33歩目 情報を集めるのが先
訓練は熾烈を極め…………はしなかった。
将来を見越してある程度技術を身につけていた事もあり、ヒロフミが苦労する所はそれほど多くはなかった。
もちろん体力面において劣るし、技術面でも必要な段階にまで到達してないものもあった。
しかし完全な素人というわけではなく、それなりに出来るのも確かである。
「こりゃあ驚いた」
狩人達は少なからずそう感じていた。
完全ではないが、最低限の事は出来る。
それは明らかだった。
「足手まといにはならないようだな」
素直に評価をしていく。
狩人としては物足りないが、野外活動においては必要なレベルに到達している。
これなら十分だと判断された。
出発をあらためて認められた事で準備が加速していく。
干し肉などの保存食に、荷物を詰め込む麻袋に各種道具。
屋外での活動に必要になる道具をかなり集めた。
狩人達が声をかけたおかげもあってか、一人でやっていた時よりも集まるのが早い。
おかげで出発予定が大幅に縮まった。
もっと時間がかかる、一年くらいは無理だろうと思っていたのでありがたい。
その分、狩人からの指導も熱が入る。
出発してからでは何も教える事が出来なくなるから、足りない分を今のうちにと考えてるらしい。
生きて帰ってくる為にヒロフミも必死になってくいついていく。
正確には経験値を稼ぐ為である。
何もしないでいるより、何かしら訓練や経験を積んだ方が貯まりやすい。
それを手に入れて更なる技術向上を目指していきたかった。
そんなこんなで出発となる。
過去の探索事例からある程度目標を決めて進んで行く事となる。
欲しいのは家畜になる動物なので、それらしき目撃例のある場所を目指していく。
周辺探索の為に狩人達が残した記述が役に立った。
正確な距離や方角は分からないが、それでも目安にはなる。
その中で、まずは牛や馬に見えるものを探しにいく。
それらを掴まえて持ち帰りたかった。
その為にもまずは調査である。
当分の間は狩人達の行動範囲の中になる。
何日か屋外で活動する彼等の移動範囲は広い。
その中にある動物の目撃情報から目的地はある程度絞ってはいる。
とはいえ正確な地図もないので位置を特定するのは困難だ。
狩人達も記憶を頼りに行動してるので正確な位置を明言する事は出来ないようだった。
ただ、おぼえてはいるので遭遇地点へ案内する事は出来るという。
それを頼りにとにかく進むしかない。
幸いにも道に迷う事はほとんどない。
おかげでヒロフミも記録を付けるのが楽だった。
この時の為に身につけた『方向感知』の技術で進む方向も把握出来ている。
文字通りに方角を判別するものではなく、太陽や星の位置、切り株の年輪といった様々な情報からどの方向に向かってるのかを知る技術である。
これに測量技術を加える事で、おおまかな距離も分かる。
進んで行く方向と距離を図のように記し、辿った道の周囲の状況を書き込んでいく。
平原、森、丘といった単純なものだが、それを書き込んでいく事で大まかな地形が紙に写し取られていく。
今までは記録という言葉だけだったものが、図になる事で見やすくなっていった。
それと同時に狩人達が目撃したという動物の出現地点に近づいていく。
集落を出発して四日の事である。
運が良いことに、早速目撃された動物を見つける事が出来た。
「あれか」
遠目に見る四つ足動物に少し興奮した。
イノシシや鹿は見た事あるが、これは始めてだった。
しかし見た事のあるものだった。
直接接した事は無いが、かつてテレビなどで何度か目にした。
動物知識に頼るまでもない程である。
(馬だ……)
思ったよりも小さなそれは、間違いなく馬だった。
予想よりも早く遭遇する事が出来てありがたかった。
今後の事を考えれば貴重である。
「どうする、狩るか?」
狩人が聞いてくる。
彼等からすれば当然の考えだろう。
しかしヒロフミは首を横に振る。
「いや、今回は情報を集めるだけだから。
ここは無視して一度戻ろう」
残りの食料の事を考えると無理は出来なかった。
それに、狩人数人だけでは捕獲する事も難しい。
もっと大勢で追い込んでいかないと掴まえる事は出来ないだろう。
それは他の動物にも言える。
とにかく今は下見だけで十分である。
どこに何がいるのかが分かれば。
続きはまた明日で。
しばらく一日一回投稿になるかと。
それと、長編を書く余裕がないで、ネタをとりあえず短編で出してる。
「異世界転移した現代人ががんばる話/試作品」
http://ncode.syosetu.com/n2989du//




