魔王さまのカリスマ性の欠如には困ったものですねー
いつまで続くのかは未定! 目標は6話くらいかな!←
ーーここは魔界。魔神、悪魔、魔物……様々な悪鬼羅刹が跋扈する常夜の世界。空にある沈む事の無い巨大な月だけが、荒涼とした地上を静かに照らしている。
そんな荒野広がる魔界に、一際巨大で、目を惹くほど威厳のある建物が立っていた。
名を、魔王城。魔界の魔の者全ての頂点に君臨する、最強最悪にして絶対的な存在の『魔王』が住まう居住ーー
ーーが、今、数千を超える魔族達に包囲されていた。
「た、たたた大変です魔王さまー!!」
ゴォォン!! と、玉座の間へと通じるやたら荘厳な大扉が、落雷のような轟音をたてて開かれた。
「謀反だ謀反です謀反ですよー!」
開け放たれた扉から勢い良く飛び出して来たのは、背中にコウモリによく似た羽を生やした、体長30センチ程の小さな少女だった。
「なんだ……騒々しいぞインプ」
その少女を玉座から心底鬱陶しそうな目で睨む青年が一人。
インプと呼ばれた少女が『魔王さま』と言ったように、漆黒のレザージャケットに黒のスキニーパンツといったパンクロッカー染みた格好をしたこの青年こそが、魔界を統べる『魔王』なのだった。
「大変です魔王さま! 謀反です! クーデターです! 革命です! 以前から傘下の方々にナメられ切っていたのは知っていましたがまさか身内の部下達にまでナメられている程カリスマ性が無かっ」
「……このまま握り潰されるか詳しく話すかどちらか選べ」
目の前まで飛んできたインプを鷲掴みにし、デッドオアアライブを突きつけながら、魔王は状況報告を促した。
「えっとですねー。ただ今この魔王城、絶賛包囲中なのですよ。それも殆ど傘下の魔族さん達ばかりに」
「なんだと?」
「それだけならまだ良いのですが……その中に身内、魔王城にいた家臣達なんかも混ざっちゃってましてねー。今この魔王城に居るのはわたしと魔王さまの二人だけです」
「……」
「多分、魔界中の有力者達が集まっているんじゃないですかねー。もの凄い数ですよ。もう殆ど魔界vs魔王さまって感じですねー」
「………ついてこいインプ」
報告を聞きながらみるみる怒気の色に顔を染めていった魔王は、静かに響く低い声で呟くと玉座を立った。
「あー、もしかして表の連中をブッ飛ばしてやろうとか考えてます? それはいくら魔王さまといえども無茶ですってー」
「黙れ」
丁度魔王が、インプにそう返した時だった。
『ヒャッハー!! その汚ねェ首を頂戴しにきてやったぞ魔王ゥゥゥ!!』
『ゲハハハハー!!!! 次の魔王はこの俺様だァー!!』
『ガキ風情が魔王気取ってんじゃねえぞォォォ!!』
開け放たれた大扉から、大勢の魔族が雪崩込んで来た。それぞれが禍々しい容姿をした魔族なのだが、如何せん言っている事の小物臭が凄い。
「あーあ。遂に侵入されちゃいましたねー。ここは一つ、脱出を……って、魔王さま?」
面倒臭そうに肩を竦めたインプの視線の先には、顔を俯かせた魔王の姿があった。
「貴様ら……」
『ゲヒャハハハー!! 死ねェ魔ーー』
「誰の許可を得て俺の城に土足で踏み入れてんだ?」
『ヒィ!?』
静かに。しかし溢れんばかりの殺気を隠そうともしない魔王の呟きと、その視線に射抜かれた魔族達は、一様に怯んで足を止めてしまう。
しかし、それがいけなかった。
「ッおおおおおおォォォォ!!」
魔王が思い切り振りかぶりーー空間を殴りつけた。
比喩でも何でもない。事実、魔王と魔族達の間は十数メートルは離れていて、魔王はその位置から一歩も動かずに魔族達の方向へ拳を叩きつけたのだ。
そこからは誰にも、何が起こったのか分からなかった。とても打撃音とは思えない凄まじい大轟音が鳴り響き、視界が白い閃光に埋め尽くされる。
「……あーあ。やっちゃったー」
暴力的な音と光が収束し、戻ってきた正常な世界を眺めてから、インプは諦念の溜息を漏らす。
ーー城が、半分消し飛んでいた。
かなり前から活躍させたいと温めていた二人が、遂に日の目を……! たくさん続くかもしれないし、すぐに終わるかもしれない二人のお話を、どうか温かい目でご覧下さい(切実)