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転生して異世界に指導者として出向くことになった  作者: よぎそーと
三章

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37/57

37歩目 ここまで来たらむしろ手を出さないのも一つの道だが

 機が熟していく。

 人口比は大きく拡がり、動員できる戦力は増えた。

 弓と馬による戦闘力の差も大きい。

 一番厄介なやる気・動機も十分に高まっている。

 いずれ来たるだろうという瞬間がとうとうやってきた。

 これでようやく元の集落に攻め込む事が出来る。

 周りの人間から少しずつ説き伏せ、集落全体を戦闘へと向かわせていく。

 もちろんそそのかす訳ではなく、ヒロフミが先頭に立って戦う事を前提にして。

 他人をけしかけるわけにはいかない。

 賛同者がいないとどうしようもないが、全てを他人に押しつけたりはしない。

 言い出した自分もしっかりと参加する。

 それくらいの誠意は示していかねばならなかった。

 でなければ他の者達がついてこない。

 嫌でもなんでも率先してやらねばならなかった。

 自分でやり始めた事ならば。

 目的を達成したいならば。

 嫌とは言ってられない。



 幸いにも、というのもおかしいが、各集落のやる気は大きくなっていた。

 特に直接の被害にあう集落は、これ以上の損害を出さないために早急な対応を求めていた。

 しかし、そこにも温度差は発生する。

 川下の方に拡がる集落も危機感を抱いてるが、元の集落に接してる所ほどではない。

 なるべく急いだ方が良いとは思っていても、すぐに対応しようとまでは思っていない。

 衝突するとなればどうしても損害が出る。

 それを考えると及び腰になるのも無理はなかった。

 このあたり、毎度のように襲撃をうけている集落と差が出てしまう。

 こればかりはやむをえない。

 なので、やる気のある者だけでも対策に参加してくれれば良いと考えていく。

 もとより全員の参加までは求めてない。

 少しでも多くの人間が参加してくれればそれで良かった。

 川下の集落全体で五百人を超える。

 その一割だけでも五十人になる。

 それだけいれば、必要にして十分な人数になる。



 そんなこんなでどうにか人数を集め、元の集落に乗り込む計画をたてていく。

 相手はかなり切羽詰まってるようで、略奪に来る間隔が狭まっている。

 食べられる物がそれだけ減ってるのだろう。

 襲ってきた者を迎え打って始末してるので、持って帰れる物も減っている。

 人数が減ればその分持ち帰る量も減る。

 足りない所にわずかな収穫とあれば、どうしても何度も出向くしかなくなる。

 そして、出迎えの弓矢や石斧で人数を減らし、更に実入りは減る。

 悪循環もきわまれりである。

 毎回一人二人と倒されていくので、集落の人数は更に減ってるはず。

 詳細な人数は分からないが、ヒロフミが手引きして脱出させた時よりも増えてるという事は無いだろう。

 その後子供も生まれてるかもしれないが、想像する食糧事情では生まれた後の育成が可能とも思えない。

 遠目に状況を確かめに行った時にも、活気が全く感じられなかった。

 田畑もほとんど手が入ってない。

 というより荒れるにまかせているようだった。

 少しくらいは作物を作ってると思っていたのだが、それらしき所もない。

 まさか全くやってないとは思わなかったが、それにしても作物らしきものが見あたらない。

 しなくても良い心配をしてしまうくらいだった。

 こんなんで普段どうやって生活してるのかと思ってしまう。



 それでも時折盗みに来るので、まだ何人かは生き残ってるはずだった。

 どうやって生きてるのかは分からないが。

 しかし、かなり追い込まれてるはずである。

 倒した強盗の姿を見てそう思う。

 よくこれで生きてるなと思う程やせている。

 骨と皮といって良い状態だった。

 最初の人生の頃、畑作に入る前の頃よりも酷い。

 その頃も食料の確保が不安定で、体はかなり細かった。

 ここ最近は食料が安定したので、そんな状態は脱していたが。

 まさかその頃に戻ったような姿を再び見ることになるとは思わなかった。

 しかし、それはある意味攻め込む好機を伝えてくれている。

 もし元の集落の者達が全員こんな状態ならば、大きな抵抗もなく攻め込む事が出来る。

 損害を出すことなく掃討する事が出来るなら、それにこした事は無い。

 もう少しすれば更に有利になるだろう。

 酷い話であるが、相手の食料事情が更に悪化し、まともに動ける者が極限にまで減った所を狙う事も考えていく。

 それまで襲撃に悩む事になるだろうが、いずれそれも止む。

 動ける者がいなくなれば、確実に襲撃は終わる。

 それが何時になるか分からないが、それまで待つのも方法の一つであった。



 しかし、ここで思惑が外れる。

 集落のほとんどの者達が攻め込む事に意見が変わっていた。

 今までと真逆に。

 元々攻め込む事に賛同していた者達が終結していたせいもあるだろう。

 しかし、それ以上に今まで我慢してきたものが爆発した感がある。

 度重なる襲撃によって、怒りが爆発してもいた。

 これ以上待つつもりは全く無いといった有様である。

 今までの慎重さはどこに消えたのだと、ヒロフミは唖然としてしまう。

 意見がヒロフミと他の者達で逆転してしまっていた。

 状況を鑑みてヒロフミが慎重になってるのに、他の者達は怒りが限界を突破してしまっていた。

 これではどうする事も出来ない。

 やる気が無いよりマシと思うしかなかった。

(けど……)

 それでもやりきれない気持ちになる。

(結局、俺の意見とは真逆にいく事に変わりはないか)

 かつては攻め込む事を否定され、今は慎重になる事を否定される。

 そうそう思い通りになる事などないとは分かってるつもりだったが、これはあんまりだと思った。

 自分がやってきたのはいったい何だったのだろうと考えてしまう。

(まあ、やるしかないか)

 最善とは言えないが、悪い事ではない。

 やる気があるならそれを上手く用いていこうと思った。

 何もしないで終わるよりは良いのだからと。


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おまえら、教えやがれ
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http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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