44歩目 最悪の結果は免れた
集落に戻ったヒロフミは一回目の結果を報告。
薬草などはすぐには見つからなかった事と、生い茂る木々を発見した事を告げる。
そこで木炭を作りながら薬草を探していきたいと告げた。
燃料の確保が必要だった集落の者達も賛成し、早速派遣される者達が編成されていく。
一ヶ月で人を集めたところで再び川に沿っての移動を開始した。
今回は徒歩の人間も多いので移動に時間がかかってしまう。
馬車があればと思うも、それを作る為にも金属の工具が欲しい所である。
その為にも、本来の目的を達成したいものだった。
現地に到着した彼等は、早速作業を開始していく。
木々を切り倒して場所を作り、小屋をこさえていく。
その一方で、倒した木々を使って木炭を作っていく。
ひたすらに木々を倒す者と傍らで、竪穴式住居が造られていく。
慣れたもので、木々を倒し骨組みを作り茅を葺いてという作業がどんどん進んでいく。
寝泊まりが出来る場所が出来上がり、必要な物資も運び込まれる。
田畑を開墾する事は出来ないので、食料は集落からの輸送を頼らねばならない。
代わりに、周囲に生い茂る木々を倒して木炭を作り、それを供給していく事になる。
もちろん、いずれは薬草もそこに加わるだろう。
それが主力になるのは先の事になるが。
その中でヒロフミは金属を求めていかねばならない。
色々と大変な事になりそうだった。
当面の成果をあげるための木炭は割と上手くいった。
材料はまわりに大量にあるので調達は比較的楽である。
伐採して運び込んでくるのは大変だが、薬草探しほどではない。
これが薬草となると、何日か森や山の中を歩き回らねばならないから手間がかかる。
注意深く見なければ見落としてしまうので神経を使う。
探索されてない地域なので地形すらも把握出来てないから余計に手間がかかる。
好んで山に入っていく事はなく、探索の必要性も薄いから今まで手つかずだった。
薬草探しがなければそのまま放置されていたかもしれない。
その薬草探しが順調であれば良いのだがなかなかそうはいかない。
やはり簡単に見つかるものではなかった。
知識を頼りに探すも、該当するものは見つからない。
全く成果があがらないというわけではないが、一年目の成果はようやく一種類といったところだ。
おまけに鉱脈の方も見つかってない。
手間ばかりがかかって、目的の方の達成は難航を極めていた。
とはいえ、一種類でも薬草が見つかったのは集落からすれば快挙である。
何年もかけて何も見つからない事だってあるので、それに比べれば大したものである。
それに木炭の供給もなされている。
集落からすれば、それだけでも十分な功績だった。
ただ、何かを手に入れれば更に多くの、より大きな何かを求めてしまうものでもある。
更に何か出てくるのでは、あるいはもっと有益な薬草が手にはいるのではないかという期待が出てくる。
余計な圧力となってヒロフミに向かっていくのも止められない。
期待は、達成されなかった時に失望と怒りに変わる。
援助を引き出す事を容易くするが、その分達成出来なかった時に求められる返済も大きくなる。
無ければ無いで困るが、ありすぎるのも考えものだった。
無償で何かしらしてくれるならありがたいが、そうそう虫の良い話もない。
提供されるにしても、必要にして十分な量や質を求める事も出来ない。
だからこそ、多少なりとも利点があると思わせるだけの何かを提示していかねばならなかった。
ありがたい事に木炭を確保するために山の奥までどんどんと進んで行く。
そのための炭焼き小屋も作り、居住地も作っていく事になる。
探索を進めていくためでもあるので、拠点となる場所を確保する意味もあった。
そうでもして木材を確保しないと集落での消費に追いついていかなくなりつつあるのだ。
ヨシフミが生まれた頃は四千人だったが、既にそこから五百人以上増えている。
人口増加の勢いは留まる所を知らず、次々に新しい集落が作られていった。
田畑は拡大し、川から離れた所にも用水路を引いて耕作地を確保せねばならなくなっている。
当然様々な物資が必要となっており、それらの増産も考えねばならなかった。
木炭も供給確保の為に場所を拡大しておかねばならなかった。
一カ所だけでは必要な量が確保出来ない。
植林して使った分を補うにしても、即座に回復するものでもない。
ある程度広い範囲を確保する必要があった。
集落としての必要性がヒロフミの活動を助ける事につながっていった。
そんな調子で二年三年と時間が経過していく。
どの人生でもそうだが、目的の達成までにかかる時間は長い。
数年かかる事など珍しくもない。
それだけ重要ということでもある。
一回の人生で一つの目的を達成するのが限界だった。
今回はそれが特に顕著に感じる。
果たして生きてる間に鉱脈を見つける事が出来るのかと心配になる。
薬草の方は少しずつ見つける事が出来ていたが。
(こりゃきついな)
そもそも鉱脈がないかもしれないのだ。
そうだった場合、探索そのものが無駄になってしまう。
出来ればそうならないでもらいたかった。
次の人生に持ち越しになったらつらい。
運が良いことに、そうなる事はなかった。
探索に出て十年、ようやく目的のものを見つける。
それだけかかったと見るべきか、たったこれだけの期間で見つける事が出来たというべきか。
どちらであるかは悩ましいが、よううやく見つける事が出来た。
それだけでもありがたかった。
これからそれを利用出来る形にしてかねばならなかったが。
かかる手間と時間を考えると喜んでばかりもいられない。
それでもまずは歓喜に震えて見つけた鉄を見つめ続けていった。
今後について、活動報告を書いてくつもりなのでよろしく。




