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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第七章 カボチャ祭りと食材集め
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第132話 幼児化親友とロマンビルド

「さて、もう来てるかな?」


 コスタリカ村の転移ポータルを使い、グライセの中央広場へと降り立った私は、そう呟きながら辺りを見渡す。

 既に職業は決めてあると言っていた奈々ちゃんだったけど、まだキャラクター設定は終えていなかったみたいで、当然アバターの容姿やキャラネームなんかは聞けてない。

 一応、私の容姿や連れ歩いてるモンスター、キャラネームは伝えてあるから、出来れば奈々ちゃんに見つけて欲しいんだけど……。


「うーん、と言っても、奈々ちゃんはそこまで見た目に拘らなさそうだしなぁ、結構素のままかも?」


 そう考え、改めて中央広場にいるプレイヤーを一人一人注視していくんだけど、中々それらしい人は見つからない。

 待ち合わせでもしてるのか、足をブラブラさせながら周囲を見渡す人や、メニューを開いて何かしている人はいるんだけど、装備からして初心者っぽくないんだよね。


「まだ来てないのかな?」


 私の容姿は、リアルでは到底お目にかかれない銀髪碧眼だけど、ゲーム内だとそれほど珍しくはない。

 ただそれに加えて、スライム、蝶々、植物の精霊(幼女)を連れて歩いているプレイヤーともなれば、そんな人は誰もいない。いたら是非お友達になりたいところだけど、残念ながらいない。

 だから、私が奈々ちゃんを見つけるのは難しくても、奈々ちゃんが私を見つけるのはそれほど難しくは……。


「……ミーオー!! 来たでーー!!」


「ふおぉぉぉう!?」


 そう考えていたら、突然真後ろから声が聞こえ、それと同時に腰の辺りに思い切り抱き着かれた。

 驚きのあまり変な声を出して、危うくライムやフローラを落っことしちゃうところだったけど、この場合突然抱き着いた側も大変だ。

 フレンドでもない相手に触れられたことでハラスメント防止コードが働き、「ふぎゃ!?」という声を上げながら、抱き着いてきた人は弾き飛ばされ、ゴロゴロと派手に転がっていく。


「え、えーっと……大丈夫?」


 そんな光景を視界の端に眺めていた私は、そのリアクション芸人もびっくりな吹っ飛び方に、セクハラ行為を咎めるよりもまず心配する気持ちの方が先立った。

 何せ、吹っ飛んだその子は見るからに子供で、しかも見覚えのある顔だったからだ。


「このゲームは、基本的にフレンドじゃなきゃ、街中で故意の接触は出来ないって言ってなかったっけ? ……奈々ちゃん」


 癖毛が入り、ふわりとしたショートボブに、小さなヘアピンを付けただけの簡素な髪形。

 可愛らしい顔立ちなのに、どこかオヤジ臭い仕草のせいか色々台無しなのは、ゲームの中にあっても変わらないらしい。

 そして、なぜかリアルに比べて大幅に背が低くなり、幼児体型と化して現れた親友に、私は呆れ顔で声をかけるのだった。





「いやー、話には聞いとったけど、まさかここまで苛烈に弾かれるとは思っとらんかったわ、失敗失敗」


「全くもう、奈々ちゃんは……」


 あははは、と笑う奈々ちゃんを前に、私は盛大に溜息を吐く。

 ひとまず落ち着いた場所で話そう、ということで、グライセ中央広場より西へ向かった大通りにある、お洒落なレストランにやって来た。

 そこで適当なドリンクと、さっきのトマトスープだけじゃ足りなかったらしいライムのため、適当にフライドポテトなんかを注文しつつ、話を聞いてみることにしたんだけど……少なくとも、さっきの一件についてはまるで反省していないらしい。


「こんくらい小さい子の姿なら、女の子に合法的に抱きつけるかと思ったんやけどなぁ」


「発想がゲスいよ奈々ちゃん」


 悪びれもせずにそう言う奈々ちゃんをジト目で見つめてみれば、ピ~ピ~と口笛を吹いて誤魔化そうとする。

 全然誤魔化せてないというか、誤魔化す気もあんまりなさそうだけど。


「それで、さっきから普通にリアルネームで呼んじゃってたけど、キャラネームは何にしたの?」


「ん? ああ、ナナリーにしたで。せやから、ナナちゃんでも別に問題ない」


「なるほど」


 確かにそれなら、リアルとゲーム内で呼び分ける必要もないから楽だ。私も、特に意識したわけじゃないけど同じだし。


「それでナナちゃん、結局職業は何にしたの?」


 名前が把握できたところでお互いにフレンド登録を交わし、手持無沙汰になった手でフライドポテトをつまんではライムに食べさせながら、気になったことを尋ねてみる。


「うん? ああ、そういえばまだ言ってなかったっけ」


 私が頼んだドリンクを、フローラがストローを、フララが自前の口を使って飲んでいる光景を「ほあー」と眺めていたナナちゃんは、私の言葉に気付くと、「むっふっふ」と勿体ぶるように変な笑い声を上げた。

 本当、見た目は小さくなってより可愛くなったのに、色々と台無しだ。


「ウチがなったのはな、《鍛冶師》や!!」


「へ~、《鍛冶師》かぁ」


 どやぁ! と胸を張りながら宣言されたナナちゃんの職業に、私は深い納得感と共に頷いた。

 ナナちゃんって割と猪突猛進タイプだし、ATKが全職最高で前衛最高火力を叩き出せる鍛冶師は、確かに似合うかもしれない。


「そいでな、ウチがやりたいのはこれやねん」


「うん?」


 それに続いて、ナナちゃんはメニューを操作すると、一つの動画を私に見せてきた。

 そこに映っていたのは、一人のプレイヤー。それが、《東の平原》のフィールドボス、ヒュージスライムと対峙していた。


 身に纏うは、やたらと刺々しい金属鎧。

 そして、お兄が普段使っている物よりも大きめの槍を両手で構え、ヒュージスライム目掛け一直線に突き進む。


『《大旋風》!!』


 最近はユリアちゃんを見慣れてるせいかもしれないけど、ややノロノロとした動きで接近すると、動画内のプレイヤーは槍を振り被り、そのままアーツを繰り出した。

 両手で槍を握ったまま、体ごと回転するようにヒュージスライムを薙ぎ払い、即座に強烈な突きを放つ。

 ヒュージスライムはDEFが物凄く高くて、魔法攻撃じゃないとダメージは十分に通らないはずなのに、アーツ一つでそのHPをガクンと大きく削り取り、ノックバックが発生した。


『《大天空》!!』


 隙を見せたHPヒュージスライムを前に更にアーツを繋げ、槍を上方へ向けて突き上げた後自らも跳び上がったかと思えば、下方に捉えたヒュージスライム目掛け嵐のような連続攻撃を繰り出す。

 さっきのも含めて、お兄が一度も使ってるのを見たことがないアーツだ。

 アーツ自体も両手で繰り出してるし、同じ《槍》スキルでも、お兄とは別の派生へ進んだ上位スキルなのかもしれない。みるみるうちにヒュージスライムのHPが失われていき、瞬く間に残り半分を割り込む。


 ただ、その次に繰り出されたアーツは、流石に少し別物な気がした。


『これで、トドメだ!! 《界穿牙槍撃》!!』


 動画内のプレイヤーが、手にした槍を片手に持ち直し、ぐぐぐっと空中に留まったまま振り被る。

 ただ、その構えが、これまでと違っておかしい。これじゃあまるで……。


「……はい?」


 槍を投げ飛ばそうとしてるみたいだ。


 そう思った直後、眩い光を放つ槍がプレイヤーの腕から解き放たれ、ヒュージスライムの巨大な体を貫くと同時、業火となって辺りを包み、大爆発を引き起こす。

 まるで、光の柱と共に隕石でも降って来たかのような、そんな派手な演出と共に叩きつけられたアーツによって、まだ4割程残っていたはずのヒュージスライムのHPは全て消し飛び、ポリゴン片となって砕け散った。

 そうして槍を失い、けれどボスを瞬殺したことで清々しい笑顔を浮かべたプレイヤーが、ぐっと親指を立てながら白い歯を見せたところで、動画は終わっていた。


「どや、凄いやろこれ!」


「いや、うん、凄いけども」


 初めてヒュージスライムと戦った時と比べて、私もライムも随分強くなったし、新しいモンスター達もたくさんいる。今なら、ソロ討伐するのもさほど難しくはないと思う。

 ただ、こんな風にあっという間に、しかもド派手なエフェクトを撒き散らしながら倒すのは到底無理だ。

 単にエフェクトって言うなら、以前ネスちゃんに、魔術師による低レベルソロ討伐の様子を動画で見せて貰ったことがあるけど……エフェクトはともかく、倒しきるまでに必要なMPが足りないこともあってか、足元に並べられた《初心者用MPポーション》をひたすら自分にかけ続ける必要があって、なんというか、ちょっとシュールな絵面だった覚えがある。


 流石にこれは、レベル差によるゴリ押しもあるだろうから、あの時のネスちゃんのやり方と比べるのは良くないだろうけど、それにしても随分とカッコイイのは確かだ。


 ただ……問題は、これをやりがってるのが初心者のナナちゃんってことだ。


「その、これを実現するには、かなりレベル上げなきゃダメだと思うんだけど……」


 一応、動画の説明文に、今回使用されたスキルの一覧と、装備のスペックが載っていた。

 職業は《鍛冶師》がメインでサブが《戦士》。スキル構成は、《槍》《長槍》《突撃槍》《筋力強化》《狂化》《投擲》《投槍》《背水》《炎属性強化》。

 《長槍》は《槍》の上位スキルだし、《突撃槍》も多分、名前からして更にもう一つ上の上位のスキル。加えて、《狂化》は《筋力強化》の上位スキルで、《投槍》だって《投擲》の上位スキルと、上位スキルのオンパレードだ。

 とても、今日明日で習得しきれるものじゃない。というか、私だって未だに《魔封鞭》スキルで止まってて、その更に上のスキルは習得出来てないし。


 加えて、使用された装備も、性能はATK+50、追加効果は炎属性攻撃という、前のイベントの時にリッジ君にプレゼントした刀よりは劣るものの、決して安くはないだろう武器。これを、《投槍》スキルで使い捨てにしてやっと発揮されたのが、さっきの超火力コンボになる。

 つまり、このレベルの武器を気軽に使い捨てれるほどの資金力が無きゃどうしようもない。


 そういったことを、私なりに分かりやすく、ナナちゃんに説明してみたんだけど……。


「何を言っとるねん! 苦労を嫌ってロマンを捨てたら、何のためにゲームしとるか分からんやろ! ミオ、ウチはやったるでー!」


「あはは……まあ、そういうことなら、頑張れ。私も出来るだけ手伝うよ」


 最初からこうなることは分かってたけど、それでも、何とも大変そうな道を選んだものだ、とは思う。

 けど、私だって最初はお兄に似たような忠告をされながら、それでもミニスライムを育てて強くなる道を選んでここまで来たんだから、人のことは言えない。むしろ、親近感を覚えるくらいだ。


 当時の事を思い出して、ふと懐かしさを覚えた私は、今も膝の上で触手を伸ばし、フライドポテトを頬張るライムを見て微笑みながら、その体を優しく撫でた。


「ふっふっふ、ミオならそう言ってくれると思っとったで! ほな早速、レベリング手伝ってくれるか?」


「うん、もちろん」


 ナナちゃんに促された私は、ライム達がテーブルの上の物を全部食べ終わったのを確認すると、席を立って支払いを済ませる。

 待ち切れないとばかりに私を急かすナナちゃんを見て、私を見るお兄もこんな気持ちだったのかな? なんてことを考えながら、店を後にするのだった。

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