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転生して異世界に指導者として出向くことになった  作者: よぎそーと
一章

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2歩目 死んだらこんな奴に呼び出されたようだ


「やあ」

 何とも軽い調子だった。

 友人に声をかけるような、見知った者同士の挨拶のように。

 しかし、見ず知らずの相手にそうされれば警戒の方が先に立つ。

 まして状況が状況だった。

「誰だ?」

 そう言ったとしても咎められる事は無いだろう。

 相手もそこは気にしてないようで、

「まあ、そういう反応になるか」

と言って肩を落とした。

 もっとも、落胆してるという程でもない。

 やむをえない、仕方ないといった感じで、特に深刻な感じはしない。

 だが、ヒロフミの方はそうはいかない。

 そもそも、相手に気を向けてる余裕もなかった。

「……どこだよここは」

 全く見知らぬ場所である。

 どこまでも拡がる草原。

 そんな所に何故か突っ立っている。

 もちろんこんな所に足を運んだおぼえはない。

 直前までビルの間の路地に身を潜めていたのだ。

 おおっぴらに出来ない理由により負傷し、そこで出血と共に意識を失った。

 そこに至る経緯を考えれば、そのまま命を失っていくのが当たり前だった。

 仮に治療などの措置が間に合い、奇跡的に命を繋ぎ止めたとしても、こんな場所に出て来るわけがない。

 世の中完璧はないと言われるが、目をさますのは病院のベッドの上が妥当なところだろう。

 なのに、居るのは屋外である。

 何よりおかしいのは、負ったはずの傷が綺麗サッパリ消えている事だった。

(どうなってんだ?)

 とにかく疑問しか出てこない。

 答えが出てくる事はないが。

 そんなヒロフミに目の前の男が声をかけてくる。

「色々と思う所はあるだろうけど、とりあえず一つだけはっきりさせておこうと思うんだ」

 何だと思ってそちらに目を向ける。

 相手はその視線を受けて口を開く。

「君は死んだから、ついさっきね」



「……はい?」

「うん、信じられないだろうね。

 でも嘘じゃないから。

 君だって分かってると思うけど、あの怪我であの状態で生きながらえるなんてあるわけないから。

 体を数カ所撃ち抜かれて出血多量。

 しかも一発は急所に入っていたし。

 即死はないにしても、まず確実に助からないよ。

 手術したって無理だろうしね」

 恐ろしい事を淡々と喋る男に、ヒロフミは唖然としていく。

「じゃあ、ここはどこなんだよ。

 俺は何で生きてる?」

「いや、死んでるから。

 それでここに来てるんだから、君は。

 分かりやすく言うと、死後の世界だから、ここは」

「…………」

「まあ、すぐには信じられないだろうね。

 でも事実をしっかりと受け入れてもらいたい。

 でないと話を進める事も出来ないから」

 混乱する、というか意識が停止してしまっているヒロフミに要望がつきつけられる。

 もちろん対応する事も出来ず、ヒロフミは男の言葉を頭の中で繰り返していった。



「落ち着いたかい?」

「ああ、なんとか…………いや、まだ何がなんだか分からん」

「しょうがないね。

 むしろ、ちゃんと話せるだけありがたい」

「そうなのか?」

「他の人だと全然話が出来ない事もあったから」

「ちょっと待て。

 つまり俺以外にも会ってきたってのか?」」

「もちろん。

 候補者として色々な人間を見繕ってるから。

 さすがに一人に全てを期待するわけにもいかないし」

「危機管理としては妥当だな」

 可能な限り手数を増やして、全部が失敗する可能性を減らす。

 悪い方法ではない。

「それで、鉄砲玉の一人として俺をどうしたいんだ?」

「まあ、そう卑下しないで。

 確かにそうしてるとしか言えないけど、決して悪いようにしたいわけじゃないから」

 どうだか、としか思えなかった。

 何が良くて、どれが悪いのかなんて判断材料がないのに決められない。

 例えどれほど都合がよい展開があったとしても、それが目の前のこの男の都合でしかない可能性は十分にある。

 結局掌の上で踊ってるだけというなら、それはそれで気分が悪い。

「何をやらせるつもりか分からんけど、あんたの都合だけで流されるのはごめんだぞ」

「そう言われるときついな。

 何せ、俺の都合で動いてもらう事になるわけだし」

「じゃあ、他をあたれ」

 ヒロフミは即座に返答をした。

「お前の都合なら、あんたがやればいいだろ。

 他人を使うな」

 正直に言うあたりは好感がもてないでもない。 

 だが、利用されるのが分かってて、はいそうですかと納得するつもりもなかった。

 例えどれほど好条件でも、どれほど便宜を図ってもらうにしても、他人を利用しようとする奴とは行動しない。

 それもまたささやかな人生経験で得た貴重な教訓だった。

「やりたきゃ自分で動け」

 それが出来ない奴、裏に隠れてうまい汁を吸おうとする連中は決してやらない事である。



「なるほどね」

 男はヒロフミの言葉に、何故か満足げな表情を浮かべた。

「確かにその通りではある」

「分かってんのか」

「そりゃね。

 こっちも今まで色々あったから。

 で、自分なりにあれこれ考えて動いてるところだよ」

「ふーん」

「まあ、他の誰かを使ってるのは確かだが」

「俺はそれにのっかるほどお人好しじゃないぞ」

「だろうね。

 となると難しいかな」

「何が?」

「こっちの用件について。

 君にやってもらいたい事があるんだ」

「何を?」

「異世界の指導者」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「うん、もう一度言ってくれ」

「異世界の指導者」

「…………なあ、あんた何を言ってるんだ?」

「いや、本当に本気で言ってるんだよ」

 軽い口調による台詞は、とてもそう思わせるようなものではなかった。

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おまえら、教えやがれ
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http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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