていうのはちょっともやもやする。


「別にいいんじゃないですか~? ゴールドだってあって困るものじゃないですし~。あ、もちろん私も差し上げますよ~、お代は……先輩の愛情で~!」


「はいはい、ありがとうねフウちゃん」


「う~、ユリアに比べて私の扱いが雑ですぅ~……」


 ムーちゃんの上でぐふぅ、と項垂れてうつ伏せに倒れるフウちゃんの頭をよしよしと撫でて宥めながら、話が纏まった私達は、洞窟の中へと足を踏み入れる。

 中の様子は、多少薄暗くはあったけど、洞窟全体がどういうわけかぼんやりと光ってるお陰で視界には不自由しなかった。青白い光が、天井やそこかしこから伸びる鍾乳石と合わさって、どことなく神秘的な雰囲気を醸し出している。


「お~、洞窟の中は涼しいですね~」


「あ、言われてみれば確かに。外も不快ってほどじゃないけど、結構温度差あるんだねー」


 ゲームの中だし、本当に温度差があるんじゃなくて、この洞窟に入った時『涼しい』って感じるだけとかなのかもしれないけど、その辺りは温度計とかあるわけじゃないし、よく分からない。

 ぶっちゃけ、不快でなければ何でもいいしね。


「2人とも、モンスター来た」


 そんな話をしていると、早速ユリアちゃんがモンスターの存在に気付いて注意を促してくれた。

 私も《感知》スキルはあるけれど、ソロが長いユリアちゃんも同じスキルを持ってるらしくて、私より早く気付いてくれることも結構ある。


 そして、一瞬遅れて《感知》に引っかかったのは、全身クリスタルで出来た巨大な蠍。さっきも言ってたクリスタルスコーピオンだ。


「お~、早速ですか~……じゃあ、先手行きますよ~、《弓技・村時雨》~」


 フウちゃんが弓を構えながら、クリスタルスコーピオンに向けて矢を放つ。

 すると、一本に見えた矢は一気に三本に増え、それらが一斉にクリスタルスコーピオンへと突き刺さる。


「続けて、《弓技・五月雨撃ち》~」


 更に、その結果を確認するよりも紡がれたアーツによって、矢をつがえ直すこともなく、ただ弦を引くだけで次々と矢が生まれ矢継ぎ早に放たれていく。

 最初の三射を受け、既に大きくHPを減らされていたクリスタルスコーピオンは、それであっさりと倒された。

 うん、お見事。さっきのトロピカルエイプに続いて、ここでもフウちゃんは活躍しそうだ。


「もう、フウちゃんだけに任せておいてもなんとかなりそうだよね」


「そんなことないですよ~? いくら取り回しやすい《短弓》スキルでも、接近戦にはやっぱり弱いですから~」


 そんなことを言ってる間に、新しくもう一匹のクリスタルスコーピオンが現れて、フウちゃんの方に向かってくる。

 ユリアちゃんも私も気付いてたけど、敢えてそのままスルーして、クリスタルスコーピオンの動向を見守っていると……


「ムオオオオ!!」


 フウちゃんの乗騎であるムーちゃんが咆え、その長い鼻を向かってきたクリスタルスコーピオンへと叩きつける。

 グシャッ! って音が聞こえてきそうな勢いで叩き潰されたクリスタルスコーピオンは、その一撃だけであっさりと倒され、ポリゴン片を撒き散らしながら消えて行った。


「……まあ、1体1体ならなんとかなりますけど~、数押しされると流石にキツイですから~」


 私とユリアちゃんの視線を受け、フウちゃんはそう言ってそっと目を逸らした。

 うんまあ、フウちゃんのことだし、全部任されると流石に面倒だとか思ったんだろうなぁ。まあ私も、本当に全部押し付けようとは思ってなかったけど。

 ユリアちゃんも、あまり表情に変化がないように見えて対抗心を燃やしてるのか、ふんすっ、と気合を入れてる様子だし。


「大丈夫……次は私がやる」


「次と言わず、何なら全部持ってっていいですよ~? 私はのんびり後をついていきますから~」


「こらこら」


 そして、気合のままに宣言するユリアちゃんに乗っかって、フウちゃんはしれっとサボろうとする。

 それを窘めつつ先へ進めば、またも次なるモンスターが現れた。

 けど、今度は1体だけじゃない。クリスタルスコーピオンに加えて、2体のクリスタルバットも一緒だった。


「お、今度はクリスタルバットですか~。飛んでる敵ならまた私の番ですかね~」


 押し付けられるのは嫌と言いつつも、空を飛んでる敵は自分の役目だと分かってるのか、特に何を言われるでもなく矢をつがえるフウちゃん。

 けどそれよりも早く、ユリアちゃんが鎌を携え飛び出していった。


「《ダークネスクロウ》」


 近くに生えていた鍾乳石を足場に跳び上がり、手にした鎌を一閃。それだけで、黒い三条の軌跡が空中に描かれ、それに巻き込まれた2体のクリスタルバットのうち、一体は首を落とされて一撃で倒され、もう一体は翼を切断されて地面に墜ちる。

 そして、目の前に落ちてきたクリスタルバットに驚いたクリスタルスコーピオンが、その動きを止めた隙に、上空から一気にその鎌を振り下ろす。


「《デススライサー》」


 再び一閃。それによって、残った2体のモンスターもまた、あっけなくポリゴン片となって砕け散った。


「……私も、役立つ。でしょ? ミオ」


 ふんすっ、と胸を張りながら、ちょっとだけドヤ顔で言うユリアちゃんを見て、私とフウちゃんは顔を見合わせた。


「先輩~、もうユリアだけで良い気がします~」


「今回ばっかりは同感かも」






 カンッ! カンッ! と金属同士がぶつかり合う甲高い音を立てて、ポロポロと足元に無数の鉱石が散らばっていく。

 普通なら、それをプレイヤーが自分の手で拾い集めなきゃならないんだけど、私の場合はそれを、ライムがパクパクと体に取り込み、《収納》スキルで仕分けながら格納していってくれるお陰で、中々効率よく採掘を進められている。


「よいしょっと~……ユリア~、そっちお願いします~」


「んっ」


 その後ろでは、フウちゃんとユリアちゃんがモンスターの掃討をどんどんと進めていた。

 ユリアちゃんが駆け抜けて鎌で斬り裂き、フウちゃんが後ろから射貫く。その2人のコンビネーションに、ほとんどのモンスターが成す術もなく、ただ狩られていくその光景を見てると大変頼もしい。


「ピィピィ!」


「ビビ!」


 そんな2人に負けじと、フララとビートもまたクリスタルモンスター相手に奮闘してる。

 採掘は私とライムで事足りるからってことで、手持無沙汰なフララとビートの2体には、フウちゃんやユリアちゃんを手伝って戦闘に参加して貰っている。


「みんな頑張ってるなぁ、私達もじゃんじゃん採掘してかないとね、ライム」


「――――」


 ぷるんぷるんっと体を揺らし、気合を入れるようにしてぱくぱくと鉱石を取り込んでいくライム。

 なんとも可愛らしい姿だけど、傍目からだと鉱石を夢中で食べてるようにしか見えないから若干不安だ。

 まあ、ライムはつまみ食いなんてしないって信じて……信じ、て……ま、まあ、きっと大丈夫、だよね?


 なんて、そこはかとなく不安になりながらもサクサクと探索は進み、ついにこの洞窟エリアのボス……クリスタルゴーレムのいる場所までやって来た。


「《弓技・五月雨撃ち》~」


「《デスロンド》」


「フララ、《トルネードブラスト》! ビート、《突進》!!」


 ……けど、なんでもこの洞窟エリア、辿り着きさえすればさほど難易度は高くないって言われてて、その言葉通りボスはそこまで強くはなかった。動きはさほど速くないから、ATKがいくら高くても当たらないし、DEFもジャイアントロックゴーレムほどじゃない。それに何より、サイズが《北の山脈》のクレイゴーレムくらいしかないから、弱点を普通に攻撃しやすい。


 フウちゃんの豪雨のような矢の連射と、ユリアちゃんの鎌による一つの舞いのような連続攻撃。更に、フララとビートの同時攻撃を前にあっけなくHPを散らせ、クリスタルゴーレムは打ち倒された。


 終わると同時に、フララが私の胸に飛び込んできて、すりすりと甘えてくる。

 今日一日、ライムと採取するばっかりで構ってあげられなかったから、寂しかったのかな? ふふふ、甘えん坊だなぁ。そういうところが可愛いんだけど。

 あとビート、そんな様子を窺うようなことしなくても、私はいつでもウェルカムだよ? 流石にフララみたいに勢いよく来られると受け止めきれないけどさ。


「ふ~、終わりましたね~先輩~」


「うん、お疲れ様、フウちゃん。ユリアちゃんもありがと!」


「う、ううん、これくらいなんとも……」


 ひと通り自分の従魔達を甘やかした後、パーティメンバーの2人のことも労い、頭を軽く撫でてあげた。

 フウちゃんは気持ちよさそうに、ユリアちゃんは恥ずかしそうにそれを受け入れて、その対照的な反応に思わず笑みが零れる。


「そ、それより、これ……忘れるといけないから、今の内に」


「あ、じゃあ私も~」


 そして、撫でられる気恥ずかしさに耐え兼ねてか、ユリアちゃんが押し付けるようにトレード申請を送ってきて、それに便乗する形でフウちゃんもまた同じものを送ってきた。

 内容はもちろん、洞窟に入る前にも約束してた、クリスタルモンスター達の核石アイテムだ。


「ふふっ、ありがとう2人共! じゃあ代わりに……」


 それを受け取る代わりに、2人には今回の探索で手に入ったアイテムの内、造船クエストと関係がない物を全部2等分して2人に送り返した。

 本当は私の方でゴールドに変えたらよかったんだけど、相場とかよく分からないから、現物支給の方が確実だと思う。


「ありがとミオ」


「む~、私は先輩にちゅーして貰えればそれでよかったんですけど~?」


「フウちゃんは何バカなこと言ってるの」


 普通にお礼を言ってくれたユリアちゃんにどういたしまして、と返しつつ、フウちゃんにはジト目を返す。

 全くこの子は、その気もないのに人をからかうんじゃありません。


「う~、ユリア~、先輩が意地悪します~」


「わっ、わっ」


 そして、今日一日ずっとコンビで戦闘してきたお陰で仲良くなったのか、フウちゃんがユリアちゃんに抱き着いてる。

 うんうん、ユリアちゃんもこの調子で、どんどん友達を増やしていってほしいなぁ。


「さてそれじゃあ、私はビートの強化でもしようかな」


「ビビ」


 フウちゃんとユリアちゃんがいちゃいちゃしてる間、ただ待ってるのも何だしってことで、ビートを《送還》して召喚石に戻すと、2人から譲って貰った核石を並べ、次々に《合成》していく。


「《合成》! 《合成》!」


 ビートのステータスで、特に伸ばしたいのはやっぱりATKだ。

 というわけで、それが一番伸びる《クリスタルスコーピオンの核石》を中心に、ムカデっぽい見た目のモンスターから採れた《クリスタルセンチピードの核石》や、今手に入ったばかりの《クリスタルゴーレムの核石》なんかも混ぜていく。

 逆に、AGI中心とは言えINTなんかも上がる《クリスタルバット》や《クリスタルスラッグ》なんかは控えめに、けれどやっぱりビートのステータスがどんどん上がってくのを見るのは楽しいから、結局は少しでもATKやAGIが上がるならつい合成していっちゃう。


「先輩~、何してるんですか~?」


「うん? 何って、ビートの強化だよ?」


 ピカッ! ピカッ! と、《合成》する度に発光してるのが気になったのか、フウちゃんが話しかけてくる。

 《合成》のために手が離せないから良く分からないけど、何となくユリアちゃんも近くに来てる感じがする。


「いえ、それは分かるんですけど~……そんなに合成しちゃって大丈夫なんですか~?」


「え? 大丈夫って?」


「ほら、召喚モンスターって、強化したらしただけ召喚コストが上がってくんですよね~? 先輩のビート君、かなりATKが強いみたいですから、そんなにガンガンやって大丈夫なのかな~と」


「うーん、まあ、大丈夫だよ。私は他の人みたいに、何体も召喚して使役するつもりは今のところないし」


 前にリン姉と一緒に、ヒュージスライムと戦った時のことを思い出す。

 あの時のリン姉は、何体もゴブリンを呼んで、それぞれのステータスや装備の違いを活かした連係攻撃を持ち味にしていた。

 けど、私にはあそこまで細かく戦術やら何やらを考えて教える頭はないし、シンプルに強い子1体にした方が活躍させてあげられると思う。


 まあ、だからって調子に乗って上げ過ぎると、MP不足でビートが召喚出来ない事態になっちゃうかもしれないから、ある程度は自重するけどね。


「とりあえず、まだ足りないし、もう何周かしないとねー」


「うへ~、周回ですか~。ちょっと面倒ですね~」


「まあまあ、終わったら、前に言ってたのんびりできる場所、探してあげるから、ね?」


「む~、約束ですよ~?」


 ムーちゃんの上でだらーっとしながらブーブー言うフウちゃんをそう言って宥めながら、私達は元来た道を引き返していく。

 フウちゃんにはああ言ったけど、思ってた以上にアイテムの集まりはいいし、そんなに時間もかけずに造船クエストは終わりそうだ。

 初めてのレイドボスとの戦いは、近い。

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