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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第四章 初イベントと深海の怪物
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第67話 造船クエストと素材集め

「造船クエストって?」


 お兄のメッセージに『内容次第でいいよー』と返事を返したら、すぐにビデオ通話のコールが鳴り、そのまま通話越しに直接話すことになった。

 そして、改めてそう質問すると、『ああ』と一つ頷いてから、お兄は話し出した。


『ほら、クエストNPCのウィルフィーヌ姫いただろ? 今日はあの人の指示通り、クラーケンに立ち向かったっていう英雄さんを探してたんだよ』


「ああうん、覚えてるよ」


 そんな物騒な怪物は私じゃ勝ち目ないだろうから、あまり積極的に関わるつもりはなかったけど、言われてみればお兄はその話を聞いて、クラーケン討伐に乗り出す気満々だったし、今日それをしててもおかしくないか。


『それで、英雄の方は見つからなかったんだけど、代わりに兵士っぽい人を見つけてな? 『彼の怪物に立ち向かうには、まずは船が必要だ』って言って、造船クエストが発生したんだよ』


「なるほど。それで、経緯は分かったけど、なんで私に?」


 簡単なクエストなら、それこそお兄が今組んでるパーティでやればいいし、そうじゃないならそれこそ私なんてお呼びじゃないと思うんだけど。

 そう思って尋ねると、どっちかというと後者寄りの理由だったらしい。

 ただ、その方向性は思ってたのと少し違った。


『造船するのに必要なアイテム数がかなり多いんだよ。6人乗り用の小型船か、30人乗り用の大型船の2パターンあって、明らかにレイド戦想定なんだよな。で、うちのギルド、メンバーまだ15人しかいないんだわ』


「うん、それで?」


 この時点で大体察してたけど、一応続きを聞いてみる。

 そうすると、お兄はとても良い笑顔で、私の予想通りの答えを返してくれた。


『ミオ、俺らと一緒に大型船作ってボスバトルしようぜ!』


「言うと思ったよ」


 やれやれと肩を竦めるも、私としてもレイド戦がどういうものかは興味があるし、そういう大型ボスなら報酬も良いはずだから、割とのんびりイベントしてる私としては、そういう大きな収入は有難い。それさえ終わっちゃえば、後はのんびりやれるだろうし。

 本当なら、そういう大規模なクエストに参加できるほどの実力もないんだけど、お兄についてくならまあ問題ないでしょ。


「分かった、それでどうしたらいいの? 私もそっちに合流する?」


『いや、ミオはミオで俺が言うアイテムを集めてくれ。クエストNPCからも、『船を作るなら“最低限”これだけのアイテムが必要じゃ』って言ってただけだから、多すぎて困るってことはないだろうし、手分けした方が良さそうだ。あ、報酬の方はちゃんと山分けするから心配すんなよ』


「ふーん、了解ー」


 『じゃあ、また夕飯でな』と言って、お兄との通話が切れる。

 あれ、結局アイテムの種類は? って一瞬思ったけど、すぐにフレンドメッセージが飛んできて、それにアイテムの一覧が記載されていた。

 えーっと何々……? 《ビッグクラブの甲殻》《ロッククラブの外殻》《ブラックアリゲーターの皮》《トロピカルエイプの毛》《サンダーイールの滑皮》《上質なマングローブの木》《上質なヤシの木》《蒼水結晶》、それから……って多いよ、ほんとに多いよ!! しかもこれを、物によっては三桁集めろって!? うわー、これはうん、確かに1人じゃ絶対終わんないよ。


「先輩、どうでした~?」


 私が盛大に顔を顰めたのを見てか、フウちゃんが話しかけてくる。

 私は敢えてその表情を保ったまま、メッセージの内容を可視化してフウちゃんに見せると、フウちゃんもまた「うわ~」っと引き気味に呻いた。


「先輩、頑張ってくださいね~」


「何言ってるの、フウちゃんも一緒に集めるんだよ?」


「え~? なんでですか~」


「これが終われば、後はのんびりしてても大丈夫なくらい報酬手に入ると思うよ? それに、このアイテムの内どれだけ集めろとかも言われてないし、ボス戦自体もお兄達が主力で私達は数合わせのオマケだろうし」


「よし、張り切っていきましょ~」


 調子の良い掌返しをするフウちゃんに苦笑していると、反対側から小さく裾が引っ張られるのを感じた。


「ユリアちゃん、どうかした?」


「え、えっと……私は……」


「ユリアちゃんも手伝ってくれる?」


「……! う、うんっ」


 こくこくと何度も嬉しそうに頷くユリアちゃんを見て、私はまたライム達みたいに撫で回したくなる衝動に駆られるけど、あんまりやってると話が進まないから、今はぐっと我慢する。

 ああもう、可愛いなぁ。私もこんな妹が欲しいなぁ……


「先輩~、涎出てますよ~」


「はっ! って、出てないよそんなの!」


「けど、そんな感じの顔してました~」


「しーてーまーせーんー」


「あうぅ~、先輩アイアンクローはなしですよ~」


 ユリアちゃんを天使とするなら、生意気な小悪魔と言った感じのフウちゃんの頭をがしっ! と掴んでぐりぐりとやってると、ご飯を食べ終わったらしいライム達も集まってくる。


「よし、それじゃあみんな、アイテム集め、張り切っていこー!」


「お、おー……!」


「うえ~い」


 ライム達に釣られて、一緒に拳を振り上げるユリアちゃんと、だるそうに腕を持ち上げるだけのフウちゃん。

 そんな2人とモンスター4匹を引き連れて、私は再び《スプラッシュアイランド》へと向かった。





 取り敢えずアイテム集めのついでにと、色々と《スプラッシュアイランド》の拠点で討伐系のクエストを受けてから、私達は意気揚々と森林エリアにやって来た。

 まだ足を踏み入れてなかったここでは、砂浜エリアやその先にあった遺跡エリアに比べて、採取アイテムが多く採れるってお兄から聞かされたから、アイテム収集にはこっちの方がいいだろうと思ってやって来たんだけど……


「ユリアちゃんはもう見たから知ってたけど、フウちゃんって強かったんだね」


「むっふっふ~。もっと褒めてくれてもいいんですよ~?」


 意外なことに、フウちゃんが大活躍していた。

 フウちゃんの戦い方は、テイムしているムーちゃんによる強力な物理攻撃……ではなく。その上に跨るフウちゃん自身が放つ、弓矢による攻撃だった。


「《弓技・五月雨撃ち》~」


 間延びした言葉でアーツの名が紡がれ、フウちゃんが手に持った短弓から、次々と矢が打ち出される。

 それは、木々の合間を縦横無尽に飛び回り、私達を翻弄しようとしていたピンク色の猿みたいなモンスター、トロピカルエイプに突き刺さり、伸ばした手が次の枝を掴むことなく地面に叩きつけられる。


「ふっ!」


 そこをすかさず、ユリアちゃんが距離を詰めて、鎌で首を一閃。クリティカルダメージですぐさま処理された。

 うーん、私の出番全くないなぁ。その分採取に集中できるから、良いと言えば良いんだけど。


「よしっ、行くよー。えいっ、ほっ!」


 手早くモンスターを仕留めて行くフウちゃんとユリアちゃんを横目に、私はNPCショップで買ってきた伐採用の斧を使って、適当な掛け声と共にヤシの木を切り倒してる。

 《伐採》スキルがあると効率が良くなるらしいけど、無くても採取は出来るから、今回は取得してない。

 またライムが食べたがるようなら、取得するかもしれないけど。


「あたっ」


 ただこれ、伐採中にヤシの実やら葉っぱやら、木の上で採れるアイテムがボロボロ落ちて来るから、結構痛い。

 別にダメージが入るわけじゃないんだけど……後ろで2人が大立ち回りしてる間、私はヤシの実をゴツンゴツン頭に受けてるって状況が微妙に悲しい。


「ピィピィ」


「ありがと、フララ」


 そんな私を慰めようとしてか、フララに頭をなでなでされる。

 うん、なんとも単純だけど、やっぱりこうされると気分が落ち着く……


 なんてやってるうちに木が倒れて、辺りにどっさりと木片が転がる。

 それをライムと一緒に拾い集めて、終わったらまた次の木を伐採。普通なら、伐採中にモンスターに攻撃されないように気を付けてなきゃいけないんだけど、フウちゃんとユリアちゃんのタッグを前に、私を襲う余裕なんてないのか、全然そんな気配はない。


 そして、何本か木を切り倒した辺りで、ひとまず出現中のトロピカルエイプは処理し終わったのか、フウちゃんが後ろから声をかけてきた。


「先輩~、終わりましたよ~」


「あ、フウちゃん、ユリアちゃんもお疲れ様ー」


 ムーちゃんの上で、のんびりと手を振りながら戻ってきたフウちゃんと、その陰からさりげなく戻ってきたユリアちゃんのことも労いながら、一旦斧を置く。


「どうだった?」


「ん~、《トロピカルエイプの毛》は4本ほどですかね~、後は大体《トロピカルエイプの肉》か尻尾です~」


「私も、似たような感じ」


「ふむふむ、私の方は、《ヤシの葉》が10枚と、《ヤシの木片》が40個、《ヤシの木》が4本、それから《上質なヤシの木》が6本だったよ!」


「……《上質なヤシの木》、少なくないですか~?」


「だって木が倒れた時にしかドロップしないもん! 仕方ないじゃん!」


 木を倒すのにそこそこ時間がかかる上に、倒しても《上質なヤシの木》が取れるとは限らない。

 それでも、普通の《ヤシの木》よりも《上質なヤシの木》の方がたくさん出てるんだから、まだ運が良い方だと思うんだよ! 多分、《妖精の祝福》装備についてる《幸運》って追加効果の賜物なんだろうけどさ。


「とりあえず、木以外にも色々とアイテム採れる場所あるみたいだし、一通り回ったら次のエリアに行こっか」


 でも、大変だからってやらずに集まるなら苦労はないし、改めて斧を構える。

 そうでなくても、この森の中は果物とかの食材アイテムが色々採れるから、中々嬉しい。出来れば常設エリアにして欲しいくらい。


「あ~、そういうことなら私、採取手伝いますね~」


「え? フウちゃんも《採取》スキル持ってるの?」


 すると、意外なことにフウちゃんが自ら手を上げて手伝いを申し出て来た。

 あまりにも予想外なその言葉に、よっこらせ、と言いながらムーちゃんから降りるその姿をマジマジと見つめちゃう。


「はい、《採取》なら、戦闘よりものんびりレベリングできますからね~、生産系スキルほど頭使わなくていいですし~」


「な、なるほど……」


 けど聞いてみれば、それはそれはフウちゃんらしい理由からだった。

 別に、生産系スキルだってそれほど頭使うわけじゃないと思うんだけどなぁ。試行錯誤することが多いだけで。


「ていうか、それならフウちゃんの《短弓》スキルはどうやって成長させたの? 流石に採取じゃ上がらないでしょ」


「そうでもないですよ~? さっきから先輩が木を切り倒そうとして、何度も頭をぶつけてる木の実とか、弓で射落として採取したりしますし~。もちろん、戦闘もしましたけど~」


「それが出来たなら先にやって欲しかったよ!」


 そうすれば、頭を抱えながら伐採する必要なかったのに!


「だって、私戦闘中でしたし~」


 とは思ったけど、もっともな理由で反論されてぐうの音も出ない。

 次からは私も何か手を打とう……


「それじゃあ、私とフウちゃんで少し採取するね。ユリアちゃん、ちょっと待たせちゃうけど、ごめんね?」


「ううん、平気……トロピカルエイプ、クエストの指定討伐数にはまだ足りてないし、私は復活した端から適当に乱獲してるから」


 1人待たせる形になることを謝ると、何でもないことのようにそんなセリフが飛び出してきた。

 イベント開始日に、拠点を出てすぐの砂浜エリアで、複数パーティがビッグクラブの奪い合いをしてたのを思い出すけど……うん、ユリアちゃん、1人であれが出来るんだー。

 ……トロピカルエイプ、ご愁傷様。南無。


「じゃ、じゃあ、早めに終わらせるから、ほどほどにね?」


「うん」


 どうせ倒すんだから同じと言えば同じなんだけど、ちょっとだけモンスターが哀れに思えた私は、出来るだけ早く採取を終わらせようと、そそくさと次の採取ポイントへ向かった。

リスキルって厳密にはFPS用語な気もしますけど、モンスターを復活した端から倒すのって他に何か言い回しありますかね……?

※やはりリスキルは違和感があるので修正しました。

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