3歩目 どこまで信じてよいのかと思いつつ
「つまり、どういう事だよ」
「言葉通りだよ。
異世界に行って、指導者になってもらいたい。
そこの人間を導いてもらいたい。
そうして欲しい世界を用意してある」
「なんで?」
「文明を発展させたいからさ」
「そうじゃない」
男の言う事をヒロフミは止めた。
「なんで発展させたいんだ。
発展させてどうするんだ。
そもそも、なんで異世界なんてもんを作る。
異世界を作れるあんたは何者なんだ」
聞きたい事がどんどん出てきた。
とにかく全てが謎だった。
疑問は言葉になって男へと向かった。
「そうだなあ」
男はその言葉に答えを向けていく。
「文明を発展させるのも異世界を作ったのも、理由は同じだ。
対抗する為」
「何に?」
「それに答える前に、俺の事だけど。
君らの言葉でいえば、神が一番近いのかもね。
どちらかというと造物主や創造主の方が正確だけど」
「なんだそりゃ」
どちらのどれだけの違いがあるのかが分からない。
そもそも神(造物主・創造主)というのが本当なのかも分からない。
「俺は世界や宇宙を作っただけ。
その後の事については余り介入出来ない。
そこに何かを送り込んだり作り出す事は出来るけど。
それがその後どうなるのかについては介入出来ない」
「作ったのに?」
「製造担当者と運営担当者の違いって言った方がいいかな。
作り出した後の運営は手を離れる。
そういうわけで、介入は極限まで制限されるんだ。
なので、俺は作り出した世界そのものに直接手が出せない」
「本当か?」
「真実かどうかを証明する手段はない。
なので、この話は信じてもらうしかない」
「嘘だと思ったら?」
「どうしようもないね。
あきらめるしかない」
男────造物主は肩をすくめた。
「それで、異世界を作って文明を発展させる理由だけど」
「ああ」
「こっちの世界に対抗するため」
「は?」
「いやね、こっちの世界のほうなんだけど、妙に考えが凝り固まっちゃってね。
自分らの世界だけしか認めないっていうか、自分らの存在が唯一だってことになっちゃってるんだ」
「はあ……」
「まあ、それだけなら良いんだけど。
なんでかそれを他の世界にも及ぼそうとしててね」
造物主は呆れて嘆く調子で語る。
「自分達と同じような展開を遂げない世界は認めない。
他の可能性なんて全部否定するって事にまでなっちゃってね。
はっきり言えば侵略しようとしてるんだ、これが」
「おいおい」
さすがに話の大きさに呆れた。
「だから、それを止めたい。
止めたいというか、止められないから対抗するしかない。
でも、こちらは世界を作ることは出来ても運営に介入は出来ない。
なので、これはと思った者達に指導者になってもらって送り込むしかない」
「いや、ちょっと待ってくれ」
色々と突っ込みたいことが出てきた。
「止められないってどうしてだよ。
それに、侵略ってなんだ」
「まず、俺達は世界の創造は出来ても介入は出来ない。
なんていうか、土台となる居場所とか世界を作ることは出来るけど、そこで動き回るプレイヤーを作ることは出来ない。
プレイヤーはあくまでこちらから独立した存在だ。
それらを作り出すことは出来ないんだ」
「それって、俺達みたいな人間がって事なのか?」
「そうだな。
それが一番分かりやすいだろうな。
多人数参加型のオンラインゲームが一番分かりやすいかもしれんな。
神だ魔神だ造物主だ創造主だって言っても、俺達が作れるのは世界だけだ。
せいぜい、ノンプレイヤーキャラクターくらいが限界だ。
生命をもった存在を作り出すことは出来ない」
「だったら、俺達はどうやって作られたんだよ」
「生命の根源から」
また新しい言葉が出てきた。
「そういうのがあるんだよ。
で、そこから生命となるものが作った世界にやってきて、形をとっていく。
俺達はその受け皿を作るのが仕事って事になるな」
「仕事って、会社員じゃあるまいに」
「一番近い言葉それだと思ったからね。
なんなら、役目でもいい。
とにかく、それが俺らの存在理由になってる」
「なんか、それこそプログラムか何かみたいだな」
「近いね。
その範囲の中でしか行動できないってのは正しい。
そして、その中に世界の維持というのもある。
受け皿を保つっていうのかな。
受け皿の上でのことはどうにもならないけど、受け皿事態は保っていかなくちゃならないんだ」
「それがなんで文明の発展とかに絡んでくるんだよ」
「世界の保持って部分で引っかかってね。
さっきも言ったけど、こっちの世界の中だけで留まってくれるんなら良かったんだ。
けど、他の世界まで手を出し始めてね。
どうやったのか知らないけど、別の世界ともつながりだしたんで、それに対抗しなくちゃならなくなったんだ」
「それで、文明の発展と?」
「そうだ。
対抗するために、世界を守るために文明を発展させなくちゃならない。
別の世界をつなげることで何がどうなるか分からないけど、世界の保全に障害が出る可能性が出てくる。
最低でもそれだけは避けたい」
世界の保持という観点からすれば確かにそうなのだろう。
「でもよ、世界そのものはともかく、そこで生きてる連中がどうなろうと関係ないんじゃないのか?
少なくともあんたらにとってはどうでも良いことだと思うんだけど」
「それがそうも言ってられなくてね。
生命の根源からくるものの受け皿としては、そこで発生した生命も保全することも仕事なんだ。
間接的なことではあるけど。
世界の中だけで何かが潰えるなら、それは仕方ないって事になるけどさ。
でも、今回の場合は外部からの、別の世界からの侵略だからそうも言ってられない。
なので対抗策を編み出さなくちゃならなくなったわけよ」
「それで俺を異世界に?」
「そうなる。
もちろん、別の世界から生命を運んでくる事になるから、これも難しいんだけど」
「おいおい。
禁止事項って事か?
やって大丈夫なのか?」
「なんとかギリギリ。
成長した魂を指導者として迎えるのは認められてるから。
そうやって文明の発展を短期間でまとめることも手段として存在してる。
生命の発展のためなら、これくらいは良いみたいなんだ」
「そのあたりの区切りが良く分からん」
「俺もだ」
造物主にも分からないことはあるようだ。
「そんなわけであんたを別の世界に勧誘したい」
「えー」
「引き受けてくれると助かる」
「なんで俺なんだよ」
「それだけのものを持ってると思ったからだ」
造物主は本気のようだった。
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