プロローグ
「うおおぉぉぉお!!」
俺がいきなり雄叫びを上げているのには深ァァいわけがあって、簡潔に、チョー簡潔に説明すると、アレだ。
あの例の、ラノベやらアニメやらで散々使い古されてなお、現在もその人気が衰えることのないジャンル。
その名もっっ!!!『異世界転生』だっっ!!!
その異世界転生を実際に体験している俺達は、東京ではもうお目にかかることは無いだろう、広大な草原の中にいる。
転生とあればどっかの王国の、どっかの綺麗なお姫様の頼みを聞いて、どっかの魔王をぶっ飛ばして、英雄ウハウハハーレムを思い浮かべるだろうが、そういう訳では無い。
現状、転生されて目を開けたら殺風景な大草原。
………いやぁ、笑うしかねぇわ。
なんでこんなことになったのかというと、、、
(こっからお決まりの回想シーンだな。)
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今朝も遅刻ギリギリになってダッシュで走り込みセーフを決めた俺は(朝からテンションが高いのはいつもの事)一番端の窓側の席に座る。
すると30秒もしないうちに担任の姫乃紅姫が入ってきた。
「はぁい。おはよぉございまぁす」
彼女はおねいさんだ。
いや、家族という意味ではなくて、キャラ的にだ。
豊かな胸のせいで切れんばかりにピッチピチになったスーツ、シュッと締まったウエスト、ボンキュッボンの最後を占めるにふさわしい尻。
さらにオプション付きでピチピチ黒タイツ。
男子生徒が黙っているわけがない。
「せんせぇ!今日も綺麗ですよ!」
と同じく一番後ろの真ん中の席の男子が叫ぶ。
彼は栄友君だ。
なに、彼がじゅくj………コホン、おねいさん好きという訳では無い。
男子なら目をひかれぬわけが無い(一部除く)。
「ふぅ。全く大人をからかうのも大概にしなさい」
ため息の部分とか特に大人の色気って感じだ。
そうだ。かく言う俺も先生のファンだ。
ちなみにファンクラブまである。
俺は会員№0003だ。伝説の一桁と呼ばれている。
ちなみに№0001と0002は生徒会長と副会長だ。
今や彼女はこの学校を牛耳っている。
なぜなら№0004が校長だったりするからだ。
さてそんな話はさておき、今日も姫ちゃんは綺麗だ。
姫ちゃんとは先生のあだ名だ。
先生自身は認めてないが…
「じゃ、出席とるよ」
「朝河君乃」
「へぇい」
「伊藤詩音」
「はい」
といつも通りの出席が取られていた。
………がしかし俺の名前が呼ばれると同時に異変が起きる。
「影乃壊鬼」
自分の名前ながら厨二くさい。
「は「待て!」」
「「「「「「!!?」」」」」」
クラスのほとんどの人間が驚きの表情をしている。
そりゃそうだろう。俺の返事に声を被せやがったその声はしわがれたジジイの声だからだ。
黒板に魔法陣のようなものが描かれて、そこが光り輝いている。
その中心の六芒星の真ん中からジジイがぬっと顔を出している。
「またれい。勇者殿方」
「え、えと………えっ?」
珍しく姫ちゃんが焦っている。
「あなたがたには今からこちらの世界に来ていただきたい。して、闇の軍勢から我らを守っていただきたい。」
はい。来たよ。異世界転生。
密かに憧れ続けてきた夢の転生。
「そ、そんなこと認めません!生徒達は私がまも…………きゃあ!!」
「きゃぁぁぁぁぁあああ!!!」
問答無用と言わんばかりに魔法陣が光輝きジジイはその中へ姿を消す。
だんだんと光が強くなり叫び声が聞こえた。
こだまする叫び声と共に俺の意識は遠のいていった。
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そしてさっきの場面に戻る。