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91.ミヤコ君と川

場所は架空の場所です。

モデルにしたところ複数合体させてみた。

どういう管理をしてるかとか、河川としてどこの管理でやってるかとか、どう流れてどこの川で合流してるかとか色々考えて……いやそんなん作中のどこに反映するんだよ、と一人突っ込み入れました。

架空の川想像するの楽しいです。

 夜市は規模が小さいと言われていた通り、ほんの十くらいしか屋台は無かったし、うち四つが食品では無くピンポン玉すくいやくじ引きといった物だった。

 とりあえずミヤコは、とん平焼き、フライドポテト、かき氷、真っ青に着色された食品に見えないりんご飴を買った。

 ピンポン玉すくいは三回やった。かなり大量に掬えたが、必要なかったので欲しがったツカサとユカリと自分の分とお土産に一つで、四つだけ受け取った。


「ほら似合う?」


 りんご飴を手に持ちポージングするツカサを、ユカリが笑いながらスマホで撮りまくったり、シオリがかき氷を蜜無しで買って苦笑されたり、ミヤコがフライドポテトを買って食べてを繰り返し、五回目買いに行った時に笑いながらオマケを貰ったりした。


 食事はドーナツで済ませていたので、ミヤコの腹は満ちてはいたが、屋台で自分の金で買って食べるのは、何とも言えず楽しかった。


 小規模の夜市を小一時間楽しんだ後、そこから徒歩で件の蛍が目撃された場所へと向かった。


 蛍がいるという川は、それほど深い物では無かったが、だからと言って人が入って遊べるような川では無かった。

 ただ岸の片側に近隣に住む住民が散歩するための遊歩道がある。

 川幅は三メートルあるくらいだろうか。しっかりと護岸が舗装されて、雨が降った時は水が流れ込んで増水することを見越した造りになっていた。

 今はここ数日の晴れもあり、水嵩は低く、一番下の遊歩道を歩くことができるようになっている。


 ミヤコたちは川沿いを歩き、遊歩道へと降りられる階段を探した。

 蛍の飼育小屋という手書きの看板が立てられた小屋があった。その横に遊歩道に降りられる階段もあるようだ。

 小屋横の看板には、水質の管理や、蛍の餌となるタニシが増えるための管理、蛍の乱獲防止のための見回りをしていることなどが書いてあった。


 他にも地元の小学生のための学習を考えて、色々な説明の看板が並んでいる。

 ラミネートされた紙が貼りつけられており、その内容はこの周辺の河川の状況や、蛍の保護について、熊本における川の歴史などが並んでいる。

 どうやらここは学習のための施設でもあるらしい。


 熊本は盆地故に水害の多い土地だ。

 そのため加藤清正が来熊したときもまた、大きな水害の爪痕に悩まされていた。そうした水害の克服のため、加藤清正の行った治水工事にによって、今の熊本が出来たという。

 白川、坪井川、大井出川など、加藤清正が手をかけた川は多く、その蛍がいるとされる川も、加藤清正の治水の手の入った場所だったのだという。


 清正の治水工事後も何度も熊本は水害に見舞われ、昭和二十八年の六二六水害の時には、熊本の中心市街地が泥に埋もれ、その泥を掻き出し熊本城の堀に捨てたとも言われている。

 近年大地震に見舞われ被災した熊本城の復興工事では、その時に捨てられた土砂を捨て、堀が埋まっていたという証拠も出てきたそうだ。


 また白川周辺には縄文時代の遺跡群がいまだ眠っている可能性もあるのだという。

 2010年代でも、白川にほど近い熊本大学キャンパス内で土器の出土があったとの話も書かれている。


 熊本は河川という大いなる自然と人間の戦いと共存の歴史で作られいる……らしい。


 ふむふむと頷きながらツカサが看板をじっくりと眺める。

 蛍を探すのではなかったのかと、ミヤコとシオリが冷めた目を向けると、ツカサは二人を振り返り、にこっと笑った。


「なんだかこの数分で熊本の川についてい詳しくなった気がする」


 ユカリがそれを鼻で笑う。


「気のせいだよきっと」


「まあそうね、うん、これくらいの情報じゃあ、熊本の川に詳しいとは言えないか……結構な大改造してるし」


 何せ万年単位で変わるような川の流れを、加藤清正とその息子は人力で変えてしまっているのだ。


「川の流れ変えるなんてことすると……普通は罅が大きくなりやすいんだけどねえ」


 小さく呟くツカサの言葉に、ミヤコはびくりと肩を跳ね上げる。


「大丈夫、加藤清正は、その罅を塞ぐために川を変えたんだから」


 それはシオリが与太話としてミヤコに聞かせた話を思い出させた。

 ツカサは感情の読めない綺麗な作り笑いを浮かべ、看板から目をそらし、遊歩道へと降りる階段へ。


「ゆっくり回ろう。暗くなってからが蛍探しだ」


 呆れたようにシオリが続く。ミヤコはその後ろをついて行き、ユカリがしんがりだ。


「そんなにすぐ見つかりますか?」


「具体的な出現ポイントは、さっき幽霊君が確認したらしいよ」


 そう言ってしんがりのユカリがタブレットを取り出し届いていた情報を確認する。

 ユカリが掲げたタブレットの画面には、簡単な川の周辺地図が手書きで書かれており、蛍の飼育小屋から少し歩いた先の遊歩道に印がつけられ、ここで待ってます、という手書きの文字。

 その横に簡単なイラスト化されたホタル。ちゃんと臀部は赤く塗ってある。


「仕事早いね、流石は幽霊君だ」


 それを振り返り見たツカサは、サムズアップをして指定された場所へと向かった。

熊本市内の川面白いですよ。

熊本県で川と言うと緑川とか球磨川が有名だけど、熊本市内の人の手がバリバリ入りまくった近世~現代までの川の歴史を調べると、人間すげえ!加藤清正すげえ!ってなります。

ぜひ来年の夏休みの自由研究に!

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