4歩目 そんなこんなでやっては来たけども
ここに至る理由と経緯を思い出してため息を吐く。
なんだかんだあり、条件交渉もしてやってきたのだが。
あまりにもあんまりな状況に絶望しそうであった。
少なくとも落胆は避けられなかった。
(本当にどうしたもんだか)
手をつけるべきものが何なのかすら見えない状況にため息が漏れていく。
やりたい事は多いが、選べるのは一つだけ。
それがかなり厳しい。
とにかく今後の展開に必要な部分が見えてこない。
(何か良いの無いかな)
そう思いながら能力表を見ていく。
ついでに、選択出来る技術の一覧を。
かなり膨大な数があるそれらの全てを見ていくのは面倒だったが。
(とにかく、次の事を考えておかないと……)
そう思った瞬間に、技能一覧の表示に変化があらわれる。
目的に沿った技術が選別された結果だ。
こういった絞り込み検索のような機能も備わってるのが助かる。
(妙にパソコンぽいよな、このあたり)
神様というか造物主とやらも人間にならうのだろうかと思ってしまう。
あるいは、人間の方が無意識に造物主達の方向に向かっていくのかもしれない。
その結果として、似たような機能のついた物が作られていってるのかも。
確かめようがないが、そういう可能性も考えた。
(まあ、それはそれとして。
この中から選ぶにしてもなあ)
候補としてあがってるので外れはないだろうが、それでも複数の技術が並んでいる。
その中には農業や星見、天候予測など実際に必要そうなものがあがっている。
しかし、そのどれかを選ぶにしても何か決め手に欠ける気がした。
確かに目先の問題や先々の事を解決していく手段が欲しい。
なのだが、それだけでは足りない。
体系的に行動していくための、無駄なく技術を会得していくための筋道が欲しい。
考え方を示す何かが欲しかった。
(そういう便利なものが無いかねえ)
そう思った瞬間にまた表示される技術が変わる。
条件が変更された事で選べる技術も変わったようだ。
その一つにヒロフミは注目する。
(なるほど、これか)
即座に役立つ事はないだろうが、今後を考えるのに便利そうな技術だった。
迷わずヒロフミはそれを選び、経験値を消費した。
その瞬間、選んだ技術がレベル1になり、頭に様々な考えが浮かんでいく。
今までどの順番でやろうかと悩んで居た悩みが、一つの方向性をもって絞られていく。
呆気ないほど簡単に結果は出てきた。
(なるほど、こうすりゃいいのか)
そう思ってヒロフミは次の道筋を見つけた。
修得した瞬間に頭の中が整理されていき、必要な技術を絞る目安が思い浮かんできた。
存外馬鹿に出来ない技術だと理解する。
『教養』という技術はそれだけの効果があった。
考え方の基本や、常識的な行動や言動。
それらの土台となる知識や考え方、頭の働かせ方。
教養とはそういった技術であった。
先々を見通すという程では無いが、筋道をつけた考え方が出来るようになり、これからの方針が決まっていく。
より専門的な技術として『戦略』というものもあるが、これはとりあえず後回しにする事にした。
まだそれが必要な段階ではないと思ったからだった。
実際、教養を身につけた事でそれなりに考えがまとまった。
今はまだこれで十分に思えた。
しかし、これで経験値を使ってしまったので、あと半年から一年は次の行動に移れない。
それがもどかしく思えるが、こればかりはしょうがなかった。
やる事も多い。
先の事を更に考える事が出来るようになり、やるべき事が数多いのに気づかされた。
欲しい技術はたくさんある。
その中から今必要なものだけを選んでいく。
寿命という形で時間は限られている。
特にこの時代、寿命は極端に短い。
せいぜい二十年から三十年といったところだ。
栄養状態と生活環境が余りにも隔絶してるのでこうなってしまう。
これをどうにか改善せねばならなかった。
この限られた時間を有効活用せねばならない。
とにかく無駄な事はしていられない。
とにもかくにも経験値である。
これを稼ぐために作業に励んでいかねばならない。
日々の積み重ねのなかで経験値は積み重なっていく。
一回一回の獲得は少ないが、これを繰り返さない事にはレベルを上げる事は出来ない。
ありがたいのは、生活に関わる事を繰り返すだけで経験値が入る事だった。
頭の中であれこれとやり方を考えるだけでも経験値は貯まっていく。
実際に行動にうつせば更に多くが手に入る。
行為の成功ならもっと大きい。
失敗しても、何もしない時よりは多くの経験値が入る。
本当に何もしないでいる時には全く手に入らないが、作業などに関連する事で頭を使っていればほぼ確実に入手出来た。
おかげで狩りをしている間はかなりの経験値を手似入れる事が出来た。
残念ながら教養は狩りの成果を上げる事はなかったが。
それについてはもっと別の技術が必要なのだろうと思った。
より高いレベルが求められるのかもしれない。
どちらにせよ、すぐに確認する事は出来そうにない。
次の技術を手に入れるだけの経験値が入ってこなければ。
そんなこんなで半年。
予定通りにヒロフミは次の技術を手に入れるだけの経験値を手に入れた。
それを用いて『植物知識』を手に入れた。