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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第八章 カボチャ祭りと料理コンテスト
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第168話 パンプキングと決着

 プレイヤーみんなと一塊になって、パンプキングが繰り出す蔓の群れと交戦を始めて、早三十分。

 最初のうちはしぶとい上に数も多い蔓を前に苦戦を強いられていた私達だけど、蔓が徐々に減っていくごとに、少しずつ余裕も出始める。

 いくら蔓の数が減るごとに攻撃速度が上がっているといっても、やっぱり慣れて来ると圧倒的な物量押しに比べればまだ対処しやすい。

 そうやって、蔓を減らし続けて……パンプキングが街までの道程の半分を消化する頃、ついにその蔓を全て破壊し尽くすことに成功した。


「やった! これで厄介な即死攻撃がもうなくなる!」


「油断しちゃダメよミオちゃん、流石に、このまま終わりってことはないはずだから」


 思わずガッツポーズを取っていると、リン姉にやんわりと窘められた。

 まあ確かに、これで終わったら蔓一本一本に個別のHPバーなんて設ける必要ないもんね。

 そう思っていたら、案の定ボスは新たな動きを見せ始めた。

 ぐぐぐっ、とその場で屈むような仕草をしたかと思えば……思い切り、空めがけて飛び上がったのだ。

 その巨体が豆粒に見えるほど、遥か彼方に。


「これ、もしかして……」


「次は押し潰しだな。よし、お前ら逃げろーー!!」


 嫌な予感がすると同時に、お兄の叫びで近くにいたプレイヤー達が一斉に散り散りになって逃げていく。

 私達も、フウちゃんの指示でムーちゃんがえっちらおっちらとその場から退避し、ギリギリのところで落下地点から抜け出すことが出来た。

 代わりに、すぐ真後ろに降ってきたボスの衝撃波に吹き飛ばされ、みんな仲良く少なくないダメージを受ける。


「うひゃあああ!?」


「ちい、この衝撃波、スタン効果まであるのか、厄介な!!」


 私が悲鳴を上げる傍で、ネスちゃんもまた忌々しげに舌打ちを漏らす。

 どうやらこの攻撃、上から降ってくることによるダメージより、プレイヤー達に行動制限を与えることが目的みたい。

 そして、行動制限を与えたなら、次は攻撃を仕掛けるのが基本。

 そう思ったら、硬直するプレイヤー達の前で、ボスはその口を大きく開け……中から、大量の小さなお化けカボチャを吐き出してきた。


「ええ!? 子供!? このカボチャ、キングなのにお母さんなの!?」


「ミオ姉、突っ込むところそこじゃないから!!」


 私が驚いていると、死に戻りから帰ってきたらしいリッジ君が、ユリアちゃんと一緒にお化けカボチャの群れに挑みかかった。


「《七ノ型・落葉》!!」


「《デスパレードダンス》」


 二人の攻撃が、襲い来るカボチャの群れを次々に蹴散らしていく。

 どうやら、さっきの蔓と違ってこっちは随分と打たれ弱いらしい。放置することは出来ないけど、この分なら対処はまだ楽そうだ。


「……あ、このモンスター、倒したら《霊魂カボチャ》ドロップした」


「えっ、ほんと?」


「ん。出現率はそれほどでもない、けど……これだけいるし、他所のフィールドより楽に集まりそう」


 ユリアちゃんの解説に、私はほうほうと何度も頷く。

 そういうことなら、私も少し攻撃に参加しようかな?


「《召喚》! 来て、クロル!」


「キュイ!」


「お化けカボチャが飛んで来たら、《反撃》で迎撃おねがいね、フローラ、《モンスター誘引》で手伝ってあげて」


「キュキュイ!」


「だっ!」


 私の指示を受けて、フローラがクロルのお腹を持って頭上に掲げ、そこでクロルがくるりと丸まる。

 最近覚えた、フローラなりの棘が刺さらないポーズなんだけど、その体の小ささも相まって、巨大毬栗を拾って自慢してる子供みたい。可愛い。


「おいミオー、雑魚狩りもいいが、本体の方も相手しろよ、チャンスだぞ」


「分かってるって!」


 フローラを可愛がりたい衝動を堪えつつ、お兄の言葉に手を上げて答え、改めてボスの動きを見る。

 蔓が無くなって身軽になったらから、さっきまでより跳ね回る頻度が増えて、押し潰されるプレイヤーもいないではないけど、それより問題なのは随分と上がった移動速度だ。

 纏わり付くお化けカボチャに気を取られ過ぎてると、このまま街まで突っ切られてクエストが失敗しそう。お化けカボチャが《霊魂カボチャ》をドロップするってところが、物欲を刺激してきて大変やらしい。


「だー!」


 とはいえ、私の場合はフローラとクロルのコンビが惹き付けて倒してくれるお陰で、比較的自由に動ける。

 ボスの攻撃パターンも、飛び跳ねとお化けカボチャ召喚の二つだけみたいだし、お兄の言う通り、チャンスだ。


「《召喚》、ビート! あのでかいのに、思いっきり《激突》かましてあげて! フララも援護はもういいから、みんなと一緒に《サンダーストーム》で攻撃開始! 代わりにライム、みんなにありったけ《ナイトメアポーション》配りまくって! MPが尽きないように、みんなで殴りまくるよ!」


「ビビッ!」


「ピィ!」


「――!!」


 それぞれの子が元気良く返事を返しながら、ボスを一気に畳み掛けるべく動き出す。

 それは、他のプレイヤー達も同様だ。


「うおおおお!! 《スパイラルチャージ》!!」


 お兄が真っ正面から槍を構えて突っ込んで、全力の突きを放ち。


「グラ、サーベラス、行くわよ。《アタックフォーメーション》、《ユニオンアタック》!」


 リン姉のモンスター達が、強烈なバフを貰いながら必殺の連携攻撃を繰り出し。


「喰らうがいい、《ドラゴニックフレイム》!!」


 ネスちゃんが炎の雨を降らせ。


「《弓技・流星雨》~」


 フウちゃんが大量の矢を射かけ。


「《二ノ型・疾風》!!」


「《デススライサー》」


 リッジ君が、ユリアちゃんが、神速の一撃を叩き込む。

 ボスが跳ね上がり、着地し、動きを止めた瞬間を狙って、プレイヤー達の攻撃が殺到する。

 徐々に近づいて来る背後の街並みと、無限に湧き出るお化けカボチャに焦りを覚えつつも、みんながみんな、自分の繰り出せる最大の攻撃をお見舞いし、あるいは周りのプレイヤーのサポートのため駈けずり回る。

 そして、ついに最後の門が目前に迫った時。


「ウオォォォ……」


 パキィィィン!! と、パンプキングの巨体がポリゴン片となって砕け散り、幻想的な光の雨を平原に降らす。


 ――パンプキングの討伐を確認。緊急クエスト:秋の大収穫祭! パンプキング討伐作戦は達成されました。


 そのアナウンスと共に、東の平原にプレイヤー達の歓喜の雄叫びが響き渡った。

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