32歩目 彼らの力を得なければ
「俺達にか?」
「当然。
あんた方がいないと成功する可能性が減る」
そういって狩人達との話を続けていく。
「かなりの遠出になる。
目的も決まってるってわけでもない。
でも、かなり広範囲を移動する事になる。
あんたらがいてくれると助かるんだ」
「ふむ」
そういって狩人達は考えこんでいった。
やるべき事については既に伝えてある。
それがどれだけ大変かも彼等は理解してるだろう。
だが彼等を引き込めなければ困難は跳ね上がる。
生きて帰ってこれるかもあやしい
だから絶対に引き込みたかった。
「だが、わざわざ外に行く必要があるのか?
動物なら今もいるだろう」
目的である家畜探しという事ならば確かにその通りだった。
わざわざ探しにいかなくても今いるだけで十分だ。
外に出て探しにいく必要性がほとんどない。
それもそうなのだが、ヒロフミはそれで終わらせるつもりはなかった。
「今いるだけでも確かに十分かもしれない。
けど、他にも使える動物がいるかもしれない。
それを見つけにいきたい」
食用というだけではない。
牛馬による農耕の手助けや移動手段が欲しかった。
羊なら羊毛も手に入る。
鶏なども手に入るなら手に入れたいところだ。
単に食べるだけでなく、その他の用途で用いる動物が欲しかった。
「その為にも、何がどこにいるのか調べておきたい。
狩人の皆が移動してる範囲だけじゃない。
その先にも向かってみたい。
そこがどうなってるのかを確かめるてもみたい」
集落の上層部が考えてる今後の開拓地の下見である。
狩人達があちこち回ってるのでこの近隣はある程度把握は出来ている。
だが、その先の事も今のうちにある程度調べておきたかった。
幸いにも、他の人類との接触はまだまだ先の事となる。
それは造物主にも確認した事である。
(いずれ接触するにしてもまだまだずっと先だろうって言ってたし。
その間にどうにかしておきたいな)
他の人類……部族と呼んだ方が良いかもしれないが、それらと接触した時に軍事で負けていたくなかった。
相手の出方にもよるが、いきなり戦争を吹っかけられるかもしれない。
そうでなくても、力を誇示して威圧してくる可能性がある。
それらに対抗できるためにも、ある程度文明を成長させておきたかった。
科学技術や知識、社会制度などを。
こちらが強くなっていれば、相手も迂闊に手を出さないだろう。
もしかしたら平和的に接触してくるかもしれないが、そうでない時も考えておかねばならない。
その為にも、何がどうなってるのかを調べる必要がある。
「まあ、言いたい事は分かった」
狩人の方もヒロフミの言い分は理解してくれたようだった。
「だが、お前に外に出る力があるのか?」
「外で生きていけるのかって事か?」
「そうだ。
一度出れば数日は帰ってこれない。
その間の生活は村の中とは比べものにならないほど厳しいぞ。
それが出来るだけの知識や技術がなければどうにもならん。
体力の方は言うに及ばずだ」
「確かに」
そこはヒロフミにとっても懸念すべき部分だった。
最初にこの世界にやってきた時は、部族ごと放浪していた。
言ってみれば全員が狩人であり、野外生活の技術や知識を身につけていた。
しかし今は違う。
その頃に比べれば格段に文明化されている。
生活水準は向上し、生きていく為の負担がかなり低下している。
それに伴い、必要な技術や体力も変わってきている。
狩人達に比べればそれらにおいて大きく劣るのは確かだった。
技術レベルにおいてもそれは言える。
ヒロフミもある程度レベルは上げておいたが、狩人達にかなうとは思っていない。
だからこそ、彼等の能力を求めてるのだ。
「そのあたりはあんた達に劣ってるよ。
だからあんたらに協力を求めてる。
俺だけでどうにかなるなら、わざわざ他の人間に頼んだりしない」
「……それもそうか」
そこは狩人も理解してくれたようだった。
多分に自負もある。
自分達が培って来た事に。
かつてに比べて著しく低下してしまった必要性への誇りもあった。
ヒロフミの言葉はそこを刺激した。
「ならばどうする。
お前が足手まといになるなら、色々と考えねばならないが」
「申し訳ないが、俺を連れていってもらう事になると思う。
その為に頼んでるようなもんでもあるしな」
「なるほど」
その言葉に狩人達は笑うしかなかった。
「正直なこった」
「嘘を吐いてもしょうがないからね」
「分かった。
協力するのはかまわん。
だが、俺らも足手まといの面倒はごめんだ。
それなりの事は出来るようになってもらう。
それが俺達が付き合う条件だ」
「分かった」
拒否するつもりはなかった。
相手の条件を受け入れ、ヒロフミは狩人の協力をとりつけた。
こんなの考えてる
「異世界転移した現代人ががんばる話/試作品」
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