56歩目 振りかざそう、その為の権威だ、使って都合良く物事を運んでいこう
末端であろうとも王族である。
それと謁見が出来たとなれば、それなりに箔が付く。
そうなれば、社会的な影響というものがそれなりに出てくる。
落ち目であったとしても、わざわざ王族が会いにいったとなれば、
『実は何かあるんじゃないのか?』
と考える者は出てくる。
そうした者達が落ちぶれた者達に会いに来る事が増えていく。
そのほとんどは様子見、つまり偵察のようなものではある。
だが、見向きもされない状況というわけではない。
それらの中にはヒロフミが接触をした者達と縁を作っていく者もいる。
それが少しずつ力になっていく。
ほんのわずかだが人脈が生まれ始めていく。
中にはふさわしい技術を持つ者もいる。
知識を持ってる者もいる。
商才などを持ち合わせてる者もいる。
ただ時の運と体制の問題で没落を余儀なくされただけの者達がいる。
そういった者達は必要なものを得た瞬間に復活を遂げていく。
ただ、民間における活動、商会や工房などは成り立ちにくい。
体制がそういったものを認めないというのが大きい。
なので、ここでも王族としての地位や立場を用いていく事になる。
全てが体制の下におさめる事を余儀なくされるのであれば、それを利用するだけだ。
ヒロフミは、そういった者達を王族傘下の組織として編成していく。
これにより、合法的に体制を利用する事が出来るようになる。
言ってしまえば国営企業、この場合王族企業とでも言うべきだろうか。
そういった組織を作っていく。
ただ、これらの傘下組織は、それぞれがほぼ独立自営の状態を保たせるようにした。
上からの指示などは出さない、組織ごとに自分の意思で活動するように。
その代わり支援や支持も極力減らしていく。
ヒロフミ一人で傘下の全てを把握出来るわけがないからだ。
それらを統制統御しようとしても、必ずどこかで破綻する。
そうなるくらいなら、各自に自由を認めて好き勝手させた方が効率が良い。
最低限してはならない事を定めてはおくが。
それも様々な活動に掣肘を加えるようなものではない。
阿漕なことはするなという、いたってまともなものだ。
それだけ守っていれば、あとは自由とした。
出すのは金だけだ。
汚職や不正は放置出来ないが、そうでないなら事業そのものは好きにさせる。
そして、活動の邪魔をさせない。
これは事業を独占している事業組合、いわゆるギルドなども同様だ。
事業組合は現在独占的に企業活動を行っている。
政治からの事業援助などを受けて、事実上の国営企業状態だ。
そういった者達が事業を独占し、新規参入を阻んでいる。
それが様々な弊害を生んでしまっている。
競争相手がいない事で、新たな製品や商品を作りだす必要がなくなる。
このため、研究開発が滞る。
また、競争相手がいないので、製品や商品を高値で売りつける。
こんな事では一般庶民や平民達が苦労する。
こういった状況を潰す為に、形はどうあれ新規参入者を作ってぶつけていく。
そういった体制を作るのに数年。
子供の頃からあちこちの寄り合いや会合に顔を出して作り上げていく。
王族という事でなんらかの記念行事には出席せねばならない。
面倒でうっとうしい儀式であるが、子供のヒロフミが世間と接点を持つ貴重な機会ではあった。
それを最大限に利用していった。
でなければ、無駄で面倒な式典に顔を出す意味がない。
ヒロフミにとってそれらは、厳かなものではなく商談の舞台である。
そういった商談を続けていく事で、次第にヒロフミは力を持つようになっていった。
町内会程度の規模でしかないヒロフミの領地であるが、その実体は市町村を越えて都道府県の範囲に影響を持つほどの規模に成長していっている。
まだまだ必要な力を手に入れてるとは言いがたい。
資金繰りも厳しく、常に自転車操業状態である。
だが、それでも無力では無い。
手に入れた力を使って、規模を拡大し、それに伴って影響力を強めていった。




