表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第一章 ミニスライムとフィールドボス
2/191

第2話 初ログインと容姿設定

本日2話目。

『キャラクターネームを入力してください』


 お昼ご飯を食べ、適当に時間を潰した後、ついにやってきたサービス開始時間。早速自分の部屋のベッドで横になり、VRギアを被って起動すると、私の意識は無数の光が流れる真っ黒な空間の中にあった。

 幻想的というより、どこか機械的で電脳空間らしさを感じるその光景に見惚れていると、頭の中に機械音声のアナウンスが流れて、目の前に入力画面が表示される。

 こんなところに悩んでもしょうがないし、いつも携帯ゲーム機でやってる通りに名前そのまま、“ミオ”と入力して次に進む。


『容姿を設定してください』


 続けて、目の前に私と瓜二つなアバターが現れる。おお、すごい、鏡でも見てるみたい。

 試しに身長の項目を弄ってみると、それに合わせて私のアバターが伸び縮みして、身長100㎝くらいの幼女から、180㎝オーバーの高身長にまで自由に変えられた。うん、なんというか、自分が軟体動物にでもなってるみたいで変な感じ。

 それに、ある程度変えると『現実の体格との差異が大きいとゲームでの行動に支障を来す可能性があります』なんて注意書きが浮かび上がってきて、面白半分で弄るのはちょっと躊躇われる。

 まあ、学校の同じクラスでは、どっちかというと前から数えたほうが早い私だけど、別にチビってわけじゃないし、これはデフォルトでいいかな。リセットリセットっと。

 とはいえ、リアルそのままなんて面白くないし……


 少しだけ悩んだ末に、私は髪の長さを弄り、腰に届くくらいまで伸ばしてみる。

 うん、リアルだと手入れが面倒だからってショートにしてるけど、せっかくゲームなんだし普段しないお洒落も悪くないよね。

 ついでに、髪の色も黒から銀色に、瞳の色も海を思わせる深い青色に変えた。所謂、銀髪碧眼ってやつだ。

 うーん、これだけで、元の素材が私とは思えないくらい見違えるなあ。ぱっと見だけなら、まるでアニメの世界から飛び出してきたお姫様に見えなくもない。服装が、駆け出し感丸出しの貧相な冒険者装備でなければだけど。

 まあ、別に私はお姫様になりたくてゲームするわけじゃないし、ある意味これくらいがちょうどいいのかな。

 そう思って、決定ボタンをタップしようとして……私は、ある項目に目が留まる。


「こ、これは……」


 繰り返すけど、私は別に身長について思うことはない。というか基本的に、自分の見た目には無頓着な方だと思ってる。

 そんな私ではあるけど、やっぱり周りから何度もからかわれたりしていると、多少なりとコンプレックスくらいは抱くわけで。


「う、うーん……」


 とはいえ、髪の色くらいならともかく、体格の項目でここだけ変えるというのもなんだか気にしてるみたいで、負けた気分になる。

 でも、こういう時くらいしか、それを払拭する手段がないのも事実。私の体は、いくら食べても肉が付いてくれないし。

 うん、そうだよね、ゲームの中だもんね。ちょっとくらい見栄張ったって、罰は当たらないよね?


「よし、やっちゃえ!!」


 そんな風に自分に言い訳しながら、私は最後の最後にその項目――『胸の大きさ』をなるべく大きなサイズに変更して、勢いよく決定ボタンをタップした。


『これで設定は完了です。ようこそ、幻想と魔法が織りなす世界へ』


 最後にそうアナウンスされると同時に、黒かった空間が一瞬だけ真っ白な光で満たされる。

 突然の眩しさに思わず目を瞑ると、私の体を一瞬の浮遊感が襲い――


「んっ……わ、わあぁ……!」


 目を開けてみると、そこにはよくある中世ファンタジー風の街並みが広がっていた。

 今いる場所は街の広場なのか、綺麗に立ち並ぶ石造りの建物も、街を行き交う人達もよく見える。


「ゲームの中ってこんな風になってるんだ……すごいなぁ」


 きょろきょろと周りを見渡すと、真後ろには大きくて青い、ひし形を立体にしたような物体が宙に浮いた状態でゆっくりと回転していて、時々ぴかっ! と光ると私と同じような恰好をした人が光に包まれ現れる。多分、私と同じように《MWO》にログインしてきたプレイヤーだと思う。

 話題のゲームのサービス開始直後なだけあって、見ていると結構な頻度でプレイヤーがログインしてくる。あまりここにいても邪魔だろうと思い、私はそそくさとその場を離れる。

 そんな些細な移動の中でも、石畳を踏みしめる足の感覚や、どこからともなく漂ってくる屋台の美味しそうな匂いなんかが感じられて、五感全てというのが嘘でも誇張でもなかったんだと改めて実感した。

 それに何より、


「……本当に揺れるんだ」


 ぷるんぷるん。

 私が駆け足で一歩踏みしめるごとに、私の胸にある2つの膨らみが揺れ動く。

 ふふふ、ついに私も手に入れてしまったようだ、この禁断の果実を……! これで、みんなから絶壁だのつるぺただのとバカにされなくて済む! ゲームの中限定だけどね!! ……あれ、おかしいな、なんだか涙が……


 そんな風に、少しばかりいつもと違う体の特徴に一喜一憂しながら、私は広場の隅っこに設置してあったベンチに腰を下ろし、手を軽く振ってメニュー画面を呼び出す。


「あ、チュートリアル始まった」


 すると、それに連動して頭の中にアナウンスが響き、メニュー画面の説明と、職業選択やスキルの習得、レベルやステータスについてレクチャーが始まる。


 《MWO》では、職業の他にもレベルアップで得たスキルポイントを使ってスキルを習得し、各自5つあるスキルスロットに自由にセットすることが出来る。このスキルの組み合わせによって、同じ職業でもプレイヤーごとに個性が出るんだと、お兄が前に長々と語っていたことを簡潔に説明してくれた。


 そしてステータスは、HPとMP、それから、物理攻撃力のATK(アタック)、物理防御力のDEFディフェンス、敏捷力のAGI(アジリティ)、魔法攻撃力のINT(インテリジェンス)、魔法防御力のMINDマインド、器用度のDEX(デクステリティ)が職業ごとに基礎ステータスとして決まっていて、それに各種スキルによる補正が入る。


 私がなろうとしてる《魔物使い(テイマー)》は、モンスターをパーティメンバーとして戦闘に参加させられる《使役》スキルを習得できる代わりに、全体的にステータスが控えめだった。

 けど、それこそ自分の弱さなんてモンスターに補って貰えばいいんだし、さっさとテイマーを選んで決定する。


「わっ、なんか来た」


 職業を決めると、インベントリに何かアイテムボックスが送られてきた。

 早速開けてみると、中に入ってたのはテイマー用の初期アイテム一式。《(つる)の鞭》が1つ、《魔物の餌》が5つ、《初心者用HPポーション》が5つ、《スキルポイントの書》が5つ。

 まあHPポーションは分かる。餌も、テイムしたモンスターに使うのか、そうじゃなきゃテイムするのに使うのかのどっちかだと思う。あと、《スキルポイントの書》は、名前からしてスキルポイントが貰えるアイテムかな? ちょうどスキルスロットも5つだし。

 ……ただ、《蔓の鞭》って何? 確かに獣使いは鞭使いのイメージもあるけど、でもなんで蔓? まさか本当に植物の蔓ってことはないよね?

 試しに、チュートリアルで習った通りにメニューから装備画面を開き、《蔓の鞭》を装備してみる。


「……蔓だこれ!」


 なんで!? 初心者用装備だからあんまり強い装備じゃないのは分かるけど、だからってなんで蔓!? せめてもうちょっと武器っぽいのにしてくれない!?

 と、心の中で叫びながらふと顔を上げると、私と同じようにログインしたばかりのプレイヤーが、木の枝みたいな棒きれを持って打ちひしがれてた。

 ……まさか、あれも武器? いやいや、そんなバカな……って、私の手にあるのも似たような感じだから、あり得るのかな……?


「い、いや、私はモンスターをテイムしに来たんだから、私自身の武器なんてなんでもいい!」


 そう自分に言い聞かせた私は、ひとまず《スキルポイントの書》を使って、スキルを習得することにした。

 テイマーといえど、スキルを習得しないことにはテイムも出来ない。それは事前にお兄から聞いていたから分かってる。

 インベントリから《スキルポイントの書》を全て取り出して使用し、ポイントを5つ得る。そうしたら、それを2ポイント消費して、モンスターをテイムさせられる《調教》スキルと、テイムしたモンスターを戦闘に参加させられるテイマー限定のスキル、《使役》を習得し、スキルスロットにセットする。



名前:ミオ

職業:魔物使い Lv1

HP:60/60

MP:50/50

ATK:40

DEF:60

AGI:60

INT:50

MIND:60

DEX:80

SP:3

スキル:《調教Lv1》《使役Lv1》



「よし、これでモンスターをテイム出来る!」


 初期装備が《蔓の鞭》なんて残念感丸出しな感じだったけど、テイマーはモンスターを育ててなんぼ。モンスターが居れば何も怖くない!

 SP(スキルポイント)はまだ余ってるけど、どんなモンスターがテイム出来るのか分からないし、それをはっきりさせてから選んだ方がいいかな。


「早速モンスター探しだ! 待っててね、私のモンスター!」


 そうして気合を入れながら、私はマップを確認して街の外へと向かう。

 今日はひとまず自力で進めてみるとお兄には言ってあるから、特に待ち合わせも何もない。私は意気揚々と、街の外へ向けて歩き出した。

次回モンスターをテイムします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ