５３歩目 造物主との語らいは何一つ楽しいところはなく、苛立ちと不満をつのらせていくような
「出来るところから手をつけるしかないよ」
造物主はそういって慰めてくれた。
「連中の介入のせいでもあるし」
「なに？」
「敵が色々ちょっかいかけてきてるんだよ。
それでおかしな考えが蔓延している」
「なんだそれ」
面倒な事態になってきたと思った。
「人を直接送り込みはしないが、考えを吹き込んでいく。
それで、あとは勝手に動いてもらう。
直接動かすわけじゃないから思い通りにはいかない。
けど、勝手に動いてくれるから手間もかからない。
そのくせ効果はそれなりにある」
「嫌な奴だな」
相手のやり方にうんざりした。
やり口の汚さもそうだが、何よりそれがどれだけ効果があるのか知ってるからだ。
ヒロフミが敵に使った手段だからだ。
嫌でも効果がどれほどなのかよく分かる。
「それで対策は？」
「原因を取り除くこと」
「そりゃそうだ。
その方法は？」
「今のところは無い」
「…………」
あっさりと言い切ってくれる造物主に憮然とする。
「なんで？」
「力が無い」
「あんたに？」
「そういう事」
嫌になる事実であった。
「それって、弱いってことか？」
「相手よりはな」
「どうにかならないの？」
「今のところどうにもならない」
「うわあ……」
嫌な事実である。
「でも、方法はある」
「なに？」
「勢力の拡大」
「……やっぱりそれか」
結局そこに行き着くようだった。
敵の攻撃をはねのけるためには力がいる。
その力は、世界の発展にかかってる。
具体的には、人々の信仰心などによるようだった。
そうやって念や気を集めて造物主の力を強くする。
それ以外に方法が無いという。
「そういうわけで、がんばって発展させてくれ。
そうすれば、余計な介入を減らす事が出来る」
「はいはい」
不承不承ながら頷くしかない。
本当にそれしかないならば。
確かめる術はないが、今はそれをとりあえず信じておく。
「じゃあ、次もがんばって行ってきてね」
「はいはい」
「今度はまた少し文明も発展していってるから。
もう少し楽に生きていけるはず」
「そりゃそうだろうけどよ」
それを作ってきたのは、ヒロフミとその勢力である。
基本的に傍観してる造物主ではない。
あまり偉そうな態度をとられても困る。
「次はもっと楽が出来るように発展させてくるよ」
「おう、期待している」
気楽にいう造物主に、お前も働けと言いたくなった。
その前に新たな人生が始まってしまったが。
