34歩目 折角だから人材を引き抜いてくる
その後も何度か下見を繰り返し、動物の種類と位置を特定していく。
あわせて周辺地域の大雑把な略地図も完成させていく。
今まで文字による記録や個人の記憶でしかなかったものが、目で見える形になっていく。
測量をしていったわけではないから大雑把なものになるが、無いよりははるかに良い。
今後はより正確な測量が出来れば良いが、当面はこれがあれば十分である。
そして、今回の探索にる成果を元に、次の行動に移っていく。
見つけてそれで終わりではなく、そこから始まっていく。
見つけた動物たちを捕獲し、連れてこなければならない。
その為の道具と人数が必要だった。
やり方としては、動物を追い込み、その先で捕獲、という事になる。
追いかける方もそうだが、捕獲する方も人数が必要になる。
その為にも可能な限り大勢が必要だった。
また、捕獲するための網も欲しい。
出来るだけ丈夫なものが。
すぐに全てを用意する事は出来ないので、やはり時間がかかる。
探索に出る事を許可した村の者達も、さすがにそこまで手間がかかると及び腰になる。
やるだけの成果があるのかと疑問が出てくる。
そこはヒロフミも説得しにくい部分だった。
動物を用いて田畑を開墾すると言ってもすぐには信じられないだろう。
かといって食用にするにしても、イノシシを飼育してるのですぐに必要という事もない。
どちらかというと、周辺地形の把握が主な目的だった村の者達は、これで十分だと判断していた。
何も急ぐ必要は無いと。
実際その通りなので、これ以上ねじ込む事は出来ない。
家畜の増加については無理だろうかと思ってしまう。
だが、これでくじけていては何も出来ない。
それから数日。
元の集落へと向かっていったヒロフミは、その中に侵入していく。
襲撃を何度も受けてる川上や川下と違い、そういった脅威に全くさらされてないだけに警備は薄い。
野生動物が田畑を荒らしにくるのを見張る程度である。
その中にある畑仕事に従事してる者達の家屋に入り、中の者と対面していく。
最初は何事かと思った彼等も、ヒロフミが川上から来たと言うと驚きながらも話を聞いてくれる。
切り出す用件は、ここからの脱出。
家族全員で逃げ出さないかという事だった。
この集落にいても先は無いし、時間が経っても解決する見込みはない。
それよりも、ここから逃げ出して川上に来ないかと誘っていった。
突然の事なので誰もが驚いたが、すぐに誘いにのってきた。
同じように他の家にも侵入して説得をし、数家族を連れて集落を離れる。
途中、見つかりそうになって遭遇したものを始末したりもした。
持ってきた弓と石斧はしっかりと仕事をしてくれる。
そのおかげもあり、ヒロフミは幾人かの家族を脱出させる事が出来た。
当然そんな事になったので周りは大騒ぎである。
余計なことを、騒動をもちこみおって、という意見が多数となった。
まあ、そうなるだろうなと思っていたが、想像に以上に風当たりは強い。
どうせそのうちぶつかり合うんだからいいじゃないかと思うのだが、周りの者達はそう思えないようだった。
(肝の小さいこった)
そう思うしかない。
むしろ、相手の戦力を引き抜いて弱体化させたのだからそれで良いではないかと思ってしまう。
もちろん相手の敵愾心をいたく煽ったであろう。
しかしそんなの今更である。
もう衝突というか、何度も襲撃を受けてるのだから、いい加減腹をくくってもらいたかった。
(まだやられっぱなしの癖が抜けないのかよ)
もう何世代も前、川上に集落を作る事になった事態を思い出す。
元の集落ではやっていけないと逃げ出してきたはずである。
なのに対抗する気は無いように見受けられる。
数の上ではほぼ同等、むしろ上回ってすらいる。
戦力で見ればかなり有利になってる。
川下の集落とあわせれば数倍以上の人口比になっている。
それらをもってすれば、一気に叩きつぶす事も出来るのだ。
にも関わらず攻撃を受けるのを怖がってるのが信じられない。
相手を挟み込んでるのだし、川上も川下も負ける要素が無い。
(それなのに……)
及び腰である事に泣けてくる。
いったい何をしてるのだと。
今回で元の集落の問題を解決しようと思っていたが、それも怪しくなってきた。
そんな集落の考えや方針を嘆きつつも、連れてきた者達の身の振り方を考えていく。
出来れば新たな田畑を切り開いてもらいたいが、そんな余裕もない。
まずは食べる物を確保せねばならない。
その為にも、狩人達に頑張ってもらわねばならなくなる。
かつて川上に逃げた者達がそうであったように、当面の食料確保で狩人達の成果に頼らざるえなかった。
今回、再びそんな事態になろうとしている。
ただ、それに加えてもう一つやりたい事も出来ていた。
必要な道具と材料を確保してそれらを始めていく。
そもそも、このために元の集落から人を無理矢理引っ張ってきたのだから。
網や縄を用意し、手順を伝えていく。
狩人にも参加してもらい、方法を煮詰めていく。
野生動物の捕獲のため、作戦が練り込まれていく。
やり方は単純だが、手順通りにやれるかどうかは未知数である。
一応何度か練習するが、どうしても動きが上手くいかない。
今までやった事がないから仕方が無いが、心配と不安が増えていく。
しかし、これをやらねば先はない。
確実に捕獲し、集落に連れてこなければならない。
でなければ、逃げてきた者達の居場所がなくなる。
ヒロフミも例外ではない。
これまでやってきた事を無駄にしない為にも、ここで成果をあげねばならなかった。
練習に時間をかけてる程の余裕もないの。
食料を分けてはもらっているが、それも長くは続かない。
本来なら田畑を耕して自分達の耕作地を作らねばならないのだ。
ヒロフミと一緒に動物の捕獲に向かってる時間はそれほど多くはない。
出来ればもっと練習をしておきたかったが、それもままならない。
色々と不足した状態で、ヒロフミは動物の捕獲に向かわねばならくなった。
続きはまた明日で。
しばらく一日一回投稿になるかと。
それと、長編を書く余裕がないで、ネタをとりあえず短編で出してる。
「異世界転移した現代人ががんばる話/試作品」
http://ncode.syosetu.com/n2989du//




