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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第一章 ミニスライムとフィールドボス
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第20話 戦果確認とドロップ運

 一面に広がる畑には、多種多様な野菜が実りを付け、青々と生い茂っている。

 立ち並ぶ家屋は昔の日本のような木造建築で、見るからに田舎らしいその外観は、なんだかほっとするような安心感をもたらしてくれ、ちらほらと見える牛小屋のような建物には、リアルの牛の代わりにマンムーが入っていた。そののんびりとした仕草を見ていると、思わず欠伸が漏れちゃいそう。

 コスタリカ村。ヒュージスライムを討伐したプレイヤーだけが足を踏み入れることが出来るその場所で、私達のパーティは、その村の外観に似合わない青いクリスタルのような浮遊物体――転移ポータルの登録をしていた。


「よし、これで登録終わり。いつでもここに来られるぞ」


「ありがと、お兄!」


 登録と言っても、ただ傍に寄って宙に浮かぶクリスタルに触れ、出てきたダイアログをタップするだけの簡単なものだった。

 それでも、いつになく上機嫌な私はお兄に素直にお礼を言って、にぱっと笑顔を浮かべる。


「お、おう。これくらいどうってことねえよ」


「ふふっ、それじゃあ、落ち着いたところで戦果確認と行きましょうか」


 照れたように頭を掻くお兄を見て笑いながら、リン姉の提案で全員今回のドロップアイテムを確認する。

 いくらフィールドボスを倒したからって、モンスターの出てくるフィールドで呑気に確認するのは危ないから、って言う理由でここに来るまで我慢してたけど、ボスを倒したのもクエストをクリアしたのも初めてだから、正直早く確認したくてずっとウズウズしてたんだよね。


「おおっ、クエスト達成報酬で所持金が3倍になってる!」


 そういうわけでメニューを開いてまず目に付いたのは、大きく増えた私の所持金。

 クエストボードから受けられる討伐系のクエストは、特に報告する相手もなく規定数倒せばその時点で報酬が手に入るみたいなんだけど、ゴブリン10体倒しただけで1000Gって多くない? 前に6体倒した時は確か……手に入ったドロップアイテム全部売って300Gくらいだった気がするし、すごいお得感。


「まず真っ先に目が行くのがそこなのかお前は……」


 お兄から若干呆れたような視線を向けられるけど、仕方ないじゃん。メニュー画面を開けば見れる所持金と違って、アイテムはそこから更に1つインベントリのところを開かないと見れないんだから。


「そもそもクエスト受けた時にちゃんと報酬まで確認しとけよ、全く」


「ふふふっ……まあ、ミオちゃんは金欠なんだし、いいんじゃないかしら。っと、私のドロップは……」


 そんな私達の様子を見て微笑を浮かべながら、リン姉も改めてインベントリを確認した。

 すると、「あらあら」と、少しばかり残念そうに眉をひそめる。


「《特大スライムゼリー》2つと《グリーンゼラチン》ね。当たりの部類ではあるんだけど、私としては《グリーンスライムの核石》が欲しかったなぁ……」


 はあ、と軽く溜息を吐くリン姉。

 《グリーンスライムの核石》は、そのまま召喚するとグリーンスライムの召喚石になるけれど、《合成》スキルで他の召喚石と混ぜると、その召喚石のモンスターのDEFがアップするみたいで、ゴーレムの強化のために欲しかったんだって。


「うーんと、僕は《グリーンスライムの核石》と《グリーンゼラチン》2つか。これだけ出てるならそう珍しくもないんだろうけど、《グリーンゼラチン》って何か使い道ってある……?」


「それは食材アイテムね。《料理》スキル持ちが使うとプリンみたいなのが作れるわよ」


「えっ、プリン!?」


 プリンと聞いて、思わず2人の会話に割り込む。

 色はプリンと違うけど、まあ緑色なら抹茶プリンと思えばそう変でもないし、後は味さえ良ければライムと一緒に食べたいなぁ。……あれ? でもそれ、もしライムが食べたら共食いになっちゃうのかな? うーん……?

 まあいっか、細かいことは。と一旦考えることを放棄して、改めてドロップアイテムを確認する。


「えーっと……《特大スライムゼリー》と《グリーンスライムの核石》2つ? 《グリーンゼラチン》はなしかぁ……リン姉、交換しない?」


「あら、いいの? ミオちゃんもサブでは《召喚術師(サモナー)》になりたいって言ってなかった?」


「いいよ、なったらなった時にまた探すから。それより、今はライムと食べるプリンが大事だよ!」


「ふふっ、ミオちゃんらしいわね。それじゃあお言葉に甘えてトレードさせて貰おうかしら」


「あ、それならミオ姉、僕もあげようか? 特に食材アイテムは必要ないし」


「ほんと? それなら、代わりに、えーっと……余ってる《ハニーポーション》あげるね」


「ありがとミオ姉、助かるよ」


 そんな感じに、リン姉とは《グリーンゼラチン》と《グリーンスライムの核石》、リッジ君とは《グリーンゼラチン》2つと《ハニーポーション》2つをそれぞれトレードする。


 と、そこで、そういえばさっきから会話に加わってないのが一人いることに今更ながら気づいた。


「あれ、お兄は?」


 見れば、お兄はすぐ傍でしゃがみ込んで、地面にのの字を書くのに夢中(?)になってた。

 何してるんだろ?


「お前らいいよなぁ……そうやってそれなりのモン手に入れて、和気藹々とトレードなんてしてたりよぉ……俺なんて……どうせ俺なんて……」


 あっれー。お兄がなんだか物凄くネガティブモードに入ってる。

 そんなにドロップ悪かったのかな……?


「まあまあ、元気出しなよお兄。何ドロップしたか知らないけど、何なら私の《特大スライムゼリー》とトレードしてあげようか? 特に使い道もないし」


 肩をポンポンっと叩きながらそう言うと、お兄はぐるっと私のほうに顔を向け、がばぁ! と飛び掛かってきた。


「うおぉぉ!! やっぱり持つべき物は出来た妹だ! ミオぉーー!!」


「うざい」


「ぐふぉ!?」


 咄嗟に鞭を抜いて引っ叩くと、ゴロゴロと地面を転がっていくお兄。

 うん、慰めようとしてたんだから受け止めてあげるべきだったのかもしれないけど、今のは仕方ないと思うんだよね。


「ミオぉ! お前今の流れでそれはないだろ!」


「いやごめん、なんか反射で」


「ひでぇ!?」


「ていうかそもそも、何ドロップしたのさ、お兄」


 いじけるお兄の姿があまりにも哀れだったからつい勢いで言ったけど、よくよく考えてみたら、まずはそれを聞かないとダメだよね。


「……《酸性ポーション》」


「へ?」


「《酸性ポーション》4つが俺のドロップだよ……」


 えーっと……《酸性ポーション》ってあれだよね。私とライムの一番のダメージリソースにして、ライムの《酸液》と《調合》スキルがあれば、元手0で放っておけば出来上がるやつ。それが4つ?


「一応言っておくとね、《酸性ポーション》って、βテストではヒュージスライムのドロップ以外だと普通のスライムのレアドロップでしか確認されてなかったから、集めようと思うと結構大変なのよ?」


 そんな風に思ってたら、それを察したらしいリン姉が、お兄へのフォローとも取れる説明をしてくれた。


「……ただ、アイテムを使った継続ダメージって、直接投げて使うにはダメージ効率が悪いし、弓矢とか投げナイフに合成して使うにもコスパが悪いしで人気がなくて、しかもNPCショップで売っても二束三文にしかならないから、完全にハズレア扱いなんだけどね」


「「ぐふっ!?」」


 ただ、その後に続いた説明には、お兄だけでなく私も多大なるダメージを受けることになった。

 効率、やっぱり悪いんだ……いや、うん、なんとなく分かってたよ? お兄が言ってた通り、本当に誰も寄り付かない《東の平原》のゴブリンだって、《酸性ポーション》と《麻痺ポーション》と《毒ポーション》を使ってやっと1対1……いや、ライムと私だから2対1? で、やっと楽に勝てるって言えるレベルになった程度なのに、お兄達はゴブリンくらいみんな一撃必殺だったもんね……あはは……


「まあ、ミオちゃんみたいに、絶え間なく投げれるなら効率の問題は解消されそうだけどね」


 まさか、本当にヒュージスライムを麻痺させるなんて思わなかったわ。とボス戦を振り返るように言うリン姉だけど、それってつまり、誰もやらないくらいコスパの悪いことしてたってことだよね?

 うぅ、やっぱり、私が余計なことしなくても、リン姉にはもっと上手い手があったのかなぁ……いい感じに存在感出せたと思ったけど、よくよく考えてみたら、私とライムがやったのって、ポーション配る以外は、痺れさせて美味しいところ(ラストアタック)を掻っ攫っただけだし、次はもっと頑張らないと。


「あとミオちゃん、《特大スライムゼリー》は鞭を作る素材になったはずだから、とっておいた方がいいと思うわよ?」


「えっ、そうなの? じゃああげない」


「うおぉい!? いや、別に貰おうなんて思ってなかったけどさ!!」


 私に変わり身の早さに、お兄がまたも不服そうな声を上げる。

 いやだって、必要ないかと思ったから言っただけだし。そろそろ鞭も替え時だとは思ってたから、少しでも強くなるならそれに越したことはないもん。


「ふふふっ、それじゃあ約束通り、本サービス初のボス撃破祝いに、みんなで食べに行きましょうか。ゲームの中だけどね」


「行く行く! リッジ君も行くよね?」


「うん、もちろん」


「よし! それじゃあレッツゴー!」


「おいミオ、お前場所知らないだろ! 先走ってどうすんの!?」


「この村に着いてから、ずっといい匂いしてたし、場所くらい分かるよ!」


「犬かお前は!」


「仕方ないじゃん、お腹空いてるんだし! ね、ライム!」


 お兄と軽口を交換しながら、腕の中に抱いた相棒に同意を求めると、ぷるぷるんっと体を揺らすことで肯定してくれる。

 まだまだ私もライムも弱っちくて、お兄を見返すまでにやらなきゃならないこと、やりたいことはいっぱいあるけれど、まずは腹ごしらえしてからだよね!


 まだ見ぬゲームの料理へ期待を膨らませながら、私は長閑な村の中を、ライムと一緒に駆け抜けて行った。



名前:ミオ

職業:魔物使い Lv9

HP:108/108

MP:90/90

ATK:50

DEF:69

AGI:72

INT:46

MIND:68

DEX:92

SP:4

スキル:《調教Lv8》《使役Lv7》《鞭Lv8》《投擲Lv5》《隠蔽Lv8》

控えスキル:《感知Lv4》《調合Lv8》《採取Lv8》《敏捷強化Lv5》


名前:ライム

種族:ミニスライム Lv10

HP:57/57

MP:59/59

ATK:29

DEF:51

AGI:18

INT:32

MIND:22

DEX:31

スキル:《酸液Lv11》《収納Lv8》《悪食Lv6》



これにて第一章完結です。

まだストックはあるので、二章も毎日更新できると思います。

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