最終章
最終章
-光か闇か-
色のない世界で生きてきた一人の少女は、目に入る景色の全てが黒であることを不思議に思うことはなかった。
人であるはずのものが獣に見えることも、街の空気がまるで生き霊のような靄を生み出していることも、少女にとっては当たり前のことだった。
そして言葉や表情や景色によって心を動かすことは一度もないのである。
そんな少女を人々は"心を失った人形"と呼んだ。
*
少女にとって全てに意味は必要ながった。
何も感じない、何も思わない。
目に映るそのまましか少女はわからなかった。
表情も生理的に眼から水が流れる、口が歪んでいる、というただそれだけのことでしかなかった。
今まで、過去にこだわった男や言葉の圧に押しつぶされそうな女と出会ったが、少女にとっては特に記憶に残ることではなかった。
そもそも少女は記憶が失われていた。脳に残る映像や音声は消え去り、いつ、誰により自分が生まれたのか、自分が何者なのかも知らない。
一つだけわかるもの、
その少女の名は____ミナ。
*
ずっと一人で生きてきた。誰もミナのことを見続ける者はいなかった。それ程皆も自分の生きることに必死だったのだ。
しかしミナが出会った2人の男女がこれからのミナの生活を変えてゆく。
知らない間に2人の心を救っていたミナ。
この先待っているのはミナにとって何をもたらすのか。
2人が与えるものは、
光か闇か____。
それはまた別のお話……。
"37" 完




