第138話 組み合わせとランキング
私とフウちゃんが獲得したポイントは、360pt。貰えた《霊魂カボチャ》は3つで、当然の如くランキング圏外。
ペアの1位とか、1000pt超えてるんだけど、凄すぎじゃない? 追いつける気がしないよ。
ちなみに、これが無制限のランキングになると、ソロしかないのに2000ptに達してる。わけがわからないよ。
まあ、《鞭》と《鎚》、《鞭》と《長剣》の組み合わせはあっても、《鞭》同士のペアでランク入りした例はないみたいだから、ある意味妥当だけどね。
「じゃあ、次はウチらの番やな。ネスちゃんやったな、よろしゅう頼むで!」
「うむ、任せろ!」
2人して巨大虫網を掲げ、意気揚々と畑に足を踏み入れていく。
ていうかどうでもいいけど、ネスちゃん、いつもみたいに「ネスちゃんではない、我が名はダークネスロードだ!」って言わないんだね。
いや、2人が最初に自己紹介した時は言ってたのかもしれないけど……もう慣れたのかな?
そんなことを考えながら、私は観戦用のウィンドウを開き、フレンド機能から2人のことを検索して、その様子を映し出す。
「おりゃー!」
そうすると、ちょうどゲームが始まったところだったようで、ナナちゃんが元気よく駆けだしたかと思えば、巨大虫網を振り下ろして、地面から飛び出してきたお化けカボチャを捕まえる。
《鞭》よりも重くてリーチも短い《鎚》の巨大虫網だけど、《鞭》と違ってアーツを使わなくてもお化けカボチャを捕まえられるのは良さそう。リーチは程々でも当たり判定は広いから、初心者でも捕まえやすそうだし。
「行くぞ、《ギガスタンプ》!!」
すると今度は、ネスちゃんが《鎚》スキルのアーツを使用した。
大きく振り被った巨大虫網が光を纏い、お化けカボチャ諸共勢いよく地面へと叩きつけられる。
ズドンッ!! と虫網とは思えないほど重々しい音を立てたその一撃は地面を震わせ、なぜか周囲を飛んでいたはずのお化けカボチャまでもがスタンして動きを止めてしまった。
「続けてこれだ、《ジャイアントスイング》!!」
地面に突き刺さったままの虫網が再度光を発しながら引き抜かれ、ネスちゃんの周囲をブオンッ!! と薙ぎ払う。
それに巻き込まれて、スタンして動きを止めていたお化けカボチャも、偶々ネスちゃんの近くを通りかかったお化けカボチャも、みんな纏めてアーツの光に呑まれて消滅し、一気に大量のポイントが2人に入る。
「わお、凄い……」
「何というか、ネスらしいやり方だね」
私と同じことを思ったのか、隣で見ていたリッジ君が苦笑気味にそう呟く。
確かに、大火力で敵を一気に殲滅する、炎属性魔法の使い手であるネスちゃんらしいやり方だ。
アーツを使うと、普通に振るよりも攻撃範囲が光の分だけ広がるし、網そのものだけじゃなくて持ち手の方にも当たり判定が発生するようで、2人がブオンブオンと風切り音を立てながら巨大虫網を振り回す度、面白いようにポイントが入ってる。
この分だと、私とフウちゃんの記録なんて余裕で塗り替えられそう、と思ったその時、問題が発生した。
「うおぉ! 《ジャイアントスイング》……ってあばばば!?」
「ネスー!? って、ウチも何か体が痺れびれびれれれれ!?」
残り時間が半分程に差し掛かった時、2人仲良く麻痺状態に陥り、その場で動きを止めてしまった。
「……今、2人ともカボチャと一緒にパラライズスライム捕まえた」
「あー、なるほど。攻撃範囲が広いから、適当に振ってると別のが紛れてても纏めて捕まえちゃうのか」
ユリアちゃんの解説に納得していると、まさにそのタイミングを見計らったかのように、黄金のお化けカボチャが畑から飛び出してきた。
まだ2人が麻痺で動けないのをいいことに、コミカルな表情で小ばかにしたように笑いながら、黄金のお化けカボチャは悠々と畑の中を飛び回る。そして麻痺が解ける頃には、ぴゅーっとエリア外へと逃げて行った。
「お、おのれカボチャめ、我らをおちょくりおって!」
「ウチも怒ったでー! こうなったら畑のカボチャ全部獲り尽くすまで暴れ回ったる!」
そして、面白いように頭に血が上った2人は、畑の中でより一層激しくアーツを連発し、そして懲りずにパラライズスライムの餌食となっていた。
「《鞭》よりも扱いやすそうではありますけど……あの様子を見ていると、何だかやっててストレス溜まりそうですね~」
「多分、その《鞭》でパラライズスライムを捕まえて、《鎚》スキルの攻撃範囲内に入れないようにサポートするのが正しいやり方なんじゃないかな? ほら、ランキングでも、《鎚》で好記録出してる人って、相方に《鞭》がいるパターンが多いし。ソロはほとんど《長剣》の独壇場になってるよ」
「なるほど、それなら次は、ミオ姉達とあっちのチームでメンバーを入れ替えた方がいいかもね」
フウちゃんのボヤキに、私がランキングの記録を元に考察を述べると、リッジ君が現実的な意見にしてくれる。
まあ、これくらいのことは最初にランキングを見た時に予想して然るべきだったかもしれないけど、理由を分かった上で真似するのと、良く分からずに真似するのとじゃ全然違うからね。お試しはやっぱり必要だよ。
「ぐう、酷い目に遭ったぞ……」
「スライム怖いわぁ……」
そんな話をしている間に、挑戦を終えてややげっそりした様子のネスちゃんとナナちゃんが戻ってきた。
獲得したポイントは、420pt。黄金のお化けカボチャを取り損ねた上に、パラライズスライムに引っかかりまくってたのに私達よりも高い。解せぬ。
「まあ、次はメンバー変えて挑むから。元気出して?」
ちなみに、ゲットできた《霊魂カボチャ》は4つだったらしい。どうやら、100ptごとに1つ貰えるみたいだね。
とりあえず、慰労を兼ねてライムを抱くかと聞いてみたら、全力で拒否された。スライムは嫌らしい。
残念だけど、こんなに嫌がられるってことはそれだけパラライズスライムが強力ってことだし、いっそうちの残ったミニスライム隊からパラライズスライムに変化させられないかな?
今のところ、麻痺を使ってくる敵モンスターがいないけど、見つけたら試してみよう。
「2人は……心配しなくても上手くやりそうだね」
2人には代わりにフローラを預けて、幼女特有の無邪気パワーで荒んだ心を癒して貰いつつ、リッジ君とユリアちゃんに向き直る。
この2人なら、最初からランク入りとかやりそうな気がするんだよね……。
「いやまあ、ミオ姉やネス達が先にやってくれたから、それなりにやれるとは思う」
「ん、参考になった。いっぱい稼いでくる」
苦笑交じりに問いかけると、本当に2人とも自信ありげだった。
頼もしいなぁ、ほんと。
そんな風に思いながら、畑に足を踏み入れる2人を見送った私は、早速観戦ウィンドウを開く。
「それで、ユリア、ミオ姉にはああ言ったけど、作戦はどうする?」
「ん。真ん中よりこっちは私、そっちはリッジが狩る」
「分かった、ひとまずそれで行こう」
いきなり連携プレイに走ることはせず、折よく役割分担を終えたらしい2人がそれぞれに剣……ではなく普通の虫網を構え、真剣な表情で佇む。
……なんともシュールだけど、そういうミニゲームだから仕方ないよね。
そうしているうちに、開始前の短いカウントダウンが0になり、ミニゲームが開始される。
「ふっ」
「やっ」
開始と同時に、ほとんど音を立てず駆け出した2人は、ひとまず普通に虫網を振って、飛び出してきたお化けカボチャを捕らえる。
けれどそこで足を止めることなく、2人は畑の中を全力で駆け回り、次の獲物を狙っていく。
さっきネスちゃん達みたいに派手なアーツの連発があるわけじゃないけど、その分静かに、それでいて本当に同じステータスでやってるのかと疑わしくなるほど素早く無駄のない動きで、次々とお化けカボチャが捕らえられていった。
当然、2人だけじゃ手が回り切らなかったお化けカボチャが空中を飛び回り始めるんだけど、それが2人に近づいた瞬間、頭の後ろに目が付いてるんじゃないかっていうくらいの正確性と反射神経で、アーツも使わずに捕まえてるんだから凄すぎる。
「うーん、やっぱり2人は安定感があるねー」
「ホンマすごいなぁ、まだ30秒経ってへんのに、もう300pt超えとるで。この分ならもしかしてランキング狙えるんとちゃうん?」
現在、ペアでのランキングトップは1090pt、一番下の10位で1010ptだ。
後半になるにつれて、パラライズスライムが出る代わりに黄金のお化けカボチャが出始めるから、上手くすればポイントをより稼げるようになる。
だから、ある意味ここからが勝負所だ。
「あっ」
そうしていると、ついに地面からパラライズスライムが飛び出し、リッジ君の方にポヨンポヨンと跳ねながら近づき始めた。
ちょうど死角からの接近だから、リッジ君の目にはパラライズスライムは見えてないだろうけど、設定された《感知》スキルには他のお化けカボチャと同じように映ってるはず。
それまで、後ろから近づいて来るお化けカボチャを、ほとんど見もせずに虫網で捕まえていたし、このままだとうっかり間違えちゃうんじゃないか、とハラハラしながら見守る私だけど、その心配は杞憂だった。
リッジ君は、背後から迫るパラライズスライムを見もせずにひらりと躱すと、その奥にいたお化けカボチャへと虫網を振るった。
偶々かと思ったけど、その後もリッジ君だけでなく、ユリアちゃんまで同じようにパラライズスライムを躱し、お化けカボチャを的確に捕らえていってるから、明らかに狙ってる。
後ろにいても反応出来るのは《感知》スキルのお陰だとしても、あのスキルじゃ見分けなんて付かないはずなのに……。
「なるほど、流石リッジ。そういうことか」
「えっ、そういうことかってどういうこと?」
何か分かったらしいネスちゃんに視線を向けると、なぜかふふんと胸を張りながら説明してくれた。
「恐らくリッジ達は、パラライズスライムとお化けカボチャの移動速度の違いから見分けているのだろう。《感知》スキルに注意を払っていれば、それくらいは分かるからな。その証拠に、足元から新たに飛び出す個体に対しては、それが何であれ必ずワンテンポ遅れて手を出している」
「なるほど……」
言われてもう一度2人の動きを見てみれば、確かにあれだけ反応が早いのに、足元から飛び出したお化けカボチャに対しては、半歩距離を取って一度目を向けてから虫網を振るってるように見える。
確かにネスちゃんの言った通りなら、直接目を向けなくても理論上はお化けカボチャとパラライズスライムを見分けられるけど……。
「けど、私だったら無理だよ、そんなの」
《感知》スキルとは言うけど、そのままだと大雑把に敵のいる方向と距離が分かる程度の物で、本当に詳しい配置や数が知りたければ、視界の端に表示されているエリアマップから、スキルに連動して表示される敵のアイコンを確認しないといけない。
だから、移動速度から敵の種類を判別するような真似がしたければ、激しく体を動かす戦闘の最中に、エリアマップにまで注意を払って、周囲にいる敵の配置と動きを常に追い続ける必要がある。
とてもじゃないけど、誰にでも出来るようなテクニックじゃないと思う。
「まあ、それが出来て初めて、ガチプレイヤーと肩を並べることが出来るということだ」
「ガチプレイヤーってすごい。いや、リッジ君はガチじゃない……はずだけど」
基本的には剣道が優先のはずだし、総プレイ時間で言えば私の方が長いはず。多分。
……まあ、今回のミニゲームは、初心者と熟練者が一緒にイベントを楽しめるようにっていうスタンスなんだから、つまりはより素のポテンシャルが高い方が有利なのは確かだよね。
この場合、むしろリッジ君について行けてるユリアちゃんが凄いのかもしれない。リアルで運動とかしてるのかな?
「これで……終わりっ」
そして、黄金のお化けカボチャも無事にゲットし、最後までパラライズスライムにかかることなく戦い抜いた2人が戻って来る。
それを、私達4人が拍手で出迎えれば、揃って照れたように顔を逸らした。
「凄いよ2人とも、初めてやるミニゲームで完璧だったね!」
「うむ、我が友として恥ずかしくない働きであったぞ!」
「ポイントも、まさかの990ptですよ~。ランキングには載りませんでしたが、初めてと思えばかなり上出来ではないでしょうか~」
「いやー、ホンマ、半端ないわ。いっそミオの店の前で剣舞とか披露したら客寄せになるんとちゃうか?」
「いや、私お店とか持ってないから」
「えぇ!?」
なぜか驚愕の表情を浮かべるナナちゃんは放っておいて、2人を労う。
そして、改めてチーム分けをして、リッジ君とユリアちゃんはそのままに、私とナナちゃん、ネスちゃんとフウちゃんの組み合わせで何度か挑むことに。
結果、私とナナちゃんのチームは680pt、ネスちゃんとフウちゃんのチームは700ptまで記録が伸び、そしてリッジ君とユリアちゃんに至っては、ついに1040ptに到達し、ランキング入りを果たした。
「凄い凄い! 本当にランキング入りしちゃったよ、2人とも!」
「わぶっ」
「い、いやまあ、ランキング入りって言っても、まだ何とか7位に入っただけだし、多分日付けが変わる頃には塗り替えられてるんじゃないかと……ほら、僕らが挑戦してる間にも、1位のペアとかまた記録を塗り替えたみたいだし」
「あっ、ほんとだ」
2人を正面から抱きしめてはしゃいでいた私を落ち着けようとしてか、リッジ君が空中に浮かぶ《お化けカボチャの摑み取り》ペアランキング表を指差した。
それを見れば、最初に挑戦していた時は1090ptだった1位の記録が、1110ptにまで上がっている。当然、それに追従するように、2位以下の記録も伸びていて、確かにリッジ君の言葉通り、下手するとすぐにでもランキング圏外に落ちちゃうかもしれない。
ただ、その1位のペアの記録を見ていて、ふとあることに気が付いた。
もっと言えば、その記録を打ち立てたペアの名前に、物凄く見覚えがあった。
そして、それに気が付くのと同時に、ちょうどその1位の記録が1120ptに更新され、1組のペアがミニゲームから帰還してきた。
「よっしゃ、新記録達成! これでひとまずこのミニゲームは、しばらくランキング外に落ちることはないだろ」
「そうね。次はどうする? ぼかんとミニゲームのところに行く?」
「俺はそうするつもりだけどよ、料理コンテストの方は準備しなくていいのか? 狙ってるんだろ?」
「そうねえ……どうしようかしら?」
1人は、全身を金属鎧に身を包み、背中には長大な槍と巨大な盾を背負った、重騎士の少年。
もう1人は、魔法使い然としたローブに身を包み、手には《召喚術師》用の短杖、腰には召喚石を入れるためのポーチを身に付けた、金髪の美少女。
そんな2人に向け、私は大声でその名を呼んだ。
「お兄! リン姉!」
私の呼びかけに驚いてこちらを向いた、実の兄と幼馴染の姿に、私は珍しい物を見たと目を丸くするのだった。




