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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第七章 カボチャ祭りと食材集め
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第147話 初日終了と食事会

「うめえ! やっぱリンの作る飯は美味いな!」


「ふふふ、ありがと、キラ」


 アクアブリーゼから戻った後、《魔煌騎士団》の厨房を借りてリン姉と一緒に料理をし、海鮮尽くしのパーティメニューをあれこれと作っていると、ちょうどお兄達が帰って来た。

 なので、その流れのまま出来上がった物を振る舞ってるわけだけど……開幕からお兄がリン姉ばっかり褒めて私には言及してくれない。むぅ。


「一応私も作ったんだからね?」


 拗ねてみせる私だけど、残念ながらそれは迫力とか愛嬌とかそういうものとは全く無縁だ。

 何せ、ジャイアントシザーフロッグ討伐のため、パーティが定員オーバーなのもあってギルドに置いていったライム達が、待ってる間それはもう寂しかったらしく、物凄い勢いで私に擦り寄ってきてるからだ。

 あの食いしん坊のライムが、ご飯すらそっちのけで甘えてくるなんて……うちのホームではちゃんとお留守番も出来るんだけど、やっぱり人の家だと違うのかな?


「あはは……まあ、あの2人は仕方ないんじゃない? それにほら、ミオ姉の料理も凄く美味しいよ」


「うぅ、ありがとうリッジ君!」


 どっかの薄情なお兄と違って、リッジ君はちゃんと私のことも立ててくれる。本当、リッジ君はいい子だね。お姉ちゃん嬉しい。


「しかし……んぐっ、美味いには美味いのだが、これは果たしてハロウィン料理と呼べるのか?」


「それはまあ……運営次第?」


 大きなサメの刺身を食べながら、ネスちゃんがごもっともな疑問をぶつけてくる。

 料理の合間にもう一度調べたところ、どうやら、料理コンテストのレギュレーションについては明日正式に発表があるらしい。

 どうせこんなに間を置かずに発表するなら、最初から教えてくれてもいいのに。それとも、小出しにしてプレイヤーの反応を窺ってたのかな?


「それはそうと、お兄達は各地のミニゲーム回ってみたんでしょ? どうだったの?」


 明日になれば氷解する疑問は横に置いて、まずは差し当たって重要な情報について尋ねてみる。

 すると、お兄はそれまでの惚気モードを解除し、ゲーマーの顔になって口を開く。


「そうらな、まずわふらいへのみにへーむれ……」


「食べ終わってから喋ってお願いだから」


 表情が引き締まっても、お兄はお兄だった。

 私が頭を抱え、リン姉が苦笑し、他のみんなが乾いた笑いを……って、ネスちゃんは人の事笑えないでしょ。

 そんな微妙に締まらない空気の中、ようやくお兄が口の中の物を飲み込んで、改めて口を開いた。


「まずはグライセのミニゲームに行ったんだが、ここは射的系だったな。《長弓》と《短弓》スキルの2つから選んで、一定エリア内から出ないように、制限時間内に空を飛び回るお化けカボチャをどれだけ多く撃ち落とせるか競う感じだった」


「黄金のお化けカボチャの動きが速くて、そっちは《長弓》スキルじゃないと撃ち落とせそうになかったかな……時々蝙蝠っぽい見た目のダークバットっていうモンスターが、音波? みたいなのを飛ばして攻撃してくるから、それがちょっと厄介だったかな? 迎撃を考えるなら《短弓》の方が楽だったけど」


 お兄の説明に補足するように、リッジ君も色々と教えてくれる。

 ふむふむ、弓を使うのが基本なら、フウちゃんなら高得点狙えそうかな?

 ちなみに、3人で挑戦した結果は、僅差でリッジ君が一番高得点で、それにお兄が続き、ネスちゃんはイマイチだったんだとか。挑戦回数はさほど多くないから、みんなランキング入りはならず。


「待て、一番下と言うが、無制限モードでは我がぶっちぎりだったんだぞ!」


「無制限って……スキルの使用を全て解禁してやるやつですよね~? そんなに魔法と相性良かったんですか~?」


 抗議の声を上げるネスちゃんに、フウちゃんが尋ねてみる。

 すると、ネスちゃんはふふんっと得意気に鼻を鳴らして……。


「ああ、ネスが継続ダメージ系の広範囲魔法をエリアのど真ん中に使ってね……火力特化なスキル構成のせいか、効果範囲が凄かったから、撃ち漏らしもあったとはいえかなりの数がそれで撃破されたんだよ。ランキングにもばっちり入っちゃって」


「こらリッジ、我が語ろうとした内容を先に全部言うでないわ!」


「あはは、ごめんごめん」


「全く……」


 笑いながら謝罪するリッジ君に、ネスちゃんはぷんすかと怒ってみせるけど、その表情はとても本気で怒ってるようには見えない。というかむしろ、そんなやり取りが楽しそうだ。

 少し見ない間に2人の距離が縮まった気がするんだけど、何があったんだろう。気になる。


「それで、ラビリンスの方は廃洋館みたいなとこでな、各種属性魔法だけ駆使して、中に住み着いたお化けカボチャを倒しながら奥に到達するまでのタイムを競う感じだった。途中で出て来る中ボスみたいなモンスターが厄介だったな……」


 どうやら、タイムアタックとお化けカボチャの討伐数でポイントを稼ぐタイプのようで、コスタリカ村と同じくソロかペアか選べるみたい。

 魔法かぁ、私は《召喚魔法》しか使ってないけど、全部使えるなら一通り試してみたいかも。


「あやつか……あれこそ我が全力の魔法で叩き潰すに相応しい難敵であった……」


「いや、あれ倒してもポイント入らないからね? 無理矢理倒してMP切れてその後が続かなかったら意味ないからね?」


「細かいことは気にするな! ペアの時はちゃんとやっただろう?」


「まあ、それはそうだけど。少しは支援系の魔法も……」


「火力こそ正義だ!」


「…………」


 相変わらず火力主義なネスちゃんに苦笑するリッジ君は、なんだか既に苦労人が板についてる気がする。

 将来、お嫁さんの尻に敷かれそう……大丈夫かなぁ。


「んで最後、アクアブリーゼのミニゲームだけど……こいつは素潜りだったな」


「えっ、素潜り?」


「そう。《漁師》スキルと、《大剣》、《鎌》、《長槍》、《刀》から好きなスキルを選んで装備して、水中でお化けカボチャを狩る」


「お化けカボチャって泳げるの?」


「泳いでたぞ。スイスイと」


「えぇぇ……」


 なんでも、《漁師》スキルは《釣り》スキルの派生先で、水中での活動限界時間が伸びたり、スムーズに泳げるようになったり、水中での戦闘行為に補正がついたりする効果があるらしい。

 イベント以来、《釣り》スキルは使える場面に出くわさなかったからレベルも全く上がってないし、知らなかった。

 ただそれ以上に、お化けカボチャの新たな生態にびっくりだよ。

 地面を跳ね回って空を飛んだと思ったら海の中まで行けるって、どんだけハイスペックなのあのカボチャ。いや、元々生えてるカボチャと入れ替わって育つって言ってたから、地中も行けるのか。

 ……本当になんでもありなカボチャだね。そのうち時間とか超越しそう。


「それにしても、射的と廃洋館探索と素潜りかー、明日は何しようかなー」


 今日のところは、軽くクエストとミニゲームをやって、食材求めてアクアブリーゼまで行って、後は大体料理三昧だったわけだけど……うーん、良さげなクエストを探すか、判明する予定の料理コンテストの仕様に合わせてまた試作するか、それともミニゲームにでも挑戦するか……あー、悩むなあ。


「ミオ、明日は平日やからな? また遅刻とかするんやないで?」


「わ、分かってるよ!」


 明日のゲームを想い妄想を繰り広げていると、ナナちゃんから呆れたような視線を送られた。

 いや、流石に忘れてないよ? そこまで私、ゲーム馬鹿じゃないからね?


「いやー、ミオもすっかりこっちの道に足を踏み入れたなぁ」


 自分と同類が出来て嬉しいのか、そんなことを言い出したお兄をジト目で睨む。


「お兄~? それ以上言うと明日の朝、起こしてあげないよ?」


「調子乗ってすみませんでした」


「よろしい」


「そこで、自力で起きようって選択肢が出て来ないあたりがキラ兄らしいというかなんというか……」


 私とお兄のやり取りを、リッジ君が苦笑しながら眺めてる。

 まあ確かに、リッジ君はしっかりしてるから、別に目覚ましとかいらないんだろうけど、お兄の場合は目覚ましあっても起きないからね。

 リン姉ならもう少し手際よく起こせるのかなぁ、と思わないでもないけど、前に一度頼んでみたら、それとなく断られちゃったんだよね。まあ、いくらリン姉と仲良いって言っても、朝起こす役目を他所の家の人に頼むなんて流石に図々しいし、そういう意味ではちょっと反省したけど。


「まあ……秋は忙しいし、その時になってから考えればいいと思う」


「あはは、それもそうだね」


 最終的に、ユリアちゃんの意見がごもっともだということで納得した私は、未だに擦りついてくるライム達を撫で、そろそろ落ち着くように促す。


 秋イベントは小規模で来るだろうなんて言ってたお兄の予想を裏切り、思った以上にやりたいことがいっぱいある、このハロウィンイベント。

 中々に賑やかだった初日は、こうして過ぎ去っていくのだった。

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