表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

俺の幼馴染み

幼馴染みって近すぎるからわからないんですよね

失くしてからじゃないと

「朝だぞー、おーきーろー」


容赦なくカーテンが開けられ光が顔に当たる。

冬の光は一段と眩しい気がして毛布に閉じ籠ろうとして手慣れたように剥がされた。


「聞いてるー?天ー、あーさー」

「‥…うるさ」

「お、起きてる。珍しく寝起きいいじゃん、おはよー」

「‥…はよ」


黒崎 夏樹。俺の幼馴染み。保育園からなんかずっと隣にいる男。

そして俺、雨宮 天はこいつに起こしてもらうのをルーティンと化していた。


俺の両親は出張が多く家にいないことが多い。

夏樹の家はシングルファザーで父親のみ。

あと夏樹の双子の兄、冬樹がいる。冬樹とは高校が違うせいで一緒に登校はできないがちゃんと仲はいい。


「朝、パンとなに」

「目玉焼きー」


これもいつものルーティン。俺が料理して夏樹が洗濯、冬樹が掃除のプロとなっていた。お互い親が忙しい分持ちつ持たれつの関係。


寝ぼけ目を擦りながら卵をフライパンに割り入れる。ぼけーっとしていたら後ろから腰に腕を回され動く隙間のない密着。人の頭に顎を置くなと何度注意してもこいつはやめない。


「さすが天ー、子供体温、あったけー‥…」

「‥…動きにくいんだけど」

「いいじゃん。てか今日外寒いよー?マフラーちゃんとある?」

「‥…名前に夏入ってるやつが寒がんな」

「え、暴論すぎん?」

夏樹は身長180。俺とは15センチも差がある。

こちらとしてはほぼ捕食されてるみたいで気がきじゃない。

「ほらできた。どけ」

「わーい、いただきまーす」


いつもの朝。ただのルーティン。


「うまー、さっすが天」

「はいはいどーも」


またいつも見たいに時間が流れてく。代わり映えしない毎日。


『ブブッ』


「‥…スマホ鳴ってるけど。朝から珍し」

「んー?あー‥…」

チラリと見てからすぐに食事に戻った。

「なんでもなーい、ちょっとねー」


別になんともない日常の一部。


「遅刻する、お前がマフラーとか喚くから‥…」

「だって外ガチ寒いよ?ってあ、悠兄だ、おはよー」

「おはよう、二人とも。冬樹くんは結構前に行ってたけど‥…遅い登校だね、大丈夫?」


この人は悠斗兄さん。兄さんといっても血の繋がりはなく、昔から俺達三人をよく見てくれていた優しい人兄のような人だ。今は大学四年生らしい。


「大丈夫だってー、冬樹は学校遠いけど俺らは走ったら10分でつくし。」

「ふふ、そっか。遅刻しないようにね。もう高校二年生でしょ?ちゃんとしないとね?じゃあ、

気をつけてね。」


軽口もそこそこに学校へ向かう。

もちろんダッシュで。


「セーフっ!」

「ギリギリだ。はやく座れ」


担任からもはや呆れのお言葉を貰い俺と夏樹は席に着いた


「はぁ、はぁ‥…暑‥…マフラーいらなかった‥…」

「えー、そう?ま、帰りも冷えるだろーしいいじゃん?」

「うるさい体力バカ」

「わお、辛辣ー」

「お前らほんと仲いいなー。よっ、わが校の誇る夫婦(笑)」

「うっせぇ、寝言は寝て言え」


こうやってクラスのやつから茶化されるのももはやルーティン。


一限から数学で頭を散々働かせ、二限の古典で安らかに眠りについた。

あっという間に昼休み。


「天ー、購買いこー」

「‥…おー」

「寝起きすぎん?(笑)」

「‥…うるせ…」


二人でパンを買い屋上へ。人はまばら。いつもの定位置。


「またメロンパン?好きすぎだろ」

「いーの、俺は一途だしー」


『ブブッ』


また夏樹のスマホが鳴った


「‥…誰?冬樹?」

「んー?いや、ちょっとねー」


朝よりもスマホを見る時間が長かった。


「‥…三限、小テストあるけど」

「ま?詰んだ。どこどこ」


パッとスマホを直し向き合う。

その態度がいつも通りで、この違和感を少しやわらげた。


あっという間に放課後。


「夏樹。今日晩飯なにがいい?てか、買い出し付き合え」


これもいつもと同じ。

夏樹と冬樹のために夜ご飯を作る。いつものこと。


「あー、ごめん今日ちょい用事あるから先帰っといてー」

「‥…用事?」

「うん、ちょっとねー」

「‥…あっそ。じゃあ冬樹と買いに行く。」

「ん、また後でー」


冬樹にスーパー集合とLINEした。

いつものルーティンが少し崩れた。それだけ。

だからこんなにイライラしてるんだ。


「よ」

「あ‥…天‥お疲れ様‥…。」


そう言ってふにゃりと微笑み、弱々しそうなのが冬樹。こいつらは昔から正反対だ。顔はそっくりだが冬樹のほうが困り眉。


「‥…あれ、夏樹は?」

「あいつ用事あるとか言って買い出しから逃げた。冬樹、今日なに食いたい?」

「‥…用事、か。‥…えっと‥…ハンバーグ‥…かな」

「お前らほんとそれ好きな。りょーかい」

「う、うん‥…天のハンバーグ、一番好きだよ‥…」


そう言って微笑む冬樹。夏樹とは大違い。素直で可愛いやつ。

身長は夏樹と同じなので物理的には可愛くないが。


「ん、あれ悠兄じゃん」

「っえ」

「あれ、二人とも学校終わりに買い出し?偉いね、お疲れ様。」


悠兄も癒し系の優しいイケメンなので癒される。

ここたぶんマイナスイオンでてる


「‥…?どした冬樹」

「ぇ、あ、う、ううん。‥…えと、お疲れ様、です、悠斗さん‥」

「うん、お疲れ様。冬樹くん」


‥…?なんで冬樹は悠兄に人見知り発動してんだ?

ま、いいけど


「‥…ほら冬樹。さっさと帰って飯作るぞ。じゃあな、悠兄」

「う、うん‥…では、また‥…悠斗さん」

「うん、天くんも冬樹くんもまたね」


帰宅後。冬樹と並んでハンバーグを作る。

夏樹はまだいない。

結局ほぼ作り終わってから帰ってきた。


「ただいまー、うわ、ハンバーグじゃんナイスー」

「お、お帰り夏樹‥…」

「はやく着替えろ」


いつもの光景。三人で飯を食べる。

時々会話して、しょうもないことで笑う。

それだけだったのに。


「あ、そーいやお前、今日の用事ってなんだったわけ」

「んー?あーそれねー、実は俺彼女できましたー、放課後告白されてさー」

「‥…あっそ」

「‥…ぇ、」

「天リアクションうっす!冬樹くらいいいリアクションしてよー」

「うるせぇ」


隣で驚いたように固まる冬樹を前に夏樹は悠々と語る。

俺はなにも言えなくて、ハンバーグ味薄、などと関係ないことしか思えなかった。


「‥…彼女、か‥…おめでとう、夏樹」

「おぅ、ありがとな冬樹」


その祝福の言葉にようやく頭が回り始める。


「‥…まぁ、がんばれば?」

「なんだそれ、祝えよー」

「うっせぇ黙って食え」

「辛辣ー‥」


‥…別に、どうだっていいだろ

彼女が出来たからってなんも変わんないし。


次の日。いつものルーティンは行われなかった。

いつもなら声と共に開けられたカーテンを今日は自分で開いた。


「‥…」


LINEに来た一文


『ごめん!今日から彼女と学校行く!』


たったそれだけ。相変わらず家は冷える。

一枚だけパンを焼いて、今日はスクランブルエッグにして。

誰にも邪魔されないからゆっくり支度して。

時間が正しく回った。

別にどうってことない。学校に行けばまたあいつはしつこく絡んでくるんだろうから。

ただ幼馴染みに彼女が出来ただけ。

たったそれだけ。

なのに家の中は気味が悪いくらい静かで寒かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ