桃園物語 第3話
The Peach Garden 第3話
( 劉備、賊に再び縛られ明日死迫る。絶体絶命のピンチな夜、何やら変な物音が聞こえて来た、からの続き。)
あ、明日、お、俺は死ぬ。
ま、間違いなく、こ、殺される。
な、なんとも短い生涯だ。
か、漢王室の末裔たる俺が無惨にも賊ごときに殺されるなんて、、あんまりだ。
ざ、残念だ。
む、無念だ。ただ、ただ、無念だ。
ガサガサ、ガサガサ、、
は、母のため、に、二年も死に物狂いで貯めたお金で買った洛陽の銘茶、そして、ち、父の形見。せ、先祖代々伝わる宝剣も、あの賊どもに取られてしまった、、は、母に合わせる顔も、もはや、、ない、、。
ガサガサ、ガサガサ、、、、
ろ、楼桑里にいる母は今頃どうしてるいるだろうか、、、?
ガサ、、、ガサ、、、
き、きっと息子の帰りを孤独に今か今かと泣いて待っているに違いない。
ガサ、、、ガサ、、、
うぅぅん、マ、マミィ、、。
あ、あなたの子は、
あ、明日殺されます、、。
す、すみません、、、。
ガサ、、、ガサ、
うぅ、じ、実に、無念だ。
もう涙も枯れ果てた、、、。
ん、?
ガサガサ、ガサガサ、、
ん??ん???
あ、あれ?あれれ?
な、何だろう?
何かさっきから、ガサガサとうるさい。
人がこうして我が身を悔やんでいる時に、さ、さては汚らわしいゴキ虫か??
き、気持ち悪い、、、
その時、劉備の足下に何かが触れた。が、構内は暗いのでそれが何かはっきりとは見ることができない。
はてな?
い、一体、なんだろう?
足の指先でそれを探って見るに、
それは何か紐の様な、ロープのような、、、
と、とにかく何かが当たっている。
き、気持ち悪い、、。
しかも、それは意志を持っているように動いてるようにも思える。
つ、つまり、誰かによって動かされているような、、、。
だ、誰かそこに、い、いるのかな?
と言おうとしたが、寸前のところで押しとどめた。
もし声を発したら賊に怪しまれるだろう、と考えたからである。
劉備は必死に、足先を使い、足に触れている物をまず手繰り寄せた。それは、ロープのようなもので間違いなかった。
や、やや、こ、これは、つ、つまり、だ、誰かが僕を助けてくれようとしている、、のではないか?
こ、これは正に、く、蜘蛛の糸!た、助かるかも!
が、しかし、劉備の身は縄で縛られているので、今は満足に動けない。
ま、まず、コレをどうにかしないと、、。
ん、ぐぐぐぐぐぐぅっっ!!
劉備は全身に力を入れ、なんとか縛りを解こうとしてみた。
すると、案外、縛りは其れほど強力でもなく、す、するりとほどけてしまった。
な、なんと、なんという幸運!!
や、やはり、俺は、、、。
劉備はすぐ様その怪しげなロープのような物を辿って、動きの元の方へと歩いて行った。
するとそこには、見るからに弱々しい老人のような人影が構外に潜んでいるではないか!
講堂の壁を挟んだ形だったが、劉備と老人、一瞬目が合った。
あ、あなたは??い、一体、なぜ?
劉備は、ごくごく小さな声で老人に向けて囁いた。
( シー〜ん )
老人は何も言わず、とにかくこっちへ来なさい、という素振りをした。
劉備は賊に気づかれないように慎重に慎重に、構外へと出て、老人に誘われるまま付いて歩いた。
しばらく行くと、そこは、誰も住んでいないような朽ち果てた古い建物に辿り着いた。
老人はついに、ここで待っていなさい、と初めて言葉を発した。
老人は、建物の中から、くたびれた馬一匹と、場違いに美しい佳人を、連れて戻ってきた。
お、おお!な、なんたる可憐!!
老人は、西南の方角を指し、早く連れて逃げなされ、と言った。
劉備、
し、しかし、御老人、あなたは?
御老人、
ワシのことは気にしないで良い。もう十分ですじゃ。この娘をあなたに託そうと思い、助けたまでじゃ。
ささ、早く行きなされや。
劉備、
し、承知致した!で、では、御老人もお達者で!!
劉備は佳人と共に馬で早々に西南の方角へと消え去って行った。
謎の美女登場!劉備と佳人の運命やいかに?