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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第六章 アップデートとクエストボス
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第121話 新スライムと第三階層

 お昼を周り、美鈴姉の手料理を食べた私は、MWOにログインするなり、早速ウルの下へと向かい、お兄に描いて貰ったイラストを渡して、それを元にライム達の装備が決定した。

 とは言え、あくまでどういうのを作るか決まっただけで、肝心の素材がない。というわけで、今日も今日とて採掘へ向かう。


「さーて、今日は《採掘場》第三階層まで行くよ!」


「おー!」


 ウルの掛け声に合わせて、拳を振り上げる。


 昨日、私達が合金を作ったり、レベリングしたりしてるうちに攻略が進んだらしくて、私達が足を踏み入れた第二階層よりも深い部分も、既に情報は公開されてるらしい。

 それによると、最下層がどこにあるかは、まだ不明。というか、第五階層にいるボスを倒した後、第六階層への道は開けたけど、その先はモンスターが強すぎて進めなかったんだって。

 そして、その第五階層までに存在する採掘ポイントにおいて、《イデオン鉱石》や《紅火結晶》、《粘着岩》や宝石系アイテム以外に新しい鉱石は無かったらしい。

 先立って攻略した人達が、採掘ポイント全てを回って1つも採れないような激レア鉱石が存在する可能性はまだあるけど……流石にそこまでレアな鉱石だと、武器一本作るのにどれだけかかるか分かったもんじゃないから、ひとまず考えなくていいとのこと。


 そういうわけで、炎属性武器が作れる《紅火結晶》以外で、恐らく今回の目玉であろう《イデオン鉱石》だけど、これを集めるなら第三階層で掘るのが一番良いんじゃないかと言われてるらしい。

 理由としては、まず第五階層はボス部屋になっていて、そもそも採掘ポイントが存在しない。

 第四階層は、天井だろうと壁だろうと関係なく這い回り、あり得ないくらい素早く襲い掛かってくる凶悪な蛇型モンスター、ダークネスマンバが出没するせいで、採掘どころじゃないらしい。第二階層みたいなものだね。

 そういうわけで、採掘ポイントの数が第二階層より多く、第四階層ほど厄介なモンスターがいない第三階層が、採掘目的なら一番良いんだって。


「ユリアちゃん、今日もよろしくね。パパベアーさんもよろしくお願いします」


「ん、任せて」


「任せておけ。しかし、嬢ちゃん」


「はい?」


 情報の確認が終わったところで、頼もしい護衛2人(パパベアーさんは採掘もするけど)に挨拶しつつ、さて出発だと一歩踏み出したところで、パパベアーさんに呼び止められた。

 何だろう、と思いながら振り返ると、パパベアーさんは何とも複雑な表情で、私の足元に視線を向けていた。


「……その急に増えたスライムは一体?」


「ああ、この子ですか」


 私の足元には、ライムに続くようにポヨポヨと元気に跳ね回る、一体のスライム――ミニスライム隊一のしっかり者、ムギの姿があった。

 そういえば、紹介してなかったっけと思いつつ、ムギの紹介と、《魔力強化》スキルのレベリングのために、出しっぱなしにしていることの説明を、ウルとパパベアーさんに行う。


「なるほど、それは分かったけど……」


「けど?」


「……ミニスライムと言うには、色が違わない?」


 バレたか。いや、見た目から違うんだから、バレたも何もないんだけど。

 そうやって心の中で1人ボケツッコミをしつつ、特に勿体ぶるような話でもないから、改めて説明を続けた。


「あはは、ごめんごめん。実はこの子、ここに来る前に《合成》して、少し別の種族に変化させたところだったんだよね」


 元々、ミニスライムは透明感のある青っぽい色合いのモンスターだったけど、今連れているムギの体色は、黄色に変化していた。

 元々ミニスライム隊は、たくさん召喚することで、《酸液》スキルの持つ、相手の防御性能を無視した固定ダメージっていう特徴を活かすことが目的の1つだった。

 でも、今回のアップデートによって、その手段が全く取れないってことはないにしろ、少し厳しくなったのは確かだ。

 だからこそ、ミニスライム隊の新たな活躍の場を見出そうと思って、他の子に先立ってムギを強化したのだ。



名前:ムギ

種族:サンドスライム

召喚コスト:57

HP:94/94

MP:57/57

ATK:42

DEF:78

AGI:37

INT:48

MIND:52

DEX:55

スキル:《泥液(でいえき)Lv1》《収納Lv8》《悪食Lv20》《穴掘りLv1》《防御強化Lv1》



 ムギに《合成》したのは、《採掘場》第二階層で戦った、マインワームの核石だ。

 地面に潜ることによる高い奇襲性と、ユリアちゃんの攻撃でも一撃では沈まないしぶとさを発揮出来れば、最近は私の専属護衛みたいな感じになってるライムの代わりに、敵モンスターに張り付いてアイテムを使ったり《酸液》を発動したりっていう、ゲーム開始直後によくやっていた事をやって貰えないかと思って強化した。

 結果、それらしいスキルは獲得出来たんだけど、やっぱりステータスがちょっと低くて、しぶとさの方はあまり期待できそうにない。

 《防御強化》のレベルが上がれば、ボスはともかく普通の雑魚モンスター相手ならある程度耐えてくれると思うんだけど、今のままじゃ厳しいかなぁ。

 まあ、《穴掘り》スキルは予定通りだし、まずはそっちに期待かな? 《泥液》スキルは、説明文を読む限り、《酸液》スキルの地属性バージョンみたいだけど……。


「ん……」


 そんな風に紹介している間、ユリアちゃんはムギの体を指で突いて、一緒に遊んでいた。

 実のところ、今日も今日とてユリアちゃんは私のログインを待ち構えていたようで、いつものように私のホーム内で寛いでいたフウちゃんと一緒に、この子を《合成》で強化する場面を目撃しているんだけど、どうやらその時以来、サンドスライムの、砂浜のようなサラサラとした質感が癖になったらしい。


 ちなみに、フウちゃんは何か他に予定があるとかでついて来なかったけど……何の用事だろう?

 まあ、それは気にしても仕方ないか。


「さて、それじゃあメンバーの確認も終わったことだし、早速《採掘場》行こうか」


「うん」


 フウちゃんのことについては横に置き、微妙に名残惜しそうな顔をするユリアちゃんにはそのままムギのことを抱かせてあげながら、《採掘場》へ足を踏み入れる。

 一昨日に一度入ってるから、第一階層は特に何事もなく素通りだ。例の如くパパベアーさんを見たプレイヤーがギョッと目を剥いたり……心なしか、その一部の視線が私に向いていた気もするけど、気のせいだよね? あんな風にビビられる要素なんて、私のどこにもないし。

 それに、今回はどっちかというと、ムギを抱いて仄かに笑顔を浮かべるユリアちゃんの尊さに見惚れる人の方が多かった。

 ユリアちゃん可愛いから、仕方ないね。私もこの機会にいっぱい拝んでおこう。


「さて、第二階層だけど……」


「第三階層の方が楽だったらしいから、今日は一気に駆け抜けようか」


「あ、はい」


 うん。

 せっかくここの第二階層で効率よく採掘するために、《感知ポーション》なんて作ったけど、無駄になったっぽい。

 ま、まあ、アイテムを使わずとも楽に採掘出来るなら、そっちの方がいいしね。だからうん、別に悲しくなんてないよ? 本当だよ?


 そんな風に、少しばかり目から汗を流しながら、続く第二階層も踏破する。

 採掘しようとすると、音に反応して襲ってきて厄介だけど、ただ走り抜けるだけなら、立ち止まらない限り攻撃を受ける心配もほとんどないし、結構楽だ。


 そして辿り着いた第三階層は、これまでと違って灯りもない、完全な廃坑と化していた。

 けれど、それは視界が塞がれるということとイコールではない。なぜならこの第三階層、壁の至る所から《ヒカリゴケ》らしき物が生えていたり、あるいは水晶みたいな塊が飛び出して発光していたりと、思った以上に光で満たされていたからだ。

 これなら、何かに躓いて転ぶなんていう間抜けな事態にならないで済むね。そもそもゲームだから、坑道の中でも躓くような石は転がってないんだけど。

 いつだったかの洞窟みたいに、採掘して、自分から《石ころ》をばら撒かない限りは。


「それで、ここはどんなモンスターが出るのかな?」


「ああ、それは……」


 ウルが言い終わるよりも先に、洞窟の奥から1体のモンスターが姿を現す。

 まず目に付くのは、その背中と頭頂部から生やす無数の針。どれも、武骨でありながら金属らしい綺麗な光沢と頑丈さを醸し出すそれは、以前イベントで見たクリスタル系統のモンスター同様非常に硬そうで、下手な槍で貫かれるよりダメージは大きそうだ。

 そんな見るからに凶悪で綺麗な針に守られた体の方は黒っぽい毛に覆われ、パっと見だけなら凄く大きくなったヤマアラシにも見える。

 円らで愛らしい瞳の奥に、私達に対する明確な敵意を宿すそのモンスターの名前は、イワアラシ。

 “岩”を生やした“ヤマアラシ”だからイワアラシってことかな? どっちかというと鉱石っぽいけど。


「出てきたね。ここに出没するモンスターは、あのイワアラシと、ロックゴーレムだけらしいんだ。イワアラシは厄介だけど、一度倒せば再出現(リポップ)が遅いし、ロックゴーレムは動きが遅いから採掘中の護衛もしやすいってことで、この第三階層は採掘向きエリアって言われてるみたいだよ」


 私に向かって、そうやってウルが優しく説明してくれるけど、私の目はイワアラシに釘付けだった。

 警戒するように針を擦り合わせ威嚇する姿は、私が動物園で見たまったりとリラックスした姿とはまた違った可愛さと、何より迫力がある。

 欲しい、是非とも欲しい。


「ウル、決めたよ」


「決めたって何を?」


 私の言葉に首を傾げるウルに向け、私は満面の笑みを浮かべ、宣言した。


「あの子を倒して、うちの召喚モンスター(ペット)にする!」

叩きのめして仲間にするって、定番ですけど冷静に考えると凄いことやってますよね……(汗

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