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転生して異世界に指導者として出向くことになった  作者: よぎそーと
二章

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21/57

21歩目 寒さが身にしみる季節だからこそ

「それじゃ、やろうか」

 数日ほど材料を運び込む事に費やしてから作業にとりかかる。

 やるのは、家造り。

 まずは居住出来る場所を確保する事が先決だった。

 このままではいずれ冬もやってくる。

 それまでには住み込める場所を確保せねばならない。



 柱をたてて縄で材木を固定し、屋根に茅を葺いていく。

 その周囲に堀をつくり、動物が襲ってこれないようにする。

 今後の事も考え、建設する場所も決めながら建てていった。

 無計画に家が建ち並んでしまってる集落の二の舞になるわけにはいかない。

 今後の発展もある程度見越しての建築をしていかねばならなかった。

 とはいえ、建ててるのは大人数が止まり込める少し大きめのもの。

 各自の家を造ってるわけではない。

 建ててもせいぜい三軒くらいなので、そこまで場所に頭を使う必要は無い。

(将来は集会や会議の場所に使いたいな)

 そういう用途を見込んでの建築ではある。

 あるのだが、考えるのはせいぜいそれくらいだ。

 ここをこれから作る集落の中心にしたいとは思うが、それだけで良い。

 今はまだ。

 皆の家を建てるなど、それこそまだまだ先の事になってしまうのだから。



 その寝床も完成し、作業が本格的になっていく。

 当面の食料として川にウケを設置しての魚獲りと、平地部分の草刈り、用水路作りが進められていく。

 特に用水路は、水が冷たくなる前に造りたいと誰もが思っていた。

 それだけに最優先で作られていく。

 冬から春にかけての、水の冷たい時期に作業をしたいと思う者はいない。

 誰もが必死に作業に取り組んでいった。

 その甲斐あってか、一ヶ月もしないで水路らしい溝ができあがった。

 見てくれは良くないが、用途を果たすには十分なものになった。

 それがおわってから畑作りになる。

 いまだ狩れずに残る雑草を、石器で掘り起こすように刈っていく。

 刈り取った雑草は堆肥にするために一カ所にまとめて積み重ねていく。

 時間はかかるが、あとは腐敗して土に戻るのを待つだけだ。

 虫もわいてくるので、住居からは出来るだけ遠くに置いておく。

 それらが終わったあとに、畑になる予定の場所が出来上がる。

 集落の畑に比べれば狭いものだが、こればかりは仕方ない。

 あとは生い茂る森を切り開いていく事になる。

 それはさすがに時間も手間もかかる。

 冬から春にかけて地道に継続的にやっていくしかない。

 木材も木炭も必要なので、どのみち伐採はある程度進める事にはなる。

 開拓開墾のついでにそれらを手に入れていく。

 冬に向かって暖をとる事も重要になるので、可能な限り集めておきたかった。

(ストーブが欲しい。

 炬燵も)

 特に後者は冬の寒さを迎える度に思い出す。



 他にも、風呂がないのが地味に辛い。

 お湯に身を浸すというのがこの時代では難しい。

 お湯自体は沸かせば良いのだが、人間一人が入れるだけ湯船を作る事が出来ない。

 陶器で作るには大きすぎるし、何より強度に問題がある。

 檜風呂とまでいかなくても、木材で作るのも同様に難しい。

 それが出来るほど鋭利な工具がない。

 こんな所からも、鉄器の重要性を感じていく。

 よりよい道具を作るには、優れた道具が必要になる。

 石器ではどうしても出来ない事が多い。

 文明を更に高度なものにするためにも、金属加工が必要になる。

 なのだが、そこに手を出すのはまだ先の事になると覚悟はしていた。

 ここでも人手が足りないという壁にぶつかってしまう。

 前回でも、田畑の拡張が難しかった原因である。

 何かをやるにしても、そちらに回る事が出来る人がいなければ何もできない。

 それに、田畑を耕して得られる糧が、そういった者達を養える程でなくては意味がない。

 どれほど便利な作業道具を作れるとしても、そんな職人を養えなくては意味が無い。

 当たり前だが、職人は直接食料を生産するわけではない。

 そんな者を抱えておくためには、それだけの食料生産を上げねばならない。

 今現在の農業技術では、その為にかなりの耕作地とそれを耕す農民が必要になる。

 とても今現在の人口ではそこまで賄う事は出来ない。

 例えヒロフミが鉄を作る技術を身につけても、宝の持ち腐れとなってしまう。

 もちろん鉄製の道具があれば作業ははかどる。

 石器に比べて作業の進みは早くなるだろう。

 だが、石器に比べれば高い技術力が必要になるし、設備も作らねばならない。

 かかる手間の大きさと投入する物資などを考えるとおいそれと手を出す事は出来ない。

 何より鉄を採掘してくる所から始めねばならない。

 鉄鉱石を手に入れ、更にそこから鉄を取り出していく事になる。

 どれだけの設備が必要になるか想像もつかなかった。

 おそらく五人や十人では全然足りない。

 何十人と必要になると考えられる。

 三百人にもならない現在の集落では夢物語だった。

 まずは人口を増やす事。

 本当にそこから始めるしかない。

 その為にも、耕作地を増やさねばならない。

 拡大のために今後はあちこちに入植していかねばならなくなるだろう。

 今回の開拓は、その為の手法の確立が目的と言える。

 入植にどれだけの手間がかかるのか、何が必要になるのかを知らねばならない。

 壮大な実験である。

 だが、今回成功すれば、今後の弾みにもなるだろう。

 是が非でも成功させねばならなかった。



(ま、まだまだ先の話だ。

 次の転生……でもまだ無理かもしれないし)

 このまま順調に人が増えていって、食料生産に従事しない人間を抱えられるようにならねばならない。

 その為の人数がどれだけ必要になるか想像もつかないが、やるしかないのだ。

(何千人くらいは欲しいよな)

 厳密に計算したわけではない、大雑把に考えて出した数字である。

 最低でもそれくらいの人数は必要なのではないかと思えた。

 あるいは、もっと大勢の人間が必要になるかもしれない。

 となると、もう一度転生したくらいではまだ無理かもしれなかった。

 ならば今出来る事をひたすらに推し進めるだけである。

(とにかく、畑をいっぱい作らないと)

 ついでに、家畜ももっと殖えればと思う。

 食用にしろ作業用にしろ、牛や馬がいればかなり出来る事が拡がる。

 特に今後あちこちに集落を作るとなると、移動や輸送に馬などが必要になるだろう。

 騎乗もそうだが、馬車なども欲しい。

 今だって、住居から畑まで遠い所に向かうには徒歩では難しいのだから。

 他にも、畑を耕すのに、牛に鋤を引かせる事も考えられる。

 食用以外でも動物の活躍を求めていた。

(それも、牛や馬が見つかれば……だよなあ)

 この世界にもいるかもしれないが、それがどこにいるのか分からない。

 早く見つからないものかと思ってしまう。

 手に入らないものを求めても仕方が無い事ではあると分かっていても。

 牛や馬にしろ、鉄などの金属などにしろ、今はまだ手が出せないものである。

 そんな事で悩むのは無駄であろう。

 求める気持ちをおさえる事は出来ないが、今は諦めるしかない。

(先の事より、まずは明日の事だしな)

 頭と気持ちを無理矢理切り替えていく。



 皆と共同で使ってる家から出て、居住とは別用途に使ってる小屋へと向かう。

 作り自体はそれほど変わってるわけではないが、こちらは幾分小さい。

 その中に入ると、蒸し暑い熱気が充満していた。

 密閉性はさほど高くないので、熱気は結構逃げてるはずなのだが、散逸する以上の熱気と湿気が生み出されている。

「あ、来たんだ」

「おう、入れ入れ」

 中にいたものがヒロフミを招き入れる。

「やってますね」

 声をかけると、「ああ」と返事が来る。

「これが無いとなあ」

「夜も冷えてきたし、暖まんないと」

「石も焼けて、良い具合に湯気が出るぞ」

 そう言って一人が瓶に入れた水を、近くにあった石にかける。

 小屋の中心で焼かれていた石は、かけられた水をすぐに蒸気にしていった。

 そんな石が、小屋の隅の方に置かれている。

 水をかけられたそれらが水蒸気になって部屋の中はかなり蒸れていた。

 蒸し風呂。

 この小屋はそのためのものだった。

 風呂を断念するしかなかったヒロフミが思いついたものである。

 焚き火以外で暖まる方法が出来た事で結構評判も良い。

 それに、意外と汚れも落ちる。

 体に触れた蒸気が水滴になると、汚れがどんどん落ちていく。

 これにはヒロフミも驚いた。

 とにかく疲れた頭を熱気にひたし、体を蒸気の中に置く。

 それだけで疲れが消えていくのを感じた。

 後で体をぬぐうのは手間だが、今はこの小屋の中で思考を停止しておこうと思った。

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おまえら、教えやがれ
  ↓
  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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