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テイマーさんのVRMMO育成日誌  作者: ジャジャ丸
第六章 アップデートとクエストボス
116/191

第116話 宿題と新作アイテム

新年あけましておめでとうございます。

今年もテイマーさんをよろしくお願いします!(^^)v


そして明後日はついにテイマーさん第一巻の正式発売日です。見かけた方は是非……。

「うぅ、宿題が終わらない……!」


 学校から帰った私は、終わりの見えない宿題に頭を抱えながら、テーブルに突っ伏した。


「そりゃあもう、そんな状態じゃ宿題なんて捗るわけないじゃないですか~」


「くぅ、まさかフウちゃんに真っ当なこと言われるなんて……!」


「先輩、それどういう意味ですか~?」


 私のホームに持ち込まれた……正確に言うなら、私にトレードで押し付けてフウちゃん専用として設置するように言われた《快眠ベッド》の上でゴロゴロとミニスライム達と戯れながら、フウちゃんがジト目で抗議の視線を送ってくる。


 この《快眠ベッド》、イベントが終わってすぐに設置されたけど、その頃はフウちゃんが宿題に追われて使えなかったから、もっぱらミニスライム達の休憩所として使われていた。

 そのせいか、フウちゃんがここでぐうたらするようになってからも、ミニスライム達が自然と集まってきて、フウちゃんを埋もれさせる光景がよく目に付くように。

 羨ましい、そこ代わって。


 とまあ、そんな具合に、どうせ宿題するならと私はMWOにINしてるわけだけど、周りに愛しのモンスター達がいるわ、フウちゃんが見るからに快適そうな昼寝(もうリアルでは夕方だけど)を満喫してるわで気が散って、まるで捗らなかった。

 やっぱり人間、可愛いペットの誘惑には勝てないんだね、また私は1つ学んだよ。


「というわけで、宿題は諦めてお世話しよう。ほーらフローラ、おいで~」


「だーっ!」


「こうして人はダメな大人になっていくんですね~」


 フウちゃんが何やらしみじみと呟いてるのはスルーして、寄ってきたフローラを抱き上げる。

 いいんだよ、本来出されるはずだった分の宿題はもう終わってるし、残りは寝る前にでも片付けられるから。多分。


「だー……」


「あっ、フローラ? ちょっと待って今出すから……ふにゃあああ!?」


 フローラの切なげな声に危機感を覚えた私は、急いでインベントリからフローラの好物を取り出そうとするんだけど、一歩遅く。私の胸に思いっきり噛みつかれた。


「おお~、先輩、まだ彼氏もいないのに、もうそんなプレイまで習得済みとは、流石ですね~」


「それただの勘違いだし、どこが流石なのかさっぱり分かんないんだけど!?」


 フローラは、産まれて最初に食べたからか、メロンが凄く大好物だ。

 そのせいなのかは分からないけど、お腹が空くと私の胸がメロンに見えるらしく、抱っこすると大喜びで噛みついてくる癖がついた。

 それ自体は凄く可愛いんだけど、でも、せめて胸はやめて! 変な声出ちゃうから!!


「だーだー♪」


「ふぅ、酷い目に遭った……」


 噛まれながらも、何とかインベントリから特製メロンジュースを取り出してフローラに上げると、ようやく口をそちらに向けてくれた。

 美味しそうにジュースを飲むアルラウネの赤ちゃん、うへへ、可愛い。


「先輩、酷い目に遭ったと言いつつ、顔が酷いことになってますよ~? やっぱり先輩はああいうプレイが……」


「違うから、これはそういう意味の顔じゃないから!」


 フウちゃんが若干引き気味にそう口にして、慌てて私は否定する。

 流石に胸を噛まれて喜ぶなんて変態的な趣味は持ち合わせてない。そういうのは特殊なお店でやって。


「ミオ、そういうの好きなの……? じゃ、じゃあ、私もやった方が……!」


「ユリアちゃん待って、モンスターならともかく、プレイヤーでそこまでやったらいくらフレンドでも本当にBANされかねないから! ていうか、そうじゃなくても私別に好きじゃないし!!」


 ベッドの傍で、ライムをつついて静かに遊んでいたユリアちゃんが、話を聞くなり顔を赤くしながら迫って来るのを、慌てて押し留める。

 それ以上いけない、このゲームは一応全年齢……でもないけど、対象年齢12歳以上だから。それですら守られてるかは分からないけど、それでも18禁はマズイから!


「そう……分かった」


 こくりと頷き、素直に引き下がってくれるユリアちゃん。

 それにほっと一息……はいいんだけど、ユリアちゃん、なんかちょっと残念そうにしてない? 私の気のせい? 気のせいだよね?


「それでミオ、今日はどうする?」


 フローラにメロンジュースを上げてるのが目に付いたようで、ユリアちゃんの腕の中から飛び出して来たライムや、窓際で羽を休め日光浴していたフララ、加えてフウちゃんと一緒に休んでいたはずのミニスライム達まで私のところにやって来た。

 それを、体調チェックと称して1体1体念入りに撫で回しながらご飯を上げていると、ユリアちゃんが気を取り直してそう尋ねて来た。

 あれ? 昨日解散する前に話してなかったっけ?


「今日はパパベアーさんがリアルの用事でIN出来ないから、《採掘場》攻略はなしだよ。代わりにウルのところに行って、とりあえず今ある分の鉱石で合金を作ってみる話になってるけど、その前に色々とアイテム作るつもりだよ」


「アイテム?」


「うん」


 《採掘場》で採れたのは主に鉱石だけど、それ以外の採取アイテムが全くなかったわけじゃない。薄暗い坑道の中であるにも関わらず、逞しくも生える植物とか、キノコとか、そういうのがいくつか採取出来た。

 《暗光草》に《ホシミダケ》ってやつだけど……これが手に入ったことで、また新しいレシピが解放されたんだよね。


「ほらみんな、ちょっと待っててね~」


 一通りみんなを愛で終わったところで離れて貰い、早速作業に取り掛かる。

 それを見ていたフウちゃんから、「私の時は勉強しろって言ったくせに~……」的な視線を感じるけどそこは敢えてスルーだ。


「えーっと、まずは……」


 MPポーションの原料である《霊草》を、《ホシミダケ》、それに《気泡草》と一緒に磨り潰す。そこへ、《ハニーポーション》以来久々に必要になった《ハチミツ》を投下。ゆっくりと混ぜ合わせていく。

 すると……。


「な、なんか色が凄い事に……」


 《ハニーポーション》は、普通にハチミツと同じ橙色(?)っぽい色合いのポーションだったから、これも似たようなことになるのかと思いきや、混ぜ始めた途端その色は、暗褐色のイマイチ飲み物としてはよろしくない色合いに。

 ひょっとして調合失敗? と思ったけど、そのまま混ぜ続けてみると、ちゃんと思った通りのアイテムとして完成してしまった。



名称:ナイトメアポーション

効果:使用者のMPを200回復する。また、連続使用すると低確率で《酩酊Lv1》を付加する。



「う、うん、完成」


 名前が凄く不穏だけど、効果自体は私が望んでやまなかった《MPポーション》の上位互換だ。名前が不吉だったからもっと別の効果かと思ったけど、これは良い意味で予想外。《酩酊》がちょっとアレだけど、連続使用した場合の話みたいだし、まあ大丈夫かな?

 ウルと一緒に新しい短杖(ワンド)を作って、ビートやそれに比肩する(予定)のモンスターの召喚が楽になったとしても、今まで以上にMP管理が難しくなるだろうから、やっぱりこういうアイテムはどうしても必要だった。

 まあ、もしかしたら必要になることを見越して、運営が用意してくれたのかもしれないけど。


 それはともかく、この場でもっとも重要なのは、果たしてこの《ナイトメアポーション》は飲める味なのかってことだ。

 いや、飲めないほど不味いなら頭から被っても効果あるんだけど、ライム達のご飯になるのかどうかっていう切実な問題があるし、出来れば美味しい方がありがたい。


「ミオ、私が飲もうか?」


 そんな私の葛藤を察してか、ユリアちゃんが健気にもそんなことを提案してくれる。

 うぅ、優しいなぁユリアちゃんは。けど、こればっかりは製作者としての責任がある。まず一口は私が飲まなくちゃ!


「大丈夫。それじゃあ早速……!」


 出来上がった《ナイトメアポーション》を、ぐいっと一気に呷る。

 口の中で、シュワシュワと弾ける感覚に合わせ、甘みと旨味が一気に口の中に広がる、至福のひと時。

 こ、これは……この味は……!


「……コーラだこれ!」


 まさかの炭酸ジュースの代表格に、私は驚く。

 リアルのコーラよりもずっとドス黒い見た目だから本当に予想外だよ。《麻痺ポーション》の前例があるから、このゲームの炭酸はみんな不味いものだと思ってたし。


「ユリアちゃんも飲んでみる? 見た目の割に美味しいよ」


 というわけで、安全性(?)が証明されたことだし、最初に飲もうとしていたユリアちゃんへと残りを差し出す。

 けれど、ユリアちゃんはなぜかビクっと一瞬体を強張らせ、躊躇するように手が止まった。

 あれ? この反応、もしかして……。


「無理そうなら……」


「平気。ミオが作ってくれたんだし、飲む」


「あっ」


 無理そうなら大丈夫だよって言おうと思ったんだけど、それよりも早くユリアちゃんに余ったコーラ、もとい《ナイトメアポーション》を持っていかれ、そのままぐいっ! と一気に飲み干された。

 おおっ、凄い飲みっぷり。


「……うっ、ぶっ……」


 けどその代償に、ユリアちゃんは涙目になりながら、産まれたての小鹿のようにプルプルと小刻みに体を震わせていた。

 うん、やっぱりか。


「ユリアちゃん、コーラ苦手なの?」


 確信を持ってそう問いかけると、ユリアちゃんはたっぷりと時間をかけた葛藤の末、小さくこくりと頷いた。


「ごめんミオ、せっかく、作ってくれたのに……」


「いいよ、そもそも今のは試飲みたいなものだし。それに、炭酸のシュワシュワって、慣れてないとキツイもんね」


 しょんぼりと肩を落とすユリアちゃんの頭を撫でながら、そう言って慰める。

 私も、小さい頃に初めて炭酸飲んだ時は、泣いちゃったらしいからなぁ。やっぱりそれも覚えてないんだけど、偶にお兄からそれをネタにからかわれるんだよね。

 まあ、からかわれた時は、同じようにお兄の恥ずかしいエピソードでからかい返すんだけど。


「あ、先輩~、私はコーラ平気なので、是非試飲させてください~」


「はいはい、1本だけだよ?」


 せっせともう1本の《ナイトメアポーション》を作り、フウちゃんに手渡す。

 《快眠ベッド》に寝転がったままそれを受け取ったフウちゃんは、そのままポーションに口を付け、ごくごくと飲み始めた。

 お行儀悪いよ、フウちゃん。


「ん~、色はあれですけど、確かにコーラですね~、美味しいです~」


「ぐぐ……」


 そんな光景を見て、ユリアちゃんは悔しそうに歯噛みしている。

 うん、分かるよ、炭酸飲めるのって、飲めない人からすると何だかカッコイイ感じするよね、大人っぽくて。だからズルイと思う気持ちは分かる。

 でも、コーラなんて体に悪そうな飲み物、あんな体勢でゴクゴク飲んでるのを羨ましがっちゃうのは良くないと思うよ、うん。


「ユリアちゃん、誰だって苦手な物はあるから、そんなに気にしなくても大丈夫だよ」


「うん……」


 最後にそう言って会話を打ち切ると、改めてライム達にも同じものを作って食べさせてみる。

 そうすると、ライムやミニスライム達は相変わらず美味しそうに食べてくれたし、フララやフローラにしても、炭酸とか飲んで大丈夫なのか少し気になったけど、案外平気そうだった。

 むしろ、フローラに関しては結構気に入ったようで、メロンジュース並にグビグビ飲んでいた。けぷっと小さくげっぷする姿が何とも愛らしい。

 そんなに飲んで、体に悪いよ? と一瞬思ったけど、よく考えたらコーラ味のポーションなだけで、別にコーラそのものじゃないから別に良いか。

 ……微妙に顔が赤くなってる気がするけど、フローラ、炭酸で酔ってるわけじゃないよね? 大丈夫だよね?

 ちなみに、妙にオヤジ臭いところがあるビートなら気に入るんじゃないかと、我ながら良く分からない予想を立てていたわけだけど、こっちは予想通りと言うべきか、《トロピカルジュース》以上に気に入ったらしく、もっと頂戴とばかりに前足で私のローブの裾を引っ張り始めた。


「ダメだよビート、今はまだお試し、また明日。フローラもね」


「ビビ……」


「だー……」


 そう言うと、ビートもフローラもいつになく落ち込んだ様子で、ズーン、と擬音が付きそうなほど項垂れてしまう。

 う、うーん……フローラはともかく、普段あんまり我儘言わないビートのおねだりだし、聞いてあげたいんだけど……い、いや、ダメだ、クルトさんにも奈々ちゃんにも、あんまり甘やかし過ぎるなって怒られたばっかりだし。自重しなきゃ。


「……最後にもう一つアイテム作ったら、また作ってあげるから、それまで我慢してね?」


「ビビ!」


「だー!」


 ……という決意は、私自身のお世話したい欲とせめぎ合った結果、以上の妥協点を見出しました。まる。

 全然自重出来てないじゃん、って声が聞こえてきそうだけど、そんな天の声は敢えて聞こえないフリをしつつ、次なるアイテムの作成に移る。

 実のところ、名前からじゃ効果が判断出来なかった《ナイトメアポーション》よりも、こっちのアイテムの方が今回の探索で役立ちそうだったから、《調合》作業に入る前の本命はこっちだった。失敗しないように、慎重に作業を進めよう。


「まずはっと……」


 私は《暗光草》を取り出し、ゴリゴリと磨り潰していく。

 その後、完成済みの《HPポーション》と混ぜ合わせて、これまた《ホシミダケ》を磨り潰して水に入れ、《暗光草》入り《HPポーション》を薄めるように、ゆっくりゆっくり混ぜ合わせて行くと……


「うん、出来た!」



名称:《感知ポーション》

効果:使用者は、一定時間周囲のモンスターとプレイヤーを感知できる。《感知》スキルと重複可。



 今の私の《感知》スキルじゃ見つけ出せない、地中にいるマインワーム。

 昨日は、フローラの《モンスター誘因》スキルで強引に釣り出し続けることで採掘していたけど、《モンスター誘因》のもう一つの効果、モンスターの再出現(リポップ)促進のせいで、ユリアちゃんもパパベアーさんもずっと戦いっぱなしで休む暇もなくて、フローラ自身もMPを使い続けるからポーションの消耗が激しかった。

 その点、このアイテムで私の《感知》スキルを強化すれば、無理に釣り上げなくても再出現(リポップ)する度に一旦採掘を止めて戦闘すればよくなるから、MP消費を抑えつつ戦闘回数も減らすことが出来るかもしれない。

 そうなれば、昨日よりも探索も捗るはずだ。


「さてと、それじゃあこれの量産……の前に、みんなの分の《ナイトメアポーション》作ろうかな」


 満足のいくアイテムが出来て、次を作ろうとした私に突き刺さる、モンスター達の視線。

 それに苦笑を浮かべながら、私はウルとの約束の時間まで、ひたすら《調合》に明け暮れるのだった。


 なおその後、《ナイトメアポーション》を10本ほどがぶ飲みしたフローラが完全に酔っ払って、私に襲い掛かってくるなんて事件が起こり、その対処に悪戦苦闘するハメになったとだけ記しておく。

 今後、フローラには《ナイトメアポーション》を飲ませ過ぎちゃダメだと、私は深く心に刻んだのだった。

せっかくコーラを出すならやっぱり酔わないと(ぉぃ


なお、ここで言う連続使用の頻度は、最終使用時から10秒以内です。10秒ずつ連続して飲むごとに酩酊状態になる確率が飛躍的に上がっていきます。


《召喚術師》がMPポーションを短時間のうちにガブ飲みし続けながら次々モンスターを繰り出し過剰な火力を叩きだしていたため、普段使いなら気にしなくても済む程度の連続使用デメリットが試験的に導入された。

……という背景があったりなかったり(こじつけ)

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