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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第三章 初イベントと常夏の島
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第50話 在庫処分と小休止

何だかんだでこの作品も50話目、ここまで更新出来たのも皆さんのお陰です。

目指せ100話連続更新! そして夢の総合評価1万台! ……行けるといいなぁ(;^ω^)

「くう、酷い目にあったぜ……」


「お兄が自力でどうにかしろーとか、薄情なこと言うからでしょ、もう」


 ロッククラブの大群を退けた私達は、近くにあった安全地帯(セーフティエリア)でちょっとした休憩を取っていた。

 ロッククラブだけじゃなくて、ビートにもボコボコにされた結果大きく減っていたHPを確認してボヤくお兄に、私は昨日作ったばかりの《アンバーポーション》……ではなく、《HPポーション》を手渡す。

 さすがに、あれは今回数が用意出来なかったから、いざって時の保険に取っておかないとね。


 それに、お兄がさっきボコボコにやられてたのも、実際は手も足も出なかったからじゃなくて、私が自力で対処できるかどうか見るためだったってことくらいは分かってる。何せ、あの時お兄はアーツの1つも使ってなかったんだから、手加減してたことくらい丸分かりだ。

 そういう理由もあって、今回はちょっとした仕返しの意味も込めて、普通のとは少し違う《HPポーション》を選んでおいた。


「おっ、サンキュー……って、なんかコレ普通の《HPポーション》より回復量少なくねえ?」


「気のせいだよ」


「そうか気のせいか……ってそんなわけねーだろ! どういうアイテムなんだこれ!」


 ちゃんとアイテム名にHPポーションってあるでしょー……って、これ以上誤魔化してもしょうがないか。


「あれだよ、《HPポーション》じゃ味気ないから、上位のポーション作ろうと思って試行錯誤した余り物。そのやつは何混ぜたんだっけ……分かんない、忘れた」


「おい!? そんな得体の知れないモン人に飲ませようとするんじゃねえ!!」


「大丈夫、少なくとも毒じゃないのはアイテムの効果見れば分かるでしょ?」


「まあ、それはそうだけどよ……これってぶっちゃけ在庫処分だよな?」


「うん、そうだよ?」


「はっきり言うなおい……まあいいけどよ」


 そう言って、お兄は何を混ぜたのか定かじゃないその《HPポーション》の蓋を開け、軽く匂いを嗅いで安全確認をする。

 とは言え、流石に匂いじゃ何も分からなかったみたいで、首を傾げつつぐいっと呷った。


「んぐっ……!? ぶふぁーーーーー!!?」


 その瞬間、お兄の口から炎が噴き出た。

 おお、凄いリアクション。リアルだと大火事待ったなしだね。


「辛っ!? なにこれ、めっちゃ辛っ!! お前これ何入れたんだほんと!?」


「そんなに辛いなら、多分あれだね、《南の湿地》で見つけた《火薬草》だと思う」


 火薬なんて付いてるし、爆弾とか作れないのかなーって思って色々混ぜてみたやつの1つだったと思う。

 いやー、あの時は大変だったなぁ。火にくべたらいきなりボンッ! ってなった時は心臓止まるかと思ったよ。出来上がったのは物凄く辛くて飲めたものじゃなかったし。


「お前、そんなモン人に飲ますな! 自分で処理しとけ!」


「1本は処理したよ? 残りは嫌になってずっとインベントリの肥やしだったけど。いやー、処理出来てよかったね、うん」


「せめてどういうのか分かるように仕分けとけ! 他のはないのか、他のは!」


「もう、仕方ないなぁ、はいこれ」


「ったく……」


 ぶつくさと文句を言いながら、私が差し出した次のポーションを受け取ってごくごくと飲むお兄。

 すると、その顔がみるみるうちに真っ青になっていき……


「に、苦--!! ぺっぺっ! 今度はなんだ、なんでこんな苦いんだ!?」


「それはあれだよ、《薬草》ってポーション作る時、1度に2つしか混ぜれないんだけど、別の何かならもっと混ぜれるんじゃないかと思ってやった結果、《傷癒茸》2つと《薬草》2つで作るともの凄く苦いポーションが出来るって分かった、その産物だね。ちなみに、苦いばっかりで回復量はちょっとしか増えなかったボツ作品だよ」


「だから、そんなもん人に飲ますな!!」


「だって捨てるの勿体ないじゃん」


「まあそうだけどさ……」


 やっぱり自分で用意すればよかったか、とかなんとか言いながら、残ったポーションを直接頭からかぶってHPを回復させるお兄。

 正直、得体がしれない物が混ざってるって言った時点でそうすると思ってたんだけど、それでも律儀に飲むあたりほんとお兄って無駄にノリが良いよね。次は何してからかおうかなぁ。


「ちなみに、そっちのお前のモンスター達が飲んでるそれは? 在庫処分品なのか?」


 そんなあくどいことを私が考えながら、ライムとフララ、ビートにもそれぞれポーションを飲ませてあげてると、お兄がふと気になったって感じで聞いてきた。

 全く、何を当たり前のことを。


「そんなわけないじゃん、この子達の好みに合わせて配合を工夫して、検証を重ねた結果生まれた、この子達それぞれのためだけの特製《ハニーポーション》と《ミルキーポーション》だよ!」


「なあなあミオ、お前のそのモンスターに向ける愛情のさ、ほんの一欠片でもいいから俺にも向けてくんない?」


「嫌だよめんどくさい」


「取り付く島もねえ……お前、実の兄よりモンスターのほうが大事だってのか!?」


「そうだけど?」


「即答!?」


 がっくりと項垂れるお兄のことはスルーして、ライム達のほうに向き直る。

 お兄をからかって遊んでて、結果的に少し放置気味だったのがちょっとご不満だったのか、若干拗ね気味の3体の頭を私は順番に撫でていく。


「ふふ、ごめんね、みんなのことほったらかしにしてたわけじゃないんだよ?」


 お兄には聞こえないように、小声で弁明しながらみんなのお世話をして、ついでに自分も《MPポーション》を飲んでMPを回復させておく。

 ビートのお世話も好きだけど、こうしてる間もMPを消費し続けるのが難点だよね。とはいえ、《召喚魔法》で呼んだモンスターも、減ったHPやMPはこうしてアイテムを使うか、一定時間召喚石の中で過ごさないと回復しないから、こういう時間はどうしても必要になってくる。


 せめて、戦闘中以外はMP消費なしで召喚出来るとか……そういう風にならないかなぁ。


「まあいいや、それにしてもミオ、見ない間に随分強くなったよなぁ」


「へ? そうかな?」


 考え事をしてるところに、唐突にそんなことを言われて、思わず戸惑いの声を漏らす。

 いや、ついさっきもお兄に私達の力を見せてあげる! って息巻いたのはいいんだけど、まだまだお兄のレベルには及ばないと思ってただけに、いざ褒められるとびっくりする。


「ああ。気付けば無いって言われてたミニスライムの進化先を見つけてるし、新しいテイムモンスターも増やしてちゃんと連携まで考えてるみたいだし、自力でちゃんとサブ職業に就いてるし、しかも最近は二つ名まであるしな。いやー、まさかお前がここまでゲーム出来るヤツだとは思ってなかったよ」


「いやあそれほどでも……ってちょっと待って、お兄今なんて言った?」


 超が付くほどのゲームバカであるお兄に、ゲームのことで褒められるっていうのは悪い気はしないと思ってると、最後に聞き捨てならない情報が入ってきた。

 えっ、二つ名? なにそれ、私に? 聞いてないんだけど?


「えっ、知らないのか? スレじゃあ“謎の合金博士”だとか“鉱石姫”だとかって呼ばれてて、正直知名度だけで言うならトッププレイヤーにも負けてないぞ、お前」


「なんで鉱石とか合金とかそっちばっかり!? 私の本職テイマーなんだけど!?」


「そりゃお前あれだよ、ライム合金が有名になり過ぎたからだな。まああんまり気にするな、今はもうライム合金の人気も落ち着いてるし、スクショとかが出回ってるわけじゃないから、お前を見てもすぐにそうだとは思われないだろ」


「ならいいけど……ってあれ? 容姿のこと誰も知らないのに、なんで二つ名に姫ってあるの? おかしくない?」


「それはあれだよ、ほら……俺が某所で『そいつに手出したやつは俺が〆る』って書きこんだら、『おっ、鉄壁騎士は合金博士にご執心か』『騎士のお相手なら博士じゃなくてお姫様か?』『合金作るお姫様だから鉱石姫だな』『お、いいね』って感じに飛躍してって、特に女性プレイヤーだとか言ったわけでもないのに呼び名が鉱石姫で確定した」


「ほぼお兄のせいで二つ名付いてないそれ?」


 私がジト目を向けると、流石に悪いと思ったのかお兄がそっと目を逸らす。

 とは言え、容姿が知られてるわけじゃないなら、私がそうだって言わなければバレる心配もないわけだし、あまり気にしてもしょうがないか。


「ま、まあ、巷ではすっかりそっち方面で有名になったけど、戦闘の方だってかなりいい線言ってると思うぞ。あんだけのロッククラブの群れをソロで対処できるプレイヤーなんてそれなりに限られるしな」


「この子達の力と、アイテムを湯水の如く使う戦術ありきだから、ソロっていうとなんだか語弊がある気がする」


 勝手なイメージだけど、ソロプレイヤーってこう、自分の身一つで強力なモンスターに立ち向かうっていう印象があるんだよね。

 厳密には、ただのんびり生産活動に勤しんでる人もソロプレイヤーなんだろうけど、それはそれで生産職って呼び名があるからちょっと違う感じがするし。


「何言ってんだ。そもそも、アイテムを使うのには一々メニュー操作するか、2、3個をポーチに入れて装備品扱いで持っとくかしないといけないんだぞ。モンスターを使った裏技でも、一戦のうちに湯水の如く使うことが出来るってのは十分強みだ。あと、テイマーはモンスターを引き連れてるからソロ向きだって言われてるのに、それをソロじゃないなんて言ってたらソロって概念が崩壊するっての」


「そう言われてみればそうかな?」


 まあ、私だって言ってみただけで、そこまでソロプレイヤーに拘りを持ってるわけじゃないし、ぶっちゃけどうでもいいか。


「そういうもんだって。褒めてんだから素直に受け取っとけ」


「わっ、わっ、あんまり乱暴に撫でないでよ、髪が乱れる!」


 わしわしと、私の頭を豪快に撫で回すお兄に文句を言うと、「悪い悪い」と悪びれる様子もなく笑う。

 全く、お兄はもう。


「さて、そろそろ休憩は良いか。次のエリア向かうぞ」


「あっ、待ってよお兄、もうちょっと」


 満腹度ゲージにはまだ余裕はあるけど、やっぱりお腹が空いたらしいライムにおやつ代わりのライム合金を食べさせながら、その体を優しく撫でる。はあぁ、やっぱりこの時間が一番癒される……


「撫でるくらいいつでもできるだろ?」


「分かってないなぁお兄は。こういうスキンシップを大事にしないから、お兄は動物に嫌われるんだよ」


「んなっ!? 別に嫌われてなんかねーよ、近づくと逃げられるだけで!!」


「はいはい。それじゃあライム、フララ、ビート、もう行くけど、大丈夫?」


「――――」


「ピィ!」


「ビビビ」


 お兄を適当にあしらいながらも、ライム達の体調が万全かどうか、軽く撫でつつ確認していく。

 ライム達も、移動となれば文句も言わず付いてきてくれるけど、だからってそれに胡坐をかくのもよくないから、きちんとそれぞれに確認は取らないとね。

 そういうわけで、全員からOKの返事が返ってきたのを確認すると、ビートは召喚石に戻し、ライムは胸に抱いて、フララには肩に留まって貰ういつもの体勢に。


「それじゃあ行こっかお兄。今度こそはちゃんと私達のことも守ってね?」


「おう、任せとけっての!」


 ドンっと胸を叩いて自信満々のお兄の様子に、ほんとかなぁ? なんて疑いの眼差しをわざとらしく向けたりして遊びながら、セーフティエリアの外へと向かう。

 さて、次のエリアは、一体どんなモンスターが出て来るのかな?

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