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転生して異世界に指導者として出向くことになった  作者: よぎそーと
一章

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14/57

14歩目 十年がもたらしたもの

 イノシシによる牧場が作られてから十年ほどの歳月が流れる。

 その間に集団の様相はかなり変わっていった。

 まず、移動を前提とした集団ではなく、定位置に居住する集落となった。

 田畑と牧場が食料供給の中心になったのだから当然であろう。

 それに伴い、狩りによる獲物の確保は重要度を下げていった。

 ただ、全く必要なくなったわけではない。

 周辺の偵察と、村に近づく動物の排除などが作業の中心となっていく。

 そう言ってよければ、狩りをしていた者達は防衛の為の軍事力へと性質を変化させていった。



 ヒロフミ達の畑や牧場も順調に拡大…………とはいかなかった。

 やはり人手が限られてるので迂闊に広げるわけにはいかない。

 広げればそれだけ手間がかかり、収穫量の確保も難しくなる。

 一度に工作に用いる事が出来る範囲はどうしても限られていた。

 だが、新たな畑を全く作らなかったわけではない。

 休耕地を作る為にも、畑そのものは増やしていった。

 おかげで、年ごとに畑を代えて作物を育てていく事が出来た。

 その間に休んでる畑の地力を少しでも回復させるよう努めていった。

 牧場の方も、管理者が一人しかいないので迂闊に拡大する事が出来ずにいた。

 イノシシは掴まえた当初より増えているのだが、一定数以上にはならないように調整していた。

 それでも牧場として使う場所は拡大させ続けていった。

 余談であるが、牧場で飼ってるイノシシの排泄物は、堆肥として用いていった。



 その間にヒロフミの技術も成長している。

 見る事は出来ないが他の者達もそれは同じだろう。

 手際がよくなり、新たな考えが浮かんできたりしている。

 それらの蓄積が改善をもたらしている。

 成果はさほど大きく無いが、手際は良くなっていった。



 そして十年の歳月は人を成長させていく。

 ヒロフミ達の所に生まれた子供もそれなりに大きくなってきた。

 まだ大人のように働く事は出来ないが、手伝いくらいは出来るようになっている。

 最年長であるヒロフミの子供は、今では父と同じように鍬を担いで畑に出るようになっている。

 おぼえる事は多いが、確実に畑に必要な智慧を身につけつつあった。

 他の子供も同じである。

 本格的な仕事は無理でも、小さな頃から親の手伝いとして仕事をおぼえていっている。

 七歳くらいからは本格的に仕事をおぼえ始める。

 それを見てヒロフミは拡大の時期が近づいてるのかもしれないと考えていった。



 この子供達が、それぞれの家にだいたい三人から五人ほどいる。

 ヒロフミは嫁が二人なので会わせて八人となっている。

 残念な事に、ここに来るまでに死んだ子供もいる。

 ヒロフミの家で一人、他の所でも一人か二人が幼くしてあの世へと旅だった。

 やむを得ない事と分かっていてもやりきれないものがあった。

 だからかもしれないが、無事に成長した子供達の姿を見てると嬉しくなる。

 その子供達が成長し、少しずつ仕事をおぼえていっている。

 この集落の将来がそこにあった。

 このままいけば集落の発展は間違いないだろう。

 少なくとも安定した食料の確保は出来るようになってきている。

 次世代への技術伝承も進んでいっている。

 更なる発展を求めたいところだが、それはまだ先の事だろう。

 それがなくても、ヒロフミがやり遂げた事だけでも十分な技術向上になっている。

 今後はこの技術の保全と継承だけでも十分である。

 それを為していくなかで、何かしらの改善や改良、そしてそれらを土台にした新技術が生まれていくかもしれない。

 それだけで十分だった。



 そんなヒロフミは、最後の仕事としてある物を作った。

 紙と墨、そして筆。

 材料を探すのに時間はかかったが、それを見つけてからは意外と早かった。

 紙を作るのも手間がかかったが、上昇させた工作のレベルなどがそれを補ってくれた。

 イノシシの毛から作った筆を用いて墨を引いていく。

 記憶の中にあるノートなどとは比べるのもおこがましい程の質ではある。

 しかし、紛れもなくそれは紙であり、書いたものは文字だった。

(これで記録が残せる)

 技術や知識の伝承が出来るようになった。

 他の仕事を差し置いてでもやり遂げたかった事である。

 これらの作成に成功すると、ヒロフミはこれらを可能な限り量産していった。

 そして、息子の一人に文字や文章を教え、それを他の者にも伝えるように指示をした。

 出来るだけ多くの記録を残し、後世に伝えるために。

 その積み重ねが後々大きな成果になってあらわれると知ってるからだ。

 相続に継承。

 これが世代を超えて文明を発展させる手段である。

 そこにようやく手が付けられるようになった。

 自分がここに生まれてきた理由を果たす事が出来ると、ヒロフミは安堵をおぼえた。

 わきあがるような歓喜とは違う。

 しかし、深く静かに、何処までも広く拡がっていくような安らぎを得ていった。


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おまえら、教えやがれ
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  ↓
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/479725667.html

『ピクシブのブースを使ってるので、その事を伝えておかねば』
http://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/477601321.html

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