桃園物語 第9話 再会
ピーチガーデン 第9話 再会
劉備は、いつものように、拵えた草履を携え街へと出かけて行った。
すると街の外門に人だかりが出来ている様子が目に入った。
好奇心でそれを見ると、外門の壁には、なにやらお触れ書きのポスターがでかでかと掲示されていた。
天下の義勇士志願せよ!
黄賊諸州に蜂起し、害毒となす。
賊を天誅せずんば、蒼天に青田なし。
遂に我、太守劉焉が市民の涙に奮い、討伐の鼓を鳴らさん。
しからば、天下の士、義人、各々、我が旗下に参加せよ。
さすれば武勇に依って、府に迎えられん。
と、書いてある。つまりは、義勇の士を募集する内容。
それを見て劉備、あぁ、と嘆く。
とすると、
"ああとは何だ?情けない!"
ある偉丈夫がそう言った。
んん?と振り向く劉備。
"あ、あれ?君は確か、いつぞやの、虎ヒゲ、、、ご恩人ではござらぬか?
どうしてここに?"
張飛、
"おお!誰かと思えば、君はいつぞやの劉君ではないか?久しぶり!元気にしていたか?"
劉備、
ん、まぁ、元気と言えば元気だが、、
張飛、
ま、いいさ!ところで、この檄文、しばらく見ていたようだが、君はどう思っている?
劉備、
どうって別に、、、
張飛、
別にとはなんだ?
君はお国のために力になろうとは思わないのか?
劉備、
思ってる。思ってはいるが、こんなところでは語れぬ。
張飛、
では、それがしの店に来たまえ。そこで話を聞こう。それに君に渡したいと思っているモノがある!ちょっと来てくれ!
張飛精肉店にて。
張飛、
"これだ。これを君に返そうと思っている。"
劉備、
"こ、これは?父の形見の宝剣ではないか?"
張飛
"そうだとも。この剣はどうも俺には似合わぬ。それに何だか使うのが勿体無い気がしてなぁ。もし今度君に会ったら返そうとずっと大事にしまって置いたのだ。"
劉備、
"しかし、それは君に一度はあげたもの。返してもらうのはどこか忍びない気がする、、。"
張飛
"そんなことはない!この剣は真実の主人を求めているのだ。俺には、剣が泣いているように思える。"
ブンブン!剣を振り回す張飛。
"どうだ?聞こえるだろう?この剣の慟哭が!"
劉備
"う、うぅむ。
その剣のことだが、、、実は"
とその宝剣の由来について語り始めた、、。
劉備、
"この剣は先祖代々伝わる父の形見の品。僕の父もおじいちゃんも靴を作り、蓆を織る、貧しい土民で生涯を終えたが、その先祖をよくよく辿れば、漢の中山靖王劉勝にたどり着くと言う。この剣は漢王朝の正しい血統を示す印綬でもあるのだ。"
張飛、
"で、では、君はもしや、、、"
劉備
"あぁ、そうだ。
我こそは漢の中山靖王劉勝の後胤、景帝の子孫にあたるものである。しかし、漢王朝の血を受け継いではいるものの、先祖はとうの昔に都を追われ、楼桑村の小さな村に流れ着いた。この劉備玄徳に至っては、小中高大と学問をし多少の知識は得たものの、毎日靴を作り蓆を織る生活に家貧しく、齢27になっても、今だに何一つ成し遂げられず、常に世を憂い、正そうとし、何度も名誉挽回と立ち上がるも、すべて志半ば、、今は、ただ、ただ、自身を嘆き悲しんでいるのだ、、、。"
張飛
"な、何と!まさか王家所縁の者がこの目の前におられるとは、、。
劉備殿、この燕人張飛が力になろう!是非、お供させてくれい!"
劉備
"君のような豪傑がお供に、、あぁ、ありがたい。しかし、いくら君のような偉丈夫でも、わずか2人では、、何ができましょうや"
張飛
"そのことなら、任してくれい!
是非、劉備殿に会わせたい人がいる。俺のアニキの関雲長と言う者だ。
今度連れてくるから、雲長ならきっと何かいい知恵を貸してくれるだろう!ならば、こうしてはおれん!早速、アニキのところに行ってくる!"
劉備
"そ、そうか、僕は楼桑村の桑の木の下の家に住んでいる。いつでも訪ねてくれ。"
張飛
"知ってるぞ!あのデカい桑の木だな!"
劉備
"そうだ。その桑の木の下にある家。そこが僕の家だ。"
張飛
"あいわかった!きっと行く!それでは!"
宝剣を劉備の手に渡すとすぐに、張飛は何処かへすっ飛んで行った。