9話ただのワンピースだと思ったら大間違い
魔の森に戻ってきてから、3日がたっていた。
今の時刻は、12時30分。
時間はピロンさんが教えてくれた。
俺とスフィアは、肉を焼いて昼食を食べていた。
もう、3日もたったので、スフィアも結構緊張がほぐれてきたみたいだ。
檻で出会った時は絶望してるような目をしていたが、今はもうそれがなくなって、すごく懐いている。
「ご主人様、これからどうするのですか?」
スフィアが、肉を食べ終わり、首を傾げて言ってくる。
俺は、今食っている肉を食べきり、立ち上がって答える。
「とりあえず、別の森に行こうと思う」
「え? 別の森ですか…?」
「ああ。魔物を殺しすぎたせいか、この森にいる魔物の数が減っていて、探すのが大変なんだ」
「そ…そうなんですか」
さて、別の森って言っても、何処に行くべきか。
とりあえずあの国より離れた場所の方がいいよな。
まぁ適当に行ってみればいいか。
「スフィア。テントを片付けたら出発するぞ」
「あ、はい。わかりました」
スフィアが返事をするとテントが張ってある場所まで行き、片付けを開始する。
俺はその作業を見ながら、特にすることがないのでボーッと立っている。
言っておくが、サボっているわけではない。テントの片付け方が分からないだけだ。
スフィアは奴隷になる前に、もういない両親と野宿したことが何回かあったみたいで、そのおかげでテントの扱い方がわかっていた。
というわけで任せている。
ちなみに、今のスフィアの服装は、奴隷商にいた時のようなボロボロな布の服じゃなく、俺が武具創造で作った白いワンピースを着ている。
…買った服はアイテムボックス行きになった。というか、買う前に武具想創造を何故思い出せなかったのか俺は。
武具創造で出した服は、一見普通に見ると綺麗なワンピースだが、一応あれはただのワンピースじゃなく、ちょっと…というか物凄いチート級の効果が付いている。
“不可視の結界”この服を着ている者は、いかなる攻撃も不可視の結界に阻まれる。
…と、言うやつだ。
言っておくが後悔はしてない。
なお、これは俺には作用しないようなっている。
つまり、俺以外の奴らに作用すると言う事だ。
どうやってそのようにしたのかは、今は内緒にしておこう。
まぁ、工夫をすれば何でもできるんだよ。何でもね。
5分後、綺麗に折りたたまれたテントを持ってスフィアが帰ってきた。
俺はテントをスフィアから受け取り、アイテムボックスに入れる。
「ありがとな、スフィア」
「い、いえ…奴隷として、当たり前のことをしたまでですので」
俺が頭を撫でながらお礼を言うと、顔を赤くしながら俯いてしまった。
「さて、それじゃ出発するか」
「…あ」
俺が頭から手を話し、伝えると、スフィアは何か言いたそうに俺の手を見つめていた。
俺はその行動にクスッと笑いながら、スフィアに、
「また、後で撫でてやるよ」
と、言った。
スフィアは俺がそう言うと、顔を笑顔にして、
「はい!」
と、元気よく言った。
俺は人間は嫌いだが、その他の種族はまだわからない。
人間とは、思考等が違うだろうし。
獣人…いや、スフィアの事は今のところ好感がもてる。
戦闘は出来ないが、俺の言うことはちゃんと聞くし、文句も言わない。…奴隷だからかも知れないが。
まぁ、奴隷云々あったとしても、今のところスフィアとの仲は良好だ。
☆ ★ ☆ ★
「とは言ったものの、今度は何処の森に行こうか」
「あ、あの、ちょっと聞いてもいいですか…?」
森を歩きながら何気無く呟いた言葉にスフィアが反応する。
「どうした?」
「えと、その、ご主人様はどうして森に住んでいるのですか?」
「あぁ、それはな、俺は人間が嫌いなんだ」
俺がそう答えるとスフィアはきょとんとしながら言う。
「えっと、ご主人様って…人間…ですよね?」
「ん? まぁそうだが?」
「そ…そうですか…」
そう言うと顔を伏せてしまった。
俺は何が言いたいのか分かったが、特に言う必要もないので、そのままスフィアの手を掴みながら先に進む。
メルニカ王国から逆の方向に歩き始めてから約2時間たった。
「やっと、抜けたな」
「そ、そうですね…はぁ…はぁ…」
森を抜けるとそこは何も無い平原だった。
俺は特に疲れてないがスフィアがもうダメらしいので、木の影に移動して休憩することにした。
「す、すみません」
そう言いながら木を背もたれにして座るスフィアに、俺は大丈夫と言っておき、俺もその場に座る。
(森を抜けたのはいいが、まさか辺り一面草原とはな。適当に行くのもいいんだが…とりあえず一度どこかの街に寄りたいな)
街がどこにあるか知らないが。
正直行きたくないが、このまま肉だけで過ごすのも嫌だし。
たまには肉じゃないのも食べたい…。
しかも、ただ焼いただけだし。
俺は座っているスフィアを見る。
やっぱ2時間歩き続けたからか、まだ疲れている表情をしている。
俺はそれを見てもう少し休むかと思い、横になる。
ピロンさんに結界を張ってもらうよう頼む。
俺でも張れるんだが、ピロンさんの方がなんとなく安心できる。
<わかりました。結界を張ります。魔力を渡してください>
すぐにピロンと音がなり、ピロンさんが言ってくる。
この3日間で魔力を渡すのは慣れたので、今の俺はたとえ戦闘中でもピロンさんに魔力を渡せるぜ。
スウゥン…
ピロンさんに魔力を渡すと、すぐに結界を張った。
「少し休憩しようか」
「…あ…は、はい……ありがとうございます」