51歩目 耐え忍ぶ事も必要、かつてもっと酷い事が起こった時もそうだったのだし
とはいえ、即座に討伐が出来るわけもない。
しばらくは様子見を続けるしかない。
その間に国力を増大させ、敵を圧倒する。
幸いにして、人口の大幅な減少をしても敵よりヒロフミ達の方が有利である。
時間をかければその差は更に広がる。
当面は空いた穴を埋めねばならぬが、それが終わったら一気に殲滅する。
そのつもりで準備を進めていった。
ただ、この事件のせいで発展が一時停滞する事になる。
失った分の穴埋めに全力を尽くさねばならなかったからだ。
とても研究開発をしてる暇は無い。
それだけは頭の痛いところだった。
「とことん祟るな」
気づけなかった問題。
それが残した傷跡はとてつもなく大きい。
その大きさに頭を抱えながらも、その原因を消滅させるために動いていく。
幸いにも、残った者達の働きは目覚ましかった。
邪魔な連中が消えたせいで、成果が増大していった。
それが国を潤し、失った部分を補っていく。
単純な生産量は以前に比べれば確かに落ち込んだ。
しかし、一人当たりの生産力はかえって増大した。
その成果を受け取っていく者達は、以前よりも豊かに暮らしていった。
おかげで次の世代、更にその次の世代で元の国力を取り戻す事が出来た。
一方で反乱を起こした者達はその逆の道を進む事になる。
もともと生産性の低い者達の集まりである。
まともに働こうとしない者達が集まっても戦力にはならない。
何もしないで過ごそうとする怠け者ばかりなのだから当然だろう。
そんな者達が集合しても、烏合の衆となるのが関の山だった。
そんなものだから、生産性は日増しに低下していった。
そのあおりを食らったのは、もともと反乱を起こした領主のところにいた勤勉な者達である。
それらが生み出す成果を配っていく事で当初はなんとかまかなう事が出来た。
しかし、それが続くと勤勉な者達も音を上げる。
自分たちの手にする成果が取られていけば、誰だってそうなるだろう。
例外的なお人好しはそれでもある程度はこらえたが、大半の者達はやっていけないとさじを投げた。
その結果起こるのが、逃亡・逃散である。
働き者が反乱を起こした者達の所から逃げ出した。
かつての出来事の再現である。
このため、時間が経つごとに両者の差が開いていった。
その間、ヒロフミも小規模な紛争を常に仕掛けていった。
敵を倒す程の勢力ではないが、収穫を減少させる程度には損害を与えるような。
相手を殲滅する事は無理だが、相手の勢力増大を阻む事は出来る。
それにより彼我の差をどんどんと大きくしていった。
相手の勢力が低下しなくても構わない。
現状維持を続けるならばそれで良かった。
その間にヒロフミの方は勢力を増大させていき、差は広がっていくのだから。
そうした事を続けて20年。
ようやく目処をたてる事が出来たヒロフミは、反乱を起こした連中に戦争をしかけた。
その年月の間に開いた国力は兵力になってあらわれる。
かつての人口を取り戻し、更に飛躍を続けようとするヒロフミの勢力。
一方で反乱を起こした者達は、自らの怠惰ゆえにその勢力を伸ばすどころか減少さえしていた。
ヒロフミが邪魔をし続けたのもあるが、それ以上に生産性が全く上がってないのが主要因である。
彼らが信じる教えを守った結果だろう。
その結果に彼らは否応なく殉じていく事になる。
包囲された反乱民達は、逃げ場もなくそこで潰えていった。
抵抗はあったが、それ以上にヒロフミ側の攻勢が上回った。
最後の一人が死に絶えるまで、それは続き、生きてる者は誰一人残らなかった。




