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転生して異世界に指導者として出向くことになった  作者: よぎそーと
一章

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16/57

16歩目 終わった前回とこれからの次回の間で

「…………」

「どうした?」

「いや、なんて言うかね。

 またここに来るとは思わなかったなー、ってね」

「転生前に言ったじゃん。

 死んだらここに戻るって」

 そう言って腕を広げて周囲を示す。

 確かにこの場は前世で死亡直後にやってきた場所である。

 ここで勧誘を受け、色々と話を聞き出し、様々な条件を見当して転生した。

 それはおぼえている。

 死んだらここにやってくる事も含めて。

「本当だとは思わなかった」

「嘘吐いても仕方ないだろ」

「いや、どこで引っかけてくるか分からないだろ」

「そりゃどうかもしれないけどさ……」

 すねた様子を見せる造物主に笑いそうになる。

 笑みを浮かべたまま気を引き締める。

 こうやって相手を油断させて心理的な防御を崩して溶かすのは、騙す者の常套手段である。

 目の前の造物主がそうである可能性はまだ捨てられない。

 転生させる理由なども未だに不明なのだ。

 本音を語ってるならともかくだが。

 しかし、相手が事実や真実を述べてるとは限らない。

 仮に嘘はないにしても、黙ってる事はあるかもしれない。

 いくつかの事実を隠し、本音と正反対の事を伝えてきてるかもしれない。

 黙ってるというのも、嘘の一つだとヒロフミは考えている。

 全てを洗いざらい喋るまで相手を信用する理由は無い。

 それでも望み通りに転生してやっているが、それは相手の真意を知るためである。

 危険ではあるが、踏み込んでみないと分からない事はある。

 かなり難しい事だが、実際にやってみるしかない。

 そう思って、造物主なるこの男の世界とやらに出向いている。

 本当にそれが世界と呼べるものなのかすら疑いながら。



「それで、これからどうすればいいんだ?

 前に、一度人生が終了したら時間をおいてまた転生して欲しいって言ってたと思うが」

「ああ、おぼえててくれたんだ。

 もちろんそうしてもらいたい。

 多少は文明的になってきてるけど、まだまだ全然進歩が足りないからね。

 もっと加速させてもらいたい」

「でも、そう簡単にできるか分からんぞ」

「それも分かってる。

 失敗するかもしれないとは思ってる。

 それでも、何もしないよりは可能性がある。

 多少失敗するくらいはしょうがないさ」

 そのあたり割り切ってるようだった。

「それに、失敗しても次でやり返せば良いし。

 下手な鉄砲だったら、いっぱい撃てばいいだけだしね」

「つーと、俺はばらまく弾丸の一つって事か?」

「そういう事になるね。

 だから、気楽にやってくれればいいよ。

 上手くいけば儲けものくらいな調子で。

 もちろん、上手くやって欲しいけど」

「まあ、才能が無いのは認めるけど」

「そうじゃないよ。

 変に気負って自分を追い込んだりしないで欲しいんだ。

 何せ長丁場だから。

 頑張りすぎたら続かないよ」

「それもそうか」

 すんなりと納得してしまった。



「でも、次もあるんだろ?」

「ああ。

 暫くして、君がいたところがある程度安定したら行ってもらいたい。

 今度は前よりは楽だと思うよ。

 少なくとも生活の方は。

 君の努力の賜だよ」

 言いながら造物主は空中に映像を浮かべる。

 ヒロフミがいた村の様子が映し出されている。

「君がこっちに戻ってきた直後あたりから、少し早回しで見ていくよ」

 そう言うと、映像の端の方に、経過時間が表示され、それが勢いよく動き出した。

 あわせて映像の中の村の様子も動いていく。

 そこにいる人々が目にもとまらぬ早さで動き、村の姿が少しずつ変わっていく。

 田畑が増え、牧場が拡がり、家が増えていく。

 行き交う人々も増え、人数は前回よりもかなり増えていた。

 それがある程度まで進んだところで、年月を示す数値の勢いが落ちていく。

 月日はざっと一百年ほど経過していた。

「だいたいこれくらいかな。

 世代で言えば五世代くらいは進んでいる。

 その間に、君のいた村はこれくらいになってるよ。

 人口は、だいたい二百五十人くらいかな?

 生まれる者や死んでいく者がいるから多少は変動してるけど。

 だいたいそれくらいだと思ってくれ」

「結構増えたな」

「うん、君が生み出したものを発展させていってるし、まあまあ頑張ってるんじゃないかな」

 途中経過は大幅に省略されたが、結果を見れば概ね成功してるのが分かる。

 あの環境で潰える事無く続いてるというだけでも運が良い。

「ここから何が出来るか分からないけど、また上手くやって欲しい。

 出来る事だけでいいから、確実な一歩を踏んでいってもらいたい」

「出来るだけ頑張るわ」

 何が出来るか分からないながらもそう返事をした。

 造物主も頷く。



「それじゃ送り込むけど、いいかな?」

「ああ、やってくれ」

「うん、それじゃいくよ。

 前の人生で身につけた技術はそのままもっていけるから。

 さすがに物は無理だけど」

「まあ、必要なものは現地で調達するわ」

「そうしてくれ。

 君の子孫が頑張ってるから、何かしら手に入れられると思う」

「だといいけど」

「まあ、子孫というか、君の血筋の所に生まれるんだから、それなりに融通はきくでしょ。

 赤の他人ってわけじゃないんだから」

「どうだかねえ。

 こればかりは分からんよ」

「まあ、頑張ってくれ。

 それと、血筋はちゃんと残してくれよ。

 でないと転生させる先で困ることになるから」

「はいはい。

 なるべく努力はするよ」

 このあたり転生の難しいところであった。

 血筋を持つ子孫の所に生まれると、前世の記憶などを持ち越す事が簡単らしい。

 子孫には先祖の霊魂が分かれていくからだと言う。

 詳しい事は分からないが、血を分けた子孫がいると便利だという事だ。

 ただし、男の霊魂は男子の血筋に、女の霊魂は女子の血筋でないと駄目らしい。

 霊魂にも性別というものがあるようだ。

 まあ、ヒロフミにそのあたりの詳しい事は分からない。

 そういうものなのかと納得するしかない。

 ただ、血筋と関係のない所に生まれると、前世の記憶などを失ってしまう事になるとは聞いている。

 完全になくなるわけではないらしいのだが、かなりの欠落を覚悟する事になるとか。

 転生そのものは出来るらしいのだが、このあたりが面倒な部分になる。

「まあ、血を絶やさないように頑張るよ」

「そうしてくれ。

 まあ、君が子供を作れなくても、他の血筋が生き残ってればいいんだけどね」

 つまり、遠く離れた親戚であっても、男なら男の血筋で繋がってれば良いという事になる。

 これまた不思議なものだと思った。



「それと、念のために前回のお嫁さんも転生させるから」

「なに?」

 意外な事を言われて驚く。

「一度結ばれた者同士で何かしらの縁が生まれやすいものだから。

 お互い引き合う可能性は高くなるよ。

 相手が見つからない場合の保険ってことで」

「はあ……」

 何と言えば良いのか分からない。

「でも、良いのか?

 あいつらの気持ちとかはどうすんだ。

 嫌だと思ってるかもしれないし」

「それは大丈夫だろ。

 お前さんがよっぽど酷い事をしなければ。

 もちろん、お前さんがあの二人が嫌だっていうなら、その気持ちを大事にすればいいし」

「断ってもいいってこと?」

「もちろん。

 相手がどうしても駄目なら無理は出来ないさ。

 その時は、もっと良い相手を見つけてくれ。

 そこは努力と運による事になるけど」

「まあ、それくらいは」

「前回の二人と一緒にやっていくのにも、努力と運が必要だけどね」

「結局それなりに苦労はするって事か」

「何でもそうだよ。

 多少楽になるって程度でね。

 もっとも、手間を省けるならその方が良いと思うけど」

「違いない」

 しなくて良い苦労はしない方が良い。

 苦労なぞ買ってでもするようなものではない。

 したいならやりたい奴がやれば良いとヒロフミは思っている。

「そんなわけだから、次の人生もがんばって」

 話をおえた造物主は、そう言うとヒロフミを転生させていった。

 浮遊とも落下ともつかない感覚をおぼえながら、ヒロフミは新たな人生へと向かっていく。

(次はどうなるやら)

 不安と期待を抱いて。


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おまえら、教えやがれ
  ↓
  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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