第133話 レベリングとゴブリン狩り再び
ナナちゃんと一緒に、レベリングのためにまずやってきたのは、《東の平原》だった。
牧歌的な光景が広がるこの場所は、基本的に弱いモンスターしか出ないから、最初にこのゲームに慣れるには最適な場所だ。
この場所で、まずは私も最初に戦った相手……ゴブリンと戦闘して貰うつもりだ。
「よっしゃいくでー!」
不細工な緑の影が見えると、ナナちゃんはグライセを出る前に買っておいた《冒険者の槍》を手に、一直線に突っ込んでいく。
「あっ、ナナちゃん待って!」
「せいやーー!!」
ノンアクティブモンスター達の脇を抜け、真正面から突っ込んでいく姿に思わず声をかけるけど、勢いづいたその走りは止まらない。
槍を両手で構え、走り寄った勢いのままゴブリン目掛け真っ直ぐに突き出す。
「あらら!?」
「ギヒッ!」
けれど、それはするりとゴブリンに回避され、思いっきりたたらを踏んでいた。
そして、無防備なナナちゃんの体目掛け、ゴブリンは反撃とばかりに粗末な剣を振り下ろす。
「ひぎゃー! やーらーれーたー!?」
「いや、まだHP残ってるから! 早く離れて!」
斬られると同時に、無駄に演技染みた声を上げながら倒れるナナちゃんに向け、私は慌てて叫びながら距離を詰める。
「よいしょっ!」
「ギヒャ!?」
一足飛びにゴブリンの下まで接近した私は、そのまま《バハムートの解体包丁》を抜き放ち、その首を狙って振り抜いた。
スパンッ! と、ゴブリンの首にダメージエフェクトが走り、そのHPがあっさりと0になる。
「お、おお……ミオ、いつの間にそないな一端の剣士みたいな動きが出来るように……惚れたわ、抱いて」
「いや、これ単純にレベル差のゴリ押しだから。ナナちゃんもステータスが上がればこれくらい出来るようになるよ」
実際、私のAGIは《敏捷強化》スキルの補正がかかってるし、DEXも270を超えて、レベル1だった頃の3倍以上だ。
ATKに関しては、今の私のステータスでも、全職最高のATKを誇る《鍛冶師》になったナナちゃんとそこまで大きく差はなかったりするけど……それでも装備の質がかけ離れてるから、やっぱりゴリ押しなことに変わりはない。
ステータスが上がると、色々と超人染みたことになってくるし、これくらいは普通だと思う。
……ユリアちゃんとかリッジ君とか見てると、尚更そう思う。あの2人は装備やステータス云々以前に、プレイヤースキルが高すぎてそう見えるだけかもしれないけど。
「そうなんか? けどそれだと、ウチのこと手伝って貰うのも難しそうやな」
「あ、そうか」
今は助けるためだったから仕方ないとしても、今の私の攻撃じゃ一撃でゴブリンを倒しちゃう。
そうなると、経験値はほとんど私に入ってナナちゃんが育たないし、私は私で敵が弱すぎて育たない。これは拙い。どうしよう。
「うーん……よし、私もレベリングを兼ねて、レベルの低いスキルと装備で固めて、使役するのもフローラだけで行こう。召喚するモンスターも縛れば、程よく弱体化するはず」
一時的に転職して、1レベルから一緒にやるっていうのも1つの手なんだけど、今回はレベリングしたいスキルもあるしね。
何より、下手に同じ水準からやっちゃうと、私の場合うっかり返り討ちに遭ったりとかしそうだし。
別に、私がゲーム上級者だなんてナナちゃんも思ってないだろうけど、だからって今日始めたばかりの初心者の前でうっかり死に戻りとかしたら、恥ずかしくて死にそうだし。せめて、防御面だけは全力を尽くす。
えっ、そっちの方が情けないって? あーあー、聞こえない聞こえない。
「よし、こんなところかな」
名前:ミオ
職業:魔物使い Lv46
サブ職業:召喚術師 Lv43
HP:410/410
MP:540/540
ATK:137
DEF:180
AGI:182
INT:190
MIND:258
DEX:283
SP:15
スキル:《調教Lv46》《使役Lv48》《召喚魔法Lv46》《魔力強化Lv30》《投剣Lv22》《料理人Lv5》《MP消費量軽減Lv1》《感知Lv44》《俊足Lv1》
控えスキル:《鍛冶Lv46》《釣りLv15》《隠蔽Lv37》《採掘Lv38》《合成Lv46》《農耕Lv28》《調合Lv49》《採取Lv49》《鞭Lv46》《魔封鞭Lv37》《投擲Lv41》《敏捷強化Lv40》
ひとまず、主要なスキル以外は、出来るだけレベルが低いスキルで固めてみた。
《MP消費軽減》は、《魔力強化》がレベル30になった時に習得可能になった派生スキルで、これが意外と《召喚魔法》の維持コストだけじゃなく、召喚コストの方にも未だに効果があるらしくて、SPを3ポイント使って習得した。
修正ミスなのか仕様なのか、その辺りはまだよくわからないらしいけど、維持コストだけでも効果があれば損はないし。
《俊足》スキルは、《敏捷強化》の上位スキル。レベル40で習得可能になった。
MINDが大幅に下がる代わり、《敏捷強化》以上のAGI補正がかかるのが魅力だ。もっとも、今はスキルレベルが低いから、《敏捷強化》の方が効果が大きいけど。
改めて見ると、正直、上位スキルラッシュで一気にSPが辛くなってきたよね。《料理人》スキルも、《料理》スキルから変化させるのに5ポイントも必要だったし。
生産系スキルだからか、上位スキルを習得した時に元のスキルが消滅しちゃったわけだし、その分ポイントまけてくれてもいいんじゃない?
まあ、都合よくもうじきハロウィンイベントなんだし、そこで《スキルポイントの書》を集めれば、この後控えてる上位スキルも何とかなるよね、多分。
……なると、いいな。
「ミオー? どないしたん、ボーっとして」
「あっ、ごめんごめん」
スキルの構成が間違ってないかチェックしてる間に、先行きを思って溜息なんて吐いてたから、ナナちゃんに心配かけちゃったらしい。
私は慌てて謝ると、インベントリから解体包丁の代わりになるアイテムを取り出した。
「それ、さっきのゴブリンが使ってた剣か?」
「うん、そうだよ」
私が取り出したのは、ゴブリンからドロップする《粗末な剣》。ATK+5という、初期装備と冒険者装備の中間な性能のアイテムだ。
ただ、使い勝手が中間かと言うと、そんなことはない。耐久値が恐ろしく低いせいですぐに壊れるから、半端な性能と相まって、初期装備の方がまだマシなんて意見まである。見た目もボロボロで、カッコよくないし。
ただ、初期装備はNPCショップで売ってない、地味なレアアイテムだし、普通に手に入る剣としては、これが最低性能だ。
ナナちゃんと一緒にやる分には、ちょうどいいと思う。
最後に、ライムとフララを《使役》スキルの対象から外せば、準備OKだ。
「お待たせ。それじゃあ続きしよっか」
「おー!」
改めて、ナナちゃんと一緒にゴブリン狩りを再開する。
私が前に立って索敵し、練習がてら1匹でいるゴブリンに狙いを定めた。
「よいしょっ、フローラ、《蔓操作》!」
「だっ!」
無造作に近づき、ゴブリンに向けて剣を振るう。
いくら上位スキルになったとはいえ、元があまり戦闘向きじゃない《料理》スキルだっただけに、装備まで悪化した今では、一撃じゃゴブリンのHPはさほど削れない。
そんな私目掛け、ゴブリンは反撃を繰り出そうとするんだけど、《俊足》スキルの補正を受けてる私に、ゴブリンのノロノロとした動きじゃついて来れない。あっさりと躱し、フローラに指示を飛ばす。
フローラがゴブリンに向け手を掲げると、その服の裾から蔓が伸び、ゴブリンの体を縛り上げて拘束した。
「ナナちゃん、ゴー!」
「おう、任せときー!」
動けないゴブリン目掛け、ナナちゃんが槍を構え、突撃する。
真っ直ぐに突き出された槍が、今度こそその胸板を捉え、大きくHPを削り取った。
「よっしゃ! これで終いや、《クイックスラスト》!!」
そこへすかさず、ナナちゃんがアーツを叩き込む。
《槍》スキルで最初から覚えているアーツだけど、ゴブリン相手なら十分な威力がある。
今回は全く危なげもないままに、ゴブリンを倒すことに成功した。
「よっしゃ! 見たかミオ、バッチリやで!」
「うん、バッチリ」
ぐっ! と親指を立てて笑うナナちゃんに、私も同じようにサムズアップを返す。
実際、私がゴブリンと戦った時なんて、1度目はナナちゃんよりも更に情けないやられ方したし、2度目もライムと2人、必死にゴブリン相手に削り合いを演じてやっと倒してたしね……あはは。
うん、今となってはいい思い出と言えなくもないけど、ナナちゃんには黙っておこう。
「いやー、流石話題のゲームなだけあって、中々の迫力やな。ちなみにミオは、初めて戦闘した時どないやったん?」
「一撃でぶっ倒したよ」
お兄が。
「ほお、やるなぁ! 流石ミオ、やっぱ兄貴の影響がでかいんやなぁ。よし、ウチも負けへん、すぐに追いついたるでー!」
「あ、あはは……」
微妙に真実を掠りながら、気合を入れるナナちゃんに苦笑を浮かべる。
そうしてこの日は、そのまま《東の平原》でレベリングに励むのだった。




