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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第三章 初イベントと常夏の島
54/191

第54話 お兄の強さと一斉攻撃

やってしまった(T-T)

いつものように帰宅した後、投稿前の最終チェックまで間違いなくしたのに、なぜか予約投稿だけすっぽりとやり忘れておりました(^_^;)


活動報告なんて呑気に書いてる場合じゃねえ! というわけで遅ればせながらケータイからの投稿です、普段と違うのでおかしなところなどあったら容赦なくご指摘ください……

「ミオ!!」


 私の体がジャイアントロックゴーレムの剛腕に殴り飛ばされ、地面に叩きつけられる。

 お兄みたいなタンカーならともかく、私は貧弱な後衛職だし、そんな攻撃とても耐えられるはずもない。

 けれど、私のHPは0になることなく、ギリギリのところで持ちこたえた。


「いたたた……ありがとうライム、助かったよ」


 剛腕に殴られる直前、ライムが《触手》スキルを使って、私の体を守るように盾になってくれたお陰でダメージを抑えられて、それでなんとか私は生き残ることが出来た。


 だから、あれだけ弾き飛ばされたのに、最後まで張り付いたみたいに私の肩から動かなかったライムにお礼を言うと、ぷるんっとその体を揺らして誇らしげに胸(?)を張る。

 そんな仕草が可愛くて、ついその場で撫でてあげると、ライムの体がふにゃあ、と気持ちよさそうに崩れた。


「ミオ、呑気に遊んでないで逃げろ、まだ狙われてるぞ!」


「えぇ!?」


 なんとか生き残れたとはいえ、私もライムもHPは風前の灯火。

 2度目を喰らっちゃたまらないと、すぐに走ってその場から逃げ出した。


「フララ、《エアショット》をあの目立つコアに!」


「ピィ!」


 フララが牽制の風属性魔法を弱点部位に向けて放つと、ジャイアントロックゴーレムは腕をクロスさせてコアを庇い、その攻撃を防いだ。

 《トルネードブラスト》ならともかく、流石に最弱魔法じゃ仮令当たってもほとんど通じないだろうけど、弱点部位に向かってきた攻撃は無視出来ないみたい。


「《ヘイトアクション》! こっち向け!」


 そこへ、お兄が背後からアーツを使い、もう一度気を引いてくれた。

 そのお陰で、私に向いていたジャイアントロックゴーレムの注意がお兄に向かい、なんとか私は一息吐くことが出来た。


「多分こいつ、弱点に攻撃されるとヘイトが一気にそいつに向くんだよ。あまり迂闊に攻撃しない方がいいな」


「そういうことね……なら、やるなら一度にドカーンとやらなきゃってことだね」


 とは言え、私にはあまり強力な威力を持った一撃っていう攻撃手段は持ち合わせてない。

 だから、みんなのタイミングを合わせて、一斉にそれぞれの最大攻撃をぶつけるだけだ。


「おう。だから今の内に回復しとけ」


「ううん、しない」


「ん? なんでだよ」


「そりゃだって、回復アイテムに余裕ないし」


 私と会話しながらジャイアントロックゴーレムの拳による連撃を受け流すお兄に、《アンバーポーション》を1本投げながら、私は言う。

 インベントリの残りは、もはや《アンバーポーション》1本と、《HPポーション》1本、それから《MPポーション》2本、《ハニーポーション》が6本と《ミルキーポーション》が4本。

 私とライムのHP回復なんてしてたら、それだけで残りがほとんど全部無くなっちゃう。


「もう弱点は見つけたし、これ以上私は前出ないから、自然回復に任せる。その代わり、お兄。アイテムが無くなる前に、どうにかしてそのゴーレムの弱点攻撃する隙を作れない? 私達で一斉攻撃するから」


「隙作るって、簡単に言ってくれるな……いいぜ、任せとけ!」


 気合十分と言った様子で、自分にかけていたDEFアップのアーツと魔法をかけ直したお兄に、《MPポーション》を投げて、私自身は《ミルキーポーション》を1本飲む。


「ぷはぁ……よし、これで行ける」


 MPが回復して、ビートを再召喚するには十分な量を確保出来た。そして、牽制やらなんやらで消費したフララのMPもまた、《ミルキーポーション》2本で回復させる。これで、残り1本。


「フララ、ビートも、2体で同時に攻撃するよ。準備して」


「ピィ!」


 フララが飛び上がって行くのを見送りつつ、まだ《召喚石》に入ったままのビートを指先で撫でながら、お兄と対峙してるジャイアントロックゴーレムへ向き直る。

 名前を呼ばれなかったことでライムが肩の上で若干いじけてるけど、ライムはもう、十分働いてくれたから。それこそ、アイテムが底を突いて、HPが限界まで無くなるくらい。だから元気出して?


 そんな風にライムを慰めてる間も、お兄とジャイアントロックゴーレムの戦闘は続く。

 ジャイアントロックゴーレムがその拳をお兄に繰り出せば、お兄は盾でそれを受け流しつつ、足の関節部分に槍を突き込む。そして、そんな攻撃を羽虫でも払うように、煩わしそうに腕が振るわれて、それをお兄は真っ向から受け止め、そして再び無防備な足に突きを一発。

 一見するとお兄の方が堅実に、優位に戦いを進めているようにも見えるけど、そのHPゲージに目を向ければ、無防備なところを攻撃されたジャイアントロックゴーレムよりも、盾で受け止めたお兄のほうが大きくダメージを受けてるのは明らかだ。


「お兄……」


 中々思い切った行動に出ないお兄を見て、段々私の中に焦りが募る。

 お兄のHPが削れれば、私がその都度《ハニーポーション》を投げるけど、それ以外に何もせずただ見てるのは癪だから、ヘイトを稼ぎにくい《毒ポーション》をジャイアントロックゴーレムに投げつける。

 ただ、相手は無機物なせいか、毒状態になっても復帰までの時間が物凄く早いし、大したダメージにならない。じゃあ投げナイフならどうかというと、多分隙間に刺さってもノーダメージだろうから、それこそ意味がない。

 そうこうしているうちに、お兄のHPは何度も減少し、それを回復させるためにアイテムが1つ、また1つと減っていく。その数字が、まるで敗北へのカウントダウンを表してるみたいで、猶更私の焦燥感を煽っていく。


「ねえお兄、まだ!? もうアイテムが……!」


「もう少しだ、もう少し!!」


 もう少しとは言うけど、お兄がやっていることと言えば大してダメージのない足へ槍での攻撃を繰り返すか、盾で攻撃を受け止めるかだけ。

 それを続けて何が変わるのか、また私は声を上げようとして――その変化は、唐突に起きた。


「えっ!?」


 お兄が槍を突き入れた瞬間、ジャイアントロックゴーレムの、体の割に小さな足の一部が砕け、その巨体が大きく傾く。その瞬間、お兄は待ってましたとばかりに懐へ飛び込んだ。


「《エンチャント・アタック》! からの……《シールドバッシュ》!!」


 バランスを立て直そうと、ジャイアントロックゴーレムが手を地面に付けようとしたその瞬間、お兄が体ごとぶつかるような形で盾を叩きつけ、一瞬だけ腕を持ち上げる。

 それによって、バランスを立て直す機会を失ったその体は、大きな土埃を上げて地面に倒れた。

 巨体は、巨体であるがために一度転べば再度起き上がるのには時間がかかる。いかも、手足の長さが不釣り合いなほど違えば猶更だ。


「今だミオ、ぶちかませ!!」


「うん、分かった! 行くよフララ、ビート、《召喚》!!」


 ここに来て、お兄が最初からこれを狙ってたんだと気付いた私は、満を持してビートを召喚しながら、自慢の従魔達に指示を下す。


「フララは《トルネードブラスト》、ビートは《突進》!!」


 転んで、満足に身動きの取れない今のゴーレム相手に、2人の攻撃を当てることは容易い。

 だからこそ、私もここで決めるために、普段は使わない援護アーツも使う。


「《野生解放》、《アタックフォーメーション》!!」


 《野生解放》は、《使役》スキルレベル20で覚える、自分の使役モンスター1体の全ステータスを、一定時間引き上げるアーツ。そして《アタックフォーメーション》は、《召喚魔法》レベル5で覚える、自分の召喚中のモンスター全てのATKを一定時間引き上げる魔法だ。

 《野生解放》の方は、効果は大きいけど同じモンスターに連続使用すると暴走状態になる可能性があるって話だし、《アタックフォーメーション》はATKにしか効果がない割に上昇量が低くて、召喚モンスターがビート1体しかいない以上燃費が悪すぎて使ってなかったんだけど……今を置いて、使い時なんて他にない!


 そんな私の想いを載せた援護を受け、フララの魔法と、一瞬遅れてビートの攻撃が狙い違わずジャイアントロックゴーレムのコア部分に突き刺さり、そのHPを3割近くも一気に削り取った。


 でも、大きくはあってもまだ仕留めるには至らない。元々削れてた分を合わせても、まだ残り4割弱はある。


「うおぉ!! 《スピニングランス》!!」


 そこへ更に、自分でかけた《付与魔法》で強化されたお兄の槍が螺旋を描きながら突き刺さり、残りHPが3割を切る。それでも、まだ足りない。ジャイアントロックゴーレムだってやられっぱなしではおらず、体を起こしながら腕を振るい、お兄とビートを弾き飛ばした。


「ぐお!?」


「ビビ……!!」


「お兄、ビート!!」


 アーツで大振りの一撃を繰り出した直後だったこともあって、盾を構え防ぐことも出来なかったお兄はそれをまともに喰らい、大きくHPを削られた。元々そんな便利な装備を持ってないビートも言わずもがなで、ギリギリ0にはならなかったけど、お兄の体が壁になってなかったら、間違いなく今の一撃でHPが全損していたのは間違いない。

 慌てて、私はライムに出して貰った最後の《HPポーション》をビートに、そして《アンバーポーション》をお兄に使って回復させる。


「っくう、効くねえ。ミオ、こっちは大丈夫だ。今の攻撃、もう一度行けるか!?」


「えっ、それは……」


 MP的には、ギリギリ足りる。残った最後の《ミルキーポーション》をフララに使えば、もう一発《トルネードブラスト》を撃つだけのMPは確保出来るし、私のMPは《召喚術師(サモナー)》をサブ職業に選んだお陰で随分増えてるから、もう一つ、《調教》スキルのアーツを使えばまだなんとかなる。

 あとはビートのHPが少し心許ないのが不安だけど、さっきの感じからすれば、《突進》の反射ダメージを受けても一発だけなら耐えられると思う。

 ただそれ以上に、お兄の方が心配だ。


「いけると思う。けど、もう回復アイテムが本当に1本も残ってないから、お兄の援護は出来ないし、ビートを再召喚するMPもないから出しっぱなしにするしかないけど、それだってそう長くもたないから、さっきと同じ時間なんて待てないよ」


 起き上がったジャイアントロックゴーレムが、私達の方に迫る。

 お兄がその正面に立って《ヘイトアクション》を使って気を引き、振り下ろされる拳を受け流すようにして、耐える。


「分かった、じゃあさっきの半分の時間でもう一度隙を作る。だからそこでお前が決めろ!」


「えぇ!? そんな無茶な!?」


 ジャイアントロックゴーレムの足は、一度崩れたところも起きてみれば再生していて、とても一度やったからって短時間で壊せるようには見えない。

 けど、お兄は自信満々に言い放った。


「大丈夫、コイツの動きはもう慣れた。俺を信じろ!」


 にかっと笑いながら、いっそ能天気なまでに軽々しく言うお兄に、私は呆れるやら頼もしいやら、色々ない交ぜになった溜息を吐く。


「フララ、行ける?」


「ピィ!」


 お兄はいつものことだからどうでもいいとしても、《野生解放》のデメリットを受けるのはフララなんだから、フララが無理なら前提からして成り立たない。

 だから聞いてみたけど、フララは一瞬の迷いもなく頷きを返してくれた。

 なら、私もお兄と、何よりフララを信じるだけ!


「分かった。これが終わったら、お昼ご飯は久しぶりに私が手料理作ってあげるから、気合入れてやってよね! 失敗したら承知しないから!」


 そう言いながら、私の最後のポーションである《MPポーション》をお兄に投げつける。

 それを受けて、お兄は喜色満面に親指を立てた。


「久々のカップラーメンと総菜パン以外の飯か! ならこんな木偶の坊に負けてられないな、行くぜ! 《ガードアップ》、《エンチャント・ディフェンス》、《エンチャント・アタック》、《エンチャント・スピード》!!」


 現金なまでにやる気を漲らせたお兄が、ジャイアントロックゴーレムに向けて槍と盾を構え、《盾》スキルのアーツに加え、《付与魔法》によって回復したばっかりのMPを使い果たす勢いで自身の能力を引き上げていく。そんなお兄に向けて放たれるゴーレムの拳は、さっきまでよりもずっと激しく、速く、力強かった。

 よくよく見れば、ゴーレムのコアは元々赤かった宝石が更に血のように紅い光を放ち、その双眸にも紅い炎のような揺らめきが浮かんでいて、明らかに普通じゃない。多分、HPが半分を割ったことで、暴走状態になったんだと思う。


「お兄……頑張れ……!」


 祈るように呟かれた私の呟きが、果たして届いたのかどうか。苛烈なまでのゴーレムの攻撃を、お兄は最小限の動きで回避し、盾で弾き、受け流し、さっきと比べたら見違えるほど少ないダメージ量でそれらを捌いていく。

 しかもそれだけじゃなくて、攻撃の頻度もさっきとは大違いだ。回避の合間合間にゴーレムの足目掛け、槍を次々と繰り出し、その表面を削り取っていく。


「すごい……」


 一度目よりも動きが早く見えるのは、もちろん《付与魔法》の力もあるんだろうけど、それ以上に、お兄の動きに無駄が無くなってるのが、傍から見ていてもはっきり分かった。

 攻撃を真っ向から受け止めることが全くなくなり、むしろ盾を使うことすらほとんどなく回避して、体勢を崩さない分、槍の攻撃にアーツを乗せる余裕さえ見せる。


 慣れたとは言ってたけど、より速くなった攻撃を前に初見で完封できるのは、果たして慣れの一言で済ませていいものかなぁ。もしかしたら予備動作とか、そういうのを言ってるのかもしれないけど、それにしたってよくやれるよ、ほんと。


「今だ、ミオ!」


 そんな風に、お兄の立ち回りに見惚れている間に、思った以上に時間が過ぎていたのか。ジャイアントロックゴーレムの足が崩れ、またもその巨体が地面に横たわった。

 アイテムの残量からしても、これが間違いなくラストチャンスだ。


「フララ、ビート、それからライムも、行くよ!」


 フララとビートはもちろん、今回はMPが足りないから、ライムにも協力して貰わなきゃならない。

 そのために、肩に乗ったままのライムが、私の首筋にぴとっと抱き着くように張り付く。


「《MPリンゲージ》!」


 《調教》スキル、レベル20で覚えたアーツ。一定時間、《調教》スキルによってテイムされている自分の使役モンスター1体と自分のMPを共有状態にして、効果終了時に平均化して分配する。

 これでなんとか、必要なMPは確保出来た。


「これで決めるよ! 《野生解放》、《アタックフォーメーション》!! フララ、ビート、お願い!!」


 フララの起こした風の奔流を突っ切るようにして、ビートがツノを構えたまま一直線に空中を駆ける。

 そんな2体の攻撃に、ジャイアントロックゴーレムはいくら暴走状態とは言え……ううん、むしろ暴走状態だったからこそ、転んだ後の対処を冷静に出来ず、もがくばかりしか出来ていない。


「行っけーーー!!」


 そんな無防備なジャイアントロックゴーレムのコアに向け、もう一度、2体の攻撃が同時に突き刺さった!


「オ……オオ……!!」


 残り3割を切っていたHPが急激に減少し、ついに、そのゲージを黒一色に染め上げる。

 あれほど力強く暴れ回っていたジャイアントロックゴーレムから力が抜け、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。


『シン、リャクシャドモ……ワレワレハ……ケッシテ、クッシハシナイ……』


 そんな意味深なメッセージを最後に、ついにその双眸からも輝きが失せ――私達は、このイベント初のボス戦闘を乗り越えたのだった。

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