第107話 鉱山の街とジャングル畑
デススコーピオンを倒した私達は、そのまま《ゴスト洞窟》を抜け、その先にある町へとやってきた。
「おおー、何と言うか、凄い町だね!」
「ミオ、感想が大雑把過ぎるのではないか?」
まさかのネスちゃんにすら小言を言われちゃったけど、実際何を言ったらいいのかよく分からなかったんだから仕方ない。
この町の名前は、鉱山の町《バルロック》。《北の山脈》に囲まれるようにして存在する町で、そこから鉱石を掘り出す鉱夫の人達や、それらを加工する鍛冶師……もとい、ドワーフの人達が集まって出来た町らしい。
だからか、ところどころから黒い煙を上げるこの武骨な街の中には、背の低い髭モジャな男のNPCの姿がところどころ見られ、丸っこくも厳つい体付きが何とも愛らしさと力強さを感じさせる。
つまり何が言いたいかというと、私としては町の特徴なんかより、ドワーフの方がずっと気になるってことだ。
「それじゃあ、ネスだったらどういう感想を抱くの?」
「む、我か? ふふふ、そうだな……」
そんな風に思っていたところ、リッジ君がふと気になったという風にネスちゃんに問いかける。
それを聞くなり、ネスちゃんは嬉しそうにふふんっと鼻を鳴らし、バサッとローブを翻した。
「数多の亡者ひしめく死の山脈、それを乗り越えた先に見えたのは、剥き出しの大地の上に立つ堅牢なる街並。道行く人々は皆筋骨隆々の大男で、鉱山作業の過酷さを表すと共に彼らの力強さを物語っている。時折聞こえる鎚の音が、切磋琢磨する匠たちの息遣いのように感じられ、まさにここは匠達の集いし町なのだと教えてくれる。鉱山の町、《バルロック》……それが、この町の名だ」
「おー」
決まった、とばかりにポーズを決めるネスちゃんに、私は思わずパチパチと拍手を送った。
町を一目見ただけで、こんなにも表現豊かな感想が言えるなんて、正直驚いたよ。ただ……
「ネス、地面は剥き出しじゃなくてちゃんと舗装されてるし、道行く人々はぶっちゃけ、ドワーフがチラホラいる以外はグライセとあまり変わらないし、ここ町の入り口も入り口だから、鎚の音も全然聞こえないよ」
「うるさいぞリッジ! こういうのは感じたままを言えばいいのだ、多少本物と違っていても、それを許容する度量が必要なのだぞ!!」
リッジ君が野暮な(と言っても私もちょっと思ったけど)ツッコミを入れると、ネスちゃんが少しだけ恥ずかしそうに反論の声を上げる。
「多少……なのかな……? いやまあ、町を見ただけでそれだけ想像力を膨らませられるのは素直に凄いと思うけどね」
「そ、そうか? わ、分かったのならばそれでいい」
リッジ君が首を傾げつつも褒めてあげれば、ネスちゃんは照れたように帽子を深く被り直す。
うーん、ネスちゃん可愛いなぁ。妹に欲しい。
「それじゃあ2人とも、今日は私の攻略に付き合ってくれてありがとね。今度お礼に何か奢ってあげるよ。何がいい?」
2人仲良くお話してるところに割り込むのも何だけど、そろそろ時間も時間だから、切り上げてログアウトしなきゃならない。
そういうわけで、お礼は何がいいか聞いてみると、2人ともなんともそれらしい返答を返してくれた。
「僕は別にお礼なんていいよ、好きでやったことだし……」
「ならばミオ、イベントの時に我が提供した苗の素材を使った料理を食べてみたいぞ、今回の骨集めはそのためなのであろう? だったら我らにもそれを食す権利がある!」
「ふふふ、もちろん、大歓迎だよ! もちろんリッジ君もね?」
「えっ? えっと、ありがとう……」
食欲全開なネスちゃんの回答に乗っかり、遠慮しようとするリッジ君も巻き込んでいく。
まあ、申し訳なさそうな顔してても、ちょっぴり嬉しそうなのは見てれば分かるから、それこそ遠慮するつもりはない。
「それじゃあ、私は取り敢えず落ちるけど、また今度、準備出来たら2人も呼ぶね」
「うん、ミオ姉、またね。キラ兄にもよろしく」
「待ってるぞミオー!」
2人に手を振り、一足先にポータル登録を済ませに町の中へと駆けこんでいく。
その途中でチラリと振り返れば、期せずして2人きりになったネスちゃんが、凱旋だなんだと言ってリッジ君を引っ張って行くところだった。
うん、このままネスちゃんがリッジ君を落としてくれたら、一番平和に済む……のかな?
まあ、この先どうなるか分からないけど、今はとにかくネスちゃん頑張れ! と心の中で応援しながら、私はコスタリカ村へと戻っていった。
「よいしょっ、よいしょっ」
リッジ君やネスちゃんと、《ゴスト洞窟》を攻略して数日。私は集めた《スケルトンの骨粉》や、デススコーピオンからドロップした《死獣の骨》なんかを使って肥料を作り、ひたすら畑作りに精を出していた。
畑を耕し、肥料を混ぜ、苗を植える。イベント報酬の分だけじゃ畑が埋まらないから、村の中で買った野菜を種にして植えてみたり、あるいは《西の森》で採れたアイテムなんかも植えてみたり。
肥料の方も、《モンスターの糞》や《スケルトンの骨粉》以外に良い物はないかと、《調合》スキルを使ってあれやこれや試行錯誤もしてみた。
とは言っても、もう夏休みも終わって学校が始まり、毎日の宿題や友達付き合いが再開された今となっては、日がな一日ゲーム三昧ってわけにもいかず、そっちは言うほど捗ってはいない。
まあ、ちゃんとコスタリカ村の一員になって、あちこちのクエストをこなしたお陰で、一日に一度、作物のお裾分けが貰えるようになったから、当面の食糧危機は去ったわけだし、この辺りはゆっくり進めていけばいいと思う。
「よしっ、出来た!」
そういうわけで、今日になってようやく畑の全てが作物で埋まり、明日からはお裾分けが無くても、何とか自給自足できるだけの食材アイテムを継続的に入手する目途が立った。
もちろん、調味料やら何やら、畑じゃ採れないアイテムもあるから、その辺りは買わないといけないんだけど……それも、日々無理なくこなせるクエスト報酬と合わせて、十分黒字に出来る見通しだ。
もちろんこれには、新しい仲間、フローラの《成長促進》スキルの影響も大きい。
収穫し損ねた時に枯れるまでの時間も早くなっちゃうけど、収穫サイクルが早くなった分、短期間でたくさん作物が採れるし、食糧事情の改善に大きく貢献してくれた。
いやあ、ここまで長かった。
「ただこれ、果たして畑って言っていいものかなぁ……」
感慨深い思いを抱きつつも、少しばかり苦笑しつつ眺める先にあるのは、もちろん私が丹精込めて作り上げた、ホーム内にある私の畑。なんだけど、そもそも植えた物が物だけに、ちょっと畑とは言い難い有様になってる。
ジャガイモとかニンジンとか、そういう野菜類は別に良い。けど、《ヤシの苗》とか《南国バナナの苗》とか、そういった南国フルーツ系の苗を植えまくったせいで、どこの熱帯雨林だここはって言いたくなるくらい、そういう木々が生い茂ってる。
いやうん、別に、生育に問題はないんだけどね? ゲームだから、その辺りは緩いだろうと思ってたし、実際その通りになったんだけど、いざこう、牧歌的な村の一角がジャングルと化してるのを見ると、凄くコレジャナイ感が。
「まあ、みんな喜んでるし、村の人達も気にしてないから、別にいっか」
そう思いつつ視線を向ければ、私の愛するモンスター達が、皆思い思いに、木々が生い茂る畑の中を遊び回っていた。
ビートは種族的な物なのか、地面にいるより木に留まってる方が落ち着くようで、日替わりで色んな木に登ってる。サイズがサイズだけに木が折れないか凄く心配になるんだけど、意外と問題はなさそうだから最近は自由にさせてる。
フララも、やっぱり蝶なだけあって花が気になるようで、収穫前の作物の花を見つけては、口のストローを刺して蜜を吸ってるみたい。ゲームで受粉とかあるのかな……?
ミニスライム達は何と言うか、食欲魔人らしく出来上がった作物を勝手につまみ食いする子がいたりしたんだけど、ムギやバクがみんなの纏め役になりつつあるようで、やんちゃな子達を捕まえてはお説教(?)してる光景が見られるようになってきた。
まあそれも、作物は直接食べるより、私が料理した方が美味しいって知ってからは、自分達で収穫して私のところに自主的に持ってきてくれるようになったから、大分回数を減らしてるんだけどね。いっそ、本格的に畑のお世話をミニスライム達に手伝って貰うのもいいかもしれない。
そして、この畑作りで最も貢献してくれたフローラと、ライムはと言えば。
「仲良くなったね、2人とも。楽しい?」
「――!」
「だー!」
フローラがライムの上に乗り、ぷるぷるぽよぽよと跳ね回りながら、ジャングル、もとい畑の中を散策していた。
いくらフローラが小さいからって、サイズ的には結構ギリギリな気はするけど、ライムの《触手》スキルとフローラの《蔓操作》スキルでお互いを固定し合うことで、意外なほどの安定感を発揮していた。絵面だけ見ると、幼女がスライムに触手と蔓で拘束されてる色々とアウトな感じになってるんだけど……まあ、本人達が楽しそうだし、いいか。
「そっか。ふふふ、それじゃあ、私は準備があるから、後のことはお願いね、ライム」
「――!」
了解! と、もう一度体を揺らすライムを優しく撫でると、他のみんなにも手を振って、私は家の中へと足を向けた。
今日は、畑のひとまずの完成を記念して、手伝ってくれたクルトさん、リッジ君にネスちゃん、それと、宿題を頑張って、やっと終わらせたらしいフウちゃんに、最近会えてなかったせいで拗ね気味なユリアちゃん等を呼んで、盛大にパーティをやることになってる。
約束の時間にはまだまだ余裕があるけど、そろそろ準備に取り掛からないといけない。
「ふふっ、みんな、これ見たらどんな反応するか、楽しみだなぁ」
クルトさんは遠目にでも見られるから、もう知ってるだろうけど、他のみんなは私の今の畑を見るのは初めてのはずだ。
驚くのか、呆れるのか、それともライム達みたいに、美味しそうな作物や果物に目を輝かせたりでもするんだろうか。
想像するだけで、何だかウキウキした気分になってくる。
「早く来ないかなぁ」
準備もまだ出来てないのに、そんなことをつい呟きつつ。
私は料理のため、キッチンへと駆けこんでいった。
名前:ミオ
職業:魔物使い Lv36
サブ職業:召喚術師 Lv30
HP:332/332
MP:425/425
ATK:119
DEF:159
AGI:160
INT:166
MIND:226
DEX:251
SP:21
スキル:《調教Lv38》《使役Lv40》《召喚魔法Lv34》《敏捷強化Lv33》《合成Lv37》《農耕Lv10》《調合Lv42》《料理Lv41》
控えスキル:《鍛冶Lv35》《採取Lv42》《釣りLv15》《隠蔽Lv30》《魔封鞭Lv20》《投擲Lv33》《採掘Lv29》《感知Lv38》《鞭Lv37》
名前:ライム
種族:メタルスライム Lv38
HP:386/386
MP:188/188
ATK:80
DEF:309
AGI:125
INT:140
MIND:208
DEX:96
スキル:《強酸Lv23》《収納Lv38》《悪食Lv42》《麻痺耐性Lv27》《鉄壁Lv31》《触手Lv39》《硬化Lv31》《MP自然回復量上昇Lv28》
名前:フララ
種族:ウインドフェアリー Lv35
HP:240/240
MP:530/530
ATK:85
DEF:68
AGI:173
INT:288
MIND:132
DEX:82
スキル:《毒鱗粉Lv40》《麻痺鱗粉Lv39》《睡眠鱗粉Lv36》《付与鱗粉Lv6》《暴風魔法Lv8》《回避行動Lv30》
名前:ビート
種族:キメラビートル
召喚コスト:278
HP:187/187
MP:89/89
ATK:256
DEF:129
AGI:163
INT:72
MIND:62
DEX:111
スキル:《激突Lv7》《飛翔Lv27》《筋力強化Lv22》《敏捷強化Lv20》《手先強化Lv21》《闇属性攻撃Lv17》《槍Lv11》
名前:フローラ
種族:アルラウネ Lv3
HP:42/42
MP:96/96
ATK:55
DEF:75
AGI:53
INT:57
MIND:69
DEX:87
スキル:《成長促進Lv8》《地属性魔法Lv1》《モンスター誘因Lv3》《蔓操作Lv9》
モンスター増えてステータス一覧長くなってきたな……どうしよう(;^ω^)
それはそれとして、これにて第五章終了です。次話から第六章に入ります。




