第130話 クジパンと冒険者の街
作者もまだ正確な発売日を聞いていないのに、いつの間にかアマゾンで予約が始まっている……これは宣伝してもいいということなのだろうか……(;^ω^)
あ、テイマーさん第二巻、発売決定しました。詳細は後日。
MWOにログインした私は、ついこの前……フィールドボスのゴブリンキングをみんなで倒したことで行き来が出来るようになった、冒険者の街《ラビリンス》へとやって来た。
冒険者の街と言うだけあって、街を歩くNPCにも武器や防具を身に付けた人が多く、景観よりも機能性やコストを重視したような、武骨な作りの家や宿屋が多いのは、短杖を作って貰うためにウルやパパベアーさんと何度も訪れた、《バルロック》の街並みを思い起こさせる。
冒険者相手の武器防具や消耗品、保存食を扱うお店が軒を連ね、酒場からは男達の騒がしい声が聞こえてくる、喧噪と活気に溢れた街だけど、ここの最大の特徴は街じゃない。
街の、なんとど真ん中から入ることが出来る、広大な地下ダンジョン。それが、この街最大の売りであり、多くのプレイヤーが訪れる理由にもなってる。
地下に10階層降りるごとにフロアボスがいて、最下層が何階かはまだ分かってないらしい。お兄曰く、プレイヤーの進捗に合わせて順次解放していくんじゃないかとのこと。
ダンジョン全体の特徴としては、経験値的にはあまり美味しくないけど、換金性の高いドロップアイテムや宝箱が多く出るから、金策に凄い良いらしい。ただ、かなり高難易度らしいから、いくら金欠気味だからって私が通うにはちょっと早いと思うけど。
そんな、ダンジョンで賑わう街に、私はフウちゃんやユリアちゃんを伴って、カボチャ探しにやって来た。
戦闘でもなければ、何かのクエストってわけでもないことに何でこの2人が付いてきたかと言えば、カボチャが手に入って料理を作った時、真っ先に試食する権利が欲しいらしい。
……私、中学生としては料理上手な部類ではあっても、特別絶品料理を作れる腕があるわけでもないのに、なんでそんなに食べたがるんだろう。
そう思ったから直接聞いてみると、こんな答えが返って来た。
「ミオの作った料理なら、なんでも食べたい」
「そ、そう」
私が《魔力強化》スキルのレベリングを兼ねて呼び出した、フレアスライムのバクを抱きながら、ユリアちゃんがそう言い切る。
……喜べばいいのかな? いやうん、ユリアちゃんが私に懐いてくれてるのは分かるんだけど、こう、ゲテモノでもなんでも、食べてみせる! みたいな覚悟の籠った眼で見られると、実は私って料理下手だったんじゃないかと心配になる。
だ、大丈夫だよね? 私、知らず知らずのうちに変な物みんなに食べさせてないよね?
「まあ、先輩のリアルでの自己評価は、この際横に置いておくとして~、少なくとも、このゲーム内で、先輩以上の《料理人》はそうそういないと思いますよ~?」
一方、いつものようにムーちゃんの背中に、まるで荷物か何かのようにうつ伏せで乗っかったフウちゃんは、意外……って言ったらあれだけど、かなり真っ当な理由を口にした。
でも、私以上の料理人はいないって、持ち上げ過ぎじゃない?
「そう? 《料理》スキルを習得する人は結構いるって聞いたけど」
《料理》スキルで作ったアイテムは、《調合》スキルで作ったアイテムと違って、今のところは特に追加効果も何もない。
それだけ聞くと、戦闘で何の意味もない不遇スキルって印象を受けるんだけど、実のところ、ガチプレイヤーにとっては、乱獲したモンスターの素材を《携帯食料》に作り変えることで、街に戻ることなく延々フィールドにキャンプし続けてレベリング出来るようになるスキルってことで、パーティに1人くらいはまず間違いなく習得してる人がいるらしい。
一応私も、最近《料理》スキルが50レベルに達して上位スキルの《料理人》になったけど、それくらいなら他にも結構いるんじゃないかな?
「そうでなくて~、料理に新しい追加効果が出ないか検証したり、満腹度ゲージをお手軽に回復させる手段として使ってる人はいても、本当に味を良くするために料理をしまくる人はあんまりいないって話ですよ~。……ましてや、そんなプレイヤーからタダで料理を作って貰う機会なんて、普通はまずありません~」
「フウちゃん、最後本音漏れてる」
私の指摘に、てへぺろ~、なんて舌を出すフウちゃんにやれやれと溜息を吐く。
けど実際、一緒に探して貰えるのはありがたいから、試食の権利くらいなら別に構わない。人の意見も欲しいしね。
そう思ったら、いつもの特等席、私の腕の中から顔を覗かせたライムが、僕も僕もと言わんばかりに体を震わせた。
うん、ライムにも食べさせてあげるから大丈夫だよ。ライムが好きな味になるように、いっぱい試作してあげるから。
「それにしても……肝心のカボチャがないね」
「ないですね~」
「ん、ない」
とりあえず、表通りのお店はざっと見て回ったけど、それらしいものは全く見当たらない。
うーん、やっぱり冒険者の街で探すのは無理があったかな?
「そもそも、この街で食材を探すっていうのが無理あったんじゃないですかね~?」
あっ、フウちゃんにまで言われた。
実際、この街って食べ物を売ってるお店は多いけど、そのほとんどが調理済みの物を売る屋台とかばっかりで、食材そのものを売るお店ってほぼないんだよね。
けど……。
「だって、私が行ける範囲で残ってる街が、ここしかなかったんだもん」
一応、プレイヤーに解放済みの街は、私がこれまで行ったことのある街以外にもある。
この間、ネスちゃんやリッジ君と《バルロック》に向かうために攻略した《ゴスト洞窟》の先にある、《白虎の氷窟》を抜けると辿り着ける、極寒の街《クリアローズ》とか。
《南の湿地》のフィールドボスを倒すと行けるようになる、港町《アクアブリーゼ》とか。
ただ、《クリアローズ》は今の私にはちょっと難易度高いんだよね……うーん、《アクアブリーゼ》なら私でも行けるだろうし、今度時間を見つけて挑戦してみようかな?
「アクアブリーゼでも、カボチャは見覚えがない。見落としただけかもしれないけど……もしかしたら、イベントと同時実装されるのかも」
「うーん、そっかぁ」
ユリアちゃんは、私と違ってアクアブリーゼにも辿り着いてるようで、そんな情報を伝えてくれる。
だとすると、変にカボチャを探すより、今はイベントに備えてアイテム作りしたり、あるいはカボチャを使わないメニューを考えた方がいいかなぁ。
「だー、だー!」
「フローラ、どうしたの? それ食べたいのー?」
そんなことを考えながら歩いてると、フウちゃんの新しい使役モンスター、グリフォンのグーたんに騎乗しながら私達の後ろを付いて来ていたフローラが、声を上げて近くの屋台に手を伸ばした。
はしゃぎ過ぎてグーたんの背中からずり落ちそうになったところを、すかさずフララが捕まえてフォローしてあげてる。可愛い。
「メロンパン……フローラ、これメロンって書いてあるけど、メロンとは違うよ?」
そして、フローラが食べたがった屋台の売り物は、メロンパンだった。
パンって、売店ではよく見るけど屋台で売るものだっけ? いや、お祭り以外の屋台ってあまり見ないから、意外とそういうものなのかもしれないけどさ。
「だーっ」
「あはは、分かった、買ってあげるね。んー、せっかくだから私も何か買おうかな? ライム達も食べる?」
「――!」
「ピィ!」
ライムとフララの元気の良い返事を聞いて微笑みながら、改めて屋台の方へ目を向ける。
屋台で売ってるパンは、メロンパン以外にも色々と置いてあった。
カレーパン、焼きそばパン、ピザパンにホットドッグと、本当に学校の売店みたい。
自分でスキルを使って作る料理と違って、こういうNPCショップで買う料理は、大体見た目や名前通りの味がするから外れがないのがいいところ。結構リアル遵守の味してるからね。
うーん、どれにしようかな……。
「あー、ずるいです、先輩、私も~」
「フウちゃんは自分で買いなさい」
「ぶ~、仕方ないですね~」
「ん、私も買う」
結局、少し歩き疲れていたのもあって、みんなでパンを買って一休みすることになった。
悩んだ末に、ライムにはカレーパンを、フララにはジャムパンを買ってあげた。
後、今は外に出てない、ビートやクロル、他のスライム達のためにも、クリームパンやら何やら、とりあえず買えるだけ買ってみた。
フウちゃんも、ムーちゃんとグーたんに、大きめのホットドッグを1つずつ。
それからユリアちゃんも、うちのバクに自分で食べさせてみたいって、焼きそばパンを買ったみたい。一応うちの子だから、お金は私が持とうとしたんだけど、それも含めてやりたいって譲らなかった。
そして、私達自身の分のパンはと言うと。
「別に、2人まで私に付き合ってこれにすることなかったのに」
ある意味ゲームらしい、どんな味がするか実際に食べてみるまで一切分からないというパン……クジパンだった。
単純に、何を食べようか迷ったのもあるけど、風の噂(お兄から聞いた)では「NPC売りの食べ物の癖に9割ゲテモノ」なんて評価のクジパンが果たしてどんなものなのか、怖い物見たさ(食べたさ?)で買ってみただけだから、まさかユリアちゃんやフウちゃんまでこれを買うとは思わなかった。
「ミオと一緒のがいい」
「ここで私だけ買わなかったら負けかな~と」
ユリアちゃん、別に無理に合わせなくても……あと、別に勝ち負けはないと思う。
「まあいっか、それじゃあ、いただきまーす」
もう買っちゃったんだし、なるようになるか。
そう思って、ひとまず手を合わせて食べることに。
「見た目も匂いも、触った感じも普通のコッペパンだけど……」
食べるその瞬間まで、どんな味か誰も分からないって聞いてたけど、これは確かに分からない。どこからどう見てもただのコッペパンだし。
そう思いながら、まずは一口と齧りつく。
「……なにこれ」
まず口をついて出たのは、そんな感想だった。
触った感じとは全く違い、ぷにぷにとしたこんにゃくみたいな食感。
鼻へ突き抜ける香ばしい匂いは、まさにカレーそのもの。
それなのに、口の中に広がるのは、刺激的なキムチ味。
食感と匂いと味が一致しない、けど不味いかと言われると別にそうでもない、ただひたすらに困惑する、そんなある意味ゲテモノなパン(?)がここにあった。
「先輩、どんな味だったんですか~?」
「……名付けるなら、カレー風キムチこんにゃく、かな?」
「パンの要素はどこへ消えたんですか~?」
「いや、そうとしか言えないんだもん」
ムーちゃんとグーたんにホットドッグを食べさせてあげてる最中のフウちゃんの口元に、食べてみて、と差し出す。
体の大きなモンスター2体がペロリと一口で完食する中、テイマーのフウちゃんが小さな口でちょっとだけ齧ってモグモグする姿はなんとも好対照だ。
そして、ムーちゃんはパンの1つじゃ物足りないとばかりに鼻を鳴らし、グーたんは意外と満足そうに小さく鳴く。その一方で、フウちゃんはスッと表情が消えた。
うん、見事にバラバラな反応。見てて中々楽しいパーティだよね、フウちゃんのところは。
「……なんでこんな食べ物が成立してるんでしょう~?」
「さあ、ゲームだからじゃない?」
物欲しそうな顔をするライムに、カレーパンと、クジパン改めカレー風キムチこんにゃくを食べさせてあげながら、しみじみと呟くフウちゃんにそう答える。
正直、リアルでもゲーム内でも、同じ物を作ろうとしたって絶対無理だと思う。
だからライム、そんな「結構気に入った」みたいな顔されても、もうこれ以上用意出来ないからね? カレーパンで我慢してね?
「それじゃあ、次は私のを食べてみますね~」
気付けば、ライムと同じような目で私の方をじーっと見ていたユリアちゃんに、カレー風キムチこんにゃくの最後の一口を食べさせてあげていると、フウちゃんが自分のクジパンを一口齧った。
「微妙」という簡潔な感想を呟くユリアちゃんを撫でながら、フウちゃんの感想をドキドキしつつ待っていると、意外にも明るい表情で口を開いた。
「ハンバーガーですね~、これは。食感まで完璧にハンバーガーです~」
「……コッペパンなのに?」
「見た目も中身もコッペパンなのに、味も食感もハンバーガーです~。それも、チーズ入りチキンフィッシュバーガーですね~。上段がフィッシュカツで下段がチキンカツです~」
「細かい、細かいよ、なんでそんな細かいところまで分かるの!?」
「なんとなくですよ~」
試しに私も一口貰うと、確かにハンバーガーだということは分かるし、フィッシュっぽい味も混ざってるけど、チーズ入りだの上段下段だのはさっぱり分からない。フウちゃんの舌はどうなってるの?
「えへへ……」
そんなやり取りを交わす私の隣では、ユリアちゃんが焼きそばパンを手でちぎりながら、バクに食べさせてあげていた。
その赤いぷるぷるボディが嬉しそうに揺れるのに合わせ、ユリアちゃんの表情もまた柔らかく緩み、ほのぼのとした空気が漂う。
うん、尊い。
「ユリアもこれ、食べませんか~? 先輩のはともかく、これは結構美味しいですよ~」
そんな光景を見てフウちゃんも和んだのか、珍しく積極的に交流を図りに動いていた。
差し出されたコッペパンモドキを見て、ユリアちゃんは少しだけ逡巡するも、意を決したように口を開け、そのままパクリと齧りついた。
「どうですか~?」
「……美味しい」
「それは良かったです~」
のんびりとした雰囲気のフウちゃんが混じり、より一層その場の空気が和む。
いっそスクリーンショットでも取って保存しておきたい光景だけど、フレンド設定でSS許可っていうのをして貰わないとプレイヤーの写真は撮れないから、今は諦めるしかない。ぐぬぬ、次の機会のためにもその辺り後で頼んでおこう。
代わりに、メロンパンからメロンの味がしないことに首を傾げつつも、まあ美味しいからいいかとばかりに口いっぱいに頬張るフローラの姿を撮影しておく。
こっちはこっちで可愛い。和む。
「最後はユリアちゃんのパンだね。どんな味かな?」
「これまで、ゲテモノというよりカオスなパンでしたからね~。何が来てもおかしくありません~」
私達に促され、ユリアちゃんもまたこくりと頷くと、特に躊躇うことなくパクリと口に放り込む。
もぐ、もぐとゆっくり咀嚼するユリアちゃんを眺めながら、じっとその感想を待つ。
周囲の喧噪に紛れ、フララがジャムパンから中身のジャム……どころか、パンごとその細い口で吸い上げる音を聞きながら、ユリアちゃんを見つめ続ける。
ていうかフララ、パンは飲み物じゃないからね? そこのところ間違えてない? 大丈夫?
「……美味しい」
そうして溜めに溜めた末、ようやく口を開いたユリアちゃんの簡潔過ぎる感想に、私もフウちゃんもガクッとずっこけそうになった。
「え、えっと、どんな味だった? というか、どんな食べ物だったの?」
「……パフェ?」
「まさかのデザート!?」
本当にどうなってるんだろう、このパン。物凄く運が良ければ、クジパンだけで高級料理フルコースとか出て来たりするのかな?
……逆に、いつも運の悪いお兄が何を引いたのか気になって来た。今度聞いてみようかな。
「ていうか、結局最初に食べた私が一番外れクジだったね……」
フウちゃんはチーズ入りフィッシュチキンバーガー、ユリアちゃんはパフェ。一方の私はカレー風キムチこんにゃく(?)。
この圧倒的敗北感よ……。
「ミオ、その、食べる……?」
「うぅ、ありがとうユリアちゃん。一口だけ貰うね」
ユリアちゃんから差し出されたクジパンを、一口だけ齧る。
その途端、見た目からは想像も付かない冷たさと柔らかさを発揮しながら蕩け、まろやかな甘みが口いっぱいに広がった。
うん、パフェ。ないしアイスクリームで間違いない。
「ど、どう……?」
「うん、美味しい」
「えへへ……」
にこりと笑顔を向けると、ユリアちゃんは照れたようにはにかみながら、小さくクジパンを齧り始める。
そんな仕草を見て、可愛いなぁ、なんて思いつつにこにこしていると、そんな私達を見ていたフウちゃんが、ポツリと。
「美少女2人、アイスをあーんして照れたり微笑んだり、凄く絵になる光景ですね~。……見た目がコッペパンでなければ~」
「フウちゃん、それは言わないお約束」
そんなツッコミを受けながら、ビートやクロル、ムギ達も順番に呼び出し、クリームパンを食べさせていく。
ビートやムギ達には好感触だったけど、クロルの反応は何だかイマイチだった。
うーん、鉱石とか食べて生活してるモンスターだし、歯ごたえある食べ物の方が良かったりするのかな? 今度試してみよう。
そんなことを考えながら、まったりと餌やりをしていると、ふと、さっきお兄と交わしていたやり取りを思い出した。
「そういえばユリアちゃん、リアルではどの辺りに住んでるの?」
「ぶっ」
私が尋ねた途端、ユリアちゃんは口に含んでいたクジパンを噴き出した。
そ、そんなに驚くこと聞いたかな?
「そ、それは……えと、なんで?」
「いや、もし近くなら、もうすぐうちのお兄の学校で文化祭あるし、一緒に回ってみるのもいいかなーって。オフ会みたいな?」
もちろん無理にとは言わないけど、と言いながら、お兄の高校の名前と場所を伝えると、ユリアちゃんは慌ただしく視線を彷徨わせる。
やっぱり遠いのかと最初は思ったけど、これだけ悩んでるってことはそうでもないのかな?
「え、えっと……兄と相談してみる」
「うん、分かった。そんなに難しく考えなくていいから、無理そうなら言ってね?」
「う、うん」
ユリアちゃんの性格的に、これくらい念を押しておかないと、無理って言われた時に変に思い詰めちゃうかもしれないし。
そう思いながら伝えると、今度は反対側からフウちゃんがもたれかかってきた。
「先輩~、私は誘ってくれないんですか~?」
「えっ、フウちゃん来るの?」
てっきり、こういうイベントは面倒臭がると思ってたんだけど。
「ぶ~、私だってお祭りを楽しむ童心くらい持ち合わせてますよ~? ましてや、オフ会なんてやったことありませんし、興味あります~」
「なるほど……じゃあ、フウちゃんも来る?」
「は~い、行きます~」
もたれかかったまま、嬉しそうに笑うフウちゃんに苦笑する。
うん、帰ったら、お兄にチケット用意しておいて貰わないとなぁ。ユリアちゃんは未定だけど、余ったからって損するわけでもないし。
あとはネスちゃんも誘ってみたいけど……あ、どうせだから、リッジ君から誘って貰おうかな? そっちの方がネスちゃんも喜びそうだし。
そんなことを考えていたら、いい加減待ちくたびれたのか、ライム達がぽよぽよと擦り寄って来て、その存在をアピールし始めた。
「あはは、分かった、それじゃあ、そろそろ行こうか?」
「ん」
「は~い」
小休止を終えた私達は、そのままカボチャ探しを再開したけれど、その日は私が外食のために早めにログアウトしたこともあってか、結局見つけられなかった。
ちなみに、私は大丈夫だったけど、あれだけ言ってたお兄は、MWOに夢中になってて時間になっても起きて来なかったから、私が再ログインして呼びに行くハメになった。
やれやれだよ、全くもう。