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6歩目 成長を見守るのも一苦労だった

 とにもかくにも大変な事だった。

 虫が集り、動物が食い荒らしにきて、鳥が空から襲ってくる。

 日照りや冷害におびえ、ちゃんと成長していってるかを気にかける日々が続いた。

 作物がちゃんとなるのをただただ待ち続けるしかない。

 そんな日々が何ヶ月も続く。

(ちゃんと収穫出来るのかな……)

 常にこの不安と隣り合わせだった。

 獲物が獲れるかどうかを心配する日々とそれは変わらない。

 栽培すれば食料確保は安定すると思っていたが、現実はそれほど甘くはなかった。



 それでも、土から芽が出て、少しずつ茎を伸ばし葉っぱを広げていくのを見て安心をおぼえた。

 せめて動物の侵入を阻止しようと、畑の周りに堀を作り、柵を設けて対処にあたった。

 おかげでイノシシなどをつかまえてご馳走になったのは嬉しい誤算であった。

 魚とあわせて、集団への貢献を果たしている。

 それが命綱にもなっていた。

 何の成果もなければ追放を覚悟しなければならないのだから。



 何の成果もあげられない者を何時までも抱えてるわけにはいかない。

 集団が成り立ってるのは、それぞれが食料を確保してくるという成果をあげてるからだ。

 もちろん何の成果もあげられない場合もあるが、それでも、いずれは何らかの収穫を手にしてくる。

 そういう期待があるからこそ協力していた。

 しかし、一ヶ月二ヶ月と何の成果もあがらなければそうも言ってられない。

 狩りにしろ採取にしろやはり慣れや才能が求められる部分がある。

 人間、向き不向きがある。

 どうしてもこれらに向いた才能や能力を持たない者もいる。

 そういった者は、かわいそうだが集団から追放するしかない。

 何も成果を得られない者が一人でもいれば、その分他の者達の負担が増大する。

 そして、養えたはずの一人を、無駄飯くらいのために捨てなければならなくなる。

 他の多くの為に少数を犠牲にするのも忍びない。

 しかし、わずかな人数の為により多くの者達に負担をかけるのも許される事ではない。

 それだからこそ、何も成果を上げられなかった者は集団から追放される。

 ヒロフミも例外ではいられない。

 畑を耕して将来の収穫を確保しようとしている。

 しかし、そのための何ヶ月かの間、何の収穫もなしではさすがに問題になってしまうだろう。

 あげた功績の大きさは無視出来ないだろうが、今現在の成果がなければ、集団の負担が大きくなりすぎる。

 それを無視してまでかつての功労者を養っておく余裕は無いのだ。

 ────それを考える事が出来たから、遠回りしてでも魚を捕獲するウケを作ったのだ。



(あれが無かったらどうなってたんだか)

 少しでも足しになればと思いつつ作ったウケだが、それが今は集団にとって大きな救いになっている。

 仕掛け罠なので確実な成果は期待できない。

 しかし、放っておいても成果が得られる可能性がある。

 それが受けて水の供給源である川は、同時に魚の捕獲場所にもなっている。

 それが無ければヒロフミはとっくに放逐されていたであろう。

 今は縄の作り方も含めて他の者に教え、更に多くのウケを作って広範囲に展開している。

 一日で行き来出る範囲に限られるが、川のあちこちに仕掛けられたそれは、かなりの漁獲量を示してきている。

 正直、乱獲が心配になってもいた。

 それも畑から収穫が上がるまでの間だけと思ってはいる。

 畑から作物がとれるようになれば、そこまで魚に固執する必要は無い。

 魚を取り尽くす前に、収穫が来て欲しいものだった。



 思わぬ成果として、作業分担がはっきりしてきた事がある。

 麻から縄を作り、縄を使って他の道具を作る。

 それを一人で全部やるとしたらとても手が足りなくなる。

 幸い、食料供給が比較的手軽に安定して行えるようになったので、人手が余るようになった。

 それを利用してヒロフミは、手の空いた者にこれらの作成をさせていった。

 特に狩りや採取で成果を上げられなかった者に優先して作業をさせた。

 工作作業の才能があるかどうかは分からなかったが、それでも構わなかった。

 狩りなどで無駄になってる人手を有効活用しようという、言ってはなんだが廃品活用程度の気持ちでいた。

 狩りなどで成果をあげてる優秀な人材を引き抜くわけではないから、軋轢や衝突も発生しない。

 もちろん、放逐するつもりだった人間、つまりは無能と判断された者達を確保する事で怪訝な目で見られはした。

 無駄が増える、無駄飯くらいを囲って、といった不満も聞こえてきた。

 しかし、多少時間はかかるにしても、やり方をおぼえてくれれば他の者が助かる。

 縄を作り、それを用いて道具を作る事で他の者も助かる。

 たったそれだけの事で、放逐される者達が活きてきている。

 また、作業に専念する者が出来た事でより巨大な、手間のかかる道具作成にも乗り出せる。

 縄を網にして狩りに使ったり、漁に用いる事も出来る。

 それでも手が余るなら、石斧を持って木を切り倒して木材を確保しにいける。

 それは今までにない新しい作業分野の誕生であった。

 原始的な形であるかもしれないが、職人の誕生である。



 これらがもたらした生活環境の改善は大きく、以前に比べれば快適な環境が手に入るようになった。

 定住する事で移動という負担が極限まで減少し、定位置にて活動するようになった。

 これにより失われたものも大きいだろうが、得られたものもまた大きかった。

 定住する事で妊婦の負担が減り、子供の出産・育児の手間がかなり減少した。

 それでも医療が未発達な状態の事、乳幼児死亡率の高さは大きい。

 まともに育つ子供はなかなかいない。

 十人産んでも成人するのは二人かそこらという状況である。

 なのだが、それでも移動しないでいられるという事は利点が大きいようだった。

 確かに子供を引き連れて移動するのは大きな負担だし、そんな事をしないで済むというのはかなり大きい。

 心なしか出産数が増えた気もした。

 落ち着いていられるというのは大きいのかもしれない。

 畑につきっきりで集団の事も身近で見る事が多くなったヒロフミにはそう思えた。

 結果として人口が少しずつ増えていっている気がした。

 もっとも、そうはっきりと分かるほど確りとした人口統計があるわけではないが。

(そのうち、記録もとれるようにしないといけないか)

 その為には紙や墨が必要だが、当分の間はそれは期待できそうにない。

 ならば木の板などに彫り込む事を考えるが、その為の金属製品がない。

(採掘とか金属加工も必要だな)

 記録するというのが意外と大変なのを知った。

 あらためて、文明というのはとても偉大なのだと知る。

 もっとも、そんな先の事より目の前の畑からの収穫の方が重要である。

 まずはそれをどうにかしないといけない。

 ここで失敗したら、大きな後退を余儀なくされるかもしれない。

(どうか上手く作物がなりますように……)

 やる事をやっただけに、あとは祈るしかなかった。


 22:00にいけるか?

 もうちょっと頑張ってみたいと思う

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おまえら、教えやがれ
  ↓
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http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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