桃園物語 第14話 猛虎捕獲
The Peach Garden 桃園物語
第14話 猛虎捕獲。
( 張飛、劉備の二人が、関羽のいる童学草舎へ向かう途中の話。)
張飛が劉備を案内する形で、道を進んでいくと、彼方から十数名の兵士の一行がこちらへと近づいてきた。
それを見て張飛は、
"あちゃ〜これはいかんなぁ。あれは俺を捕らえるために来た兵士たちに違いない。りゅう君、ちょっとの間、ここで休んでいてくれ。"
と言い、兵士たちの方へ自ら向かって行った。
張飛、
" やい!おまいら!俺っちに何のようだ?"
兵士たち、
" む、その特徴的な虎ヒゲ!やはりお前が張飛だな。聞くも愚か!先日、ある酒場で用心棒が殺される事件があったと報告を受けた。店主はお前が犯人だと言っている。故に、張飛、お前を殺人の容疑で逮捕する!神妙に縄に着きたまえ!"
張飛、
" あんまり覚えてないなぁ。そんなことは。俺っちは今急いでるところだ。おまいらが邪魔するならば、力づくで通るまでよ!"
と、すぐさま戦闘態勢に入った。
張飛の威嚇に兵士たちは恐れ慄いた。
するとその時、また彼方から、一体の人馬が飛ぶが如く駆けつけ、張飛と兵たちの間に割って入った。
"どうっ!どうっ!"
見れば、2メートル近い背を緑色の道士服に身を包み、顔は紅顔、目は鳳眼、一見、西洋の騎士とも思える威風堂々たる偉丈夫だった。
偉丈夫、
" あいや!待たれよ!諸君!
それがしは、関雲長と申す者でござる!話は、マスターから全て聞いた!
それがしは、諸君らの身の危険を案じ、今ここに参上した次第でござる!"
兵士たち、
" 我々が危険とは一体どういうことだ?"
関羽、
" では遠慮なく言おう!諸君らは、この張飛という人物がどういう者かを全く知らない。
この男は、かつて、黄巾の賊どもを一人で千人を相手にし、すべて惨殺した正に万夫不当の猛者である。たかが諸君ら十数名が束になってかかろうとしても、張飛にとっては群がる蟻の如くである。"
兵士たち、
" むむむ、、、だからこいつを見逃せと言いたいのか?"
関羽は続けて、
" そうではござらん。それがし、この張飛とは義兄弟の契りを交わした間柄でござる。故に、弟の罪は、兄であるそれがしの責任とも言える。この場は、それがしに任せられよ!"
兵士たち、
" どうするつもりだ?"
すると関羽は、" 愚弟よ!観念せい!"とばかりに、馬鞭で張飛を打ちすえ、あっという間に縄でグルグル巻きにしてしまった。
張飛は、この急展開に呆気に取られていたが、一瞬、関羽が片目をつぶるのを見ると、"これは兄貴が前に言っていたウインクってやつだ"と何かを察知し、取り敢えず、されるがまま大人しくしていた。
兵士たち、
" おぉ!関羽殿!ではそ奴の身柄を渡してくれるのか?" と問うと、
関羽は" それは賢明ではござらん"と答えた。
続けて関羽が説明する。
" 今ここで、弟の身柄を諸君らに引き渡したら、弟はきっとこんな縄などすぐに解いて、汝らを殺して逃げてしまうだろう。身柄はそれがしが責任を持って後ほど必ず署へ連行いたす。ここは諦めて引かれよ。"
兵たちは、関羽を信じきれず、まだ疑わしい素振りを見せたが、
関羽が" もしそれがしを信じぬのなら、この縄を今すぐ解いて、この猛虎を諸君らに向かって放つが?" と言うと、
兵士たちは恐怖し、諦めたように早々と立ち去って行った。